2022年 年間ベストセラー発表 総合第1位は『80歳の壁』(幻冬舎)
■ランキング全体の傾向
さまざまなモノやサービスの価格が高騰していることや世界情勢などを背景に、自身の生活に影響が出ている状況が続いている。そうした状況を反映してか、今回の年間ベストセラーでは、自身の未来に訪れる「老後」、自分らしい「生き方」、そしてそれらを支える「お金」といった、より生活に身近なテーマに関連する作品が関心を集め、多くランクインした。加えて、YouTuberが手掛けた書籍の上位ランクインも目立ち、動画コンテンツがより幅広い層の人々の消費行動に影響を与えるようになってきたことが見て取れた。
>>「2022年 年間ベストセラー」ページ
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/
>>PDF版はこちら
https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2022/12/2022nenkanbest_20221201.pdf
2022年年間ベストセラー総合第1位『80歳の壁』や第7位『70歳が老化の分かれ道』を獲得した和田秀樹さんに、ベストセラー2作に込めた思いについてインタビューを行いました。
>>2022 年間ベストセラー第1位『80歳の壁』和田秀樹さんインタビュー
https://hon-hikidashi.jp/live/159538/
■ジャンル別の傾向
【総合】『80歳の壁』が1年で一番売れた本に!「長生きvs元気でいること」
『80歳の壁』が第1位となり、2022年で一番売れた本となった。80歳を目前に寝たきりや要介護などといった大きな「壁」を乗り越え、長生きするよりも元気でいることを提案し、シニア読者のニーズとマッチした。
人に好かれる話し方のコツを説いた『人は話し方が9割』が第2位。2021年の年間ベストセラーでは第1位を獲得した作品であり、対面での交流機会が減り、職場のみならず友人・家族との対話不足が不安視される中で、コミュニケーションへの関心は依然として高いままであることをうかがわせる。『ジェイソン流お金の増やし方』が第3位。MBS/TBS系列「日曜日の初耳学」内で紹介され、番組放送をきっかけに大きく売上を伸ばした。また第9位に『本当の自由を手に入れる お金の大学』がランクイン。将来のお金に関する不安を持つ人々の高い関心が、ランキングにも表れている。
10~20代から支持を受ける作家Fのエッセイ『20代で得た知見』が第4位となった。本書で綴られている著者の考え方や出合った言葉が多くの読者の共感を呼んだ。また、ハッシュタグをつけて好きな文章をSNSでシェアするという読者の反応も見られた。
また、コムドットのメンバー・やまとのエッセイ『聖域』が第15位となり、YouTuberのエッセイ本が初めて総合ランキング20位以内にランクインした。2021年11月にサイン本を作成したこと、オンラインイベントの裏側を撮影した2時間超えの動画を公開し、それをきっかけに売上が急増した。写真集ジャンルでも第1位を獲得するなど、出版業界でも大きな旋風を巻き起こしている。
【単行本フィクション】逢坂冬馬デビュー作『同志少女よ、敵を撃て』が第1位に!
第1位に輝いたのは逢坂冬馬の『同志少女よ、敵を撃て』。デビュー作ながら直木賞の候補作となり、一気に注目の的となった。2022年4月の第19回本屋大賞受賞、2022年5月の高校生直木賞受賞などを経て、より多くの読者の支持を獲得した。累計発行部数は48万部(12月1日時点)となり、50万部に迫る勢いとなっている。第2位は、大人気作家・東野圭吾のマスカレードシリーズから『マスカレード・ゲーム』がランクインした。第3位には又吉直樹、ヨシタケシンスケ共著の『その本は』がランクイン。2022年8月に日本テレビ系列「世界一受けたい授業」で紹介されたことで人気が爆発し、その他テレビや著者のYouTube、新聞広告などを中心に広がりを見せた。書店での全文試し読み施策なども話題に結びついた。
【単行本実用】料理研究家人生の集大成『リュウジ式至高のレシピ』が第1位
人気料理研究家のリュウジによる『リュウジ式至高のレシピ』が、2022年上半期ベストセラーに続き第1位を獲得した。2021年12月の発売直後から注目を集め、2022年9月発表の「第9回料理レシピ本大賞 in Japan」料理部門大賞を受賞し、累計発行部数は21.8万部(12月1日時点)となった。新型コロナウイルスによる観光業への影響で、旅行ガイド本ジャンルの需要が減る中で、「地球の歩き方」シリーズで趣向を凝らした作品が多く発売された。その中でも異色コラボ本として『地球の歩き方JOJOジョジョの奇妙な冒険』、『地球の歩き方 ムー』がそれぞれ第5位と第10位にランクイン。発売前から大きな注目を集め、各メディアでも大きく取り上げられた。
【単行本ビジネス】物価上昇や円安の影響により、資産形成への関心が高まる
『人は話し方が9割』が2020年年間ベストセラーから3年連続して、第1位となり、累計発行部数は110万部(12月1日時点)を突破した。ジャンルの傾向として、コロナ禍でコミュニケーションへの関心が高いままだが、それ以上に物価上昇や円安など経済への不安から資産形成・資産運用への関心も高まったことが分かる。『ジェイソン流お金の増やし方』は数多くのメディアに取り上げられ、発売から約1年で累計発行部数55万部(※電子書籍含む) となった。上位10位の中で唯一2022年に刊行された『数値化の鬼』は、累計発行部数18.5万部(12月1日時点)になり、同著者の『リーダーの仮面』とは異なる新しい読者層を取り込んだことで、大きく売り伸ばした。
【新書ノンフィクション】『80歳の壁』が第1位に。精神科医・和田秀樹が上位を独占!
精神科医・和田秀樹の『80歳の壁』が第1位、累計発行部数53.5万部(12月1日時点)となった。発売後、2022年5月に放送されたテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」内での本の紹介で売上が大きく伸び、60~70代の女性読者が急増した。第2位にも、同著者の『70歳が老化の分かれ道』がランクイン。同作は、累計発行部数36万部(12月1日時点)を突破するロングヒット作となっている。また、瀬戸内寂聴が生前に語ったメッセージをまとめた『寂聴九十七歳の遺言』『今を生きるあなたへ』もそれぞれランクインした。
【文庫】原田ひ香『三千円の使いかた』が上半期に続き年間でもランキング第1位に
リストラ・年金生活・格差社会等を題材にした『三千円の使いかた』が、2022年上半期ベストセラーに続き、年間ベストセラーでも第1位となった。食品やガソリン、電気などの相次ぐ値上げや急速な円安、高齢化などを背景に、生活に必要なお金や老後の生活費工面への関心が高まっていることを反映している。第2位の『希望の糸』は2022年7月発売ながらも急速に売上を伸ばし、東野圭吾の人気を改めて証明した。第3位の『流浪の月』は、2022年2月の文庫化、また同年5月の広瀬すず・松坂桃李のダブル主演による映画化の後押しもあり、発売より一気に売上を伸ばした。
【児童書】ポケモン、パンどろぼう、最強王図鑑などの人気シリーズが台頭
『898ぴきせいぞろい!ポケモン大図鑑(上・下)』が2022年上半期ベストセラーに続き第1位を獲得。累計発行部数は上下巻合わせて73.5万部(12月1日時点)となった。アニメも盛り上がりを見せ、さらにゲーム最新作が発売されるなど人気は衰えず、『ポケモンをさがせ!あたらしいぼうけん』も第9位にランクインした。第2位・第3位は「パンどろぼう」シリーズ。2022年上半期ベストセラーと同じく、同シリーズから4作品がランクインした。見た目のインパクトとタイトルのキャッチーさも相まって、瞬く間に人気シリーズになり、 シリーズ累計発行部数は公称150万部(12月1日時点)を突破。POPUP STOREなどのイベントやフェアも展開している。第4位には『ドラゴン最強王図鑑』がランクイン。「最強王図鑑」シリーズは、累計発行部数261万部(12月1日時点)となっている。
【写真集】第1位は人気YouTuberコムドット!
男性5人組YouTuber・コムドット初の写真集『TRACE』が、2022年上半期に続き第1位を獲得した。チャンネル登録者数 370万人超え(11月末時点)というファンの多さに加え、メンバー5人の特別版カバーバージョンの発売が話題となり、複数買いに繋がった。第2位は、2022年6月に発売された『乃木坂46賀喜遥香1st写真集 まっさら』。坂道シリーズ所属メンバーは1st写真集の発売が続いた一方で、卒業記念となるメンバーもおり、合計7点がランクインした。デビュー10周年の節目に本人が企画段階から参加した『広瀬すず 10周年記念写真集 レジャー・トレジャー』は、「絵本のようなテイスト」でいわゆるグラビア写真集とは違う「本当の広瀬すず」を表現し、3,850円(税込)と高価格ながら第8位となった。
【コミック】「呪術廻戦」人気が続く!「SPY×FAMILY」ファン拡大中!
2021年12月の映画公開に合わせて発売された「呪術廻戦」18巻が根強い人気で第1位となった。2023年にはTVアニメ第2期の放送が決定しており、来年以降もこの勢いは止まらないだろう。第2位の「SPY×FAMILY」は、TVアニメが2022年4月・10月クールの2期にわたって放送。スリリングなストーリー、愛くるしいキャラクターの人気も相まってコミックの売上が伸び続けている。第3位の「ONE PIECE」は2022年7月に連載25周年を迎え、また2022年8月公開の映画「ONE PIECE FILM RED」が記録的大ヒットとなり、原作ストーリーも最終章に突入。新旧ファンの注目度が高まっている。「HUNTER×HUNTER」37巻は、2022年11月に約4年ぶりの刊行で話題となり、発売から2週間余りで第8位にランクインし、作品の人気ぶりがうかがえた。
■日本出版販売は書籍・雑誌の流通を担う出版販売会社(出版取次)です。
■弊社ベストセラー情報は、約3,000軒の書店様のPOS販売データを基に、全国の書店様での販売状況を総合的に勘案して作成しております。
■集計期間は2021年11月22日~2022年11月21日です。
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