2024年日本のEC市場、3大ECモールが牽引し前年比13.0%増
経済産業省調査とNint独自分析で読み解く——販売数量が平均単価を上回る成長ドライバーに

国内3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の公開データを収集・分析するクラウドサービス「Nint ECommerce」を提供している株式会社Nint(本社:東京都新宿区、代表取締役:吉野順子、以下「Nint」)は、経済産業省の調査と結果とNint独自の分析により、2024年日本EC市場規模とEC化率の最新動向について調査いたしましたのでお知らせいたします。
主な調査結果
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【Nint分析】市場の牽引役は3大ECモール:全体の3倍超の成長率
2024年の物販系BtoC-EC市場全体が前年比3.7%増であるのに対し、Nint推計による3大ECモールの流通総額は前年比13.0%増と、市場全体の成長を大きく上回る結果となりました。市場シェアは7割を超え、日本のEC市場における存在感は増しています。 -
【Nint分析】成長の構造を解明:ドライバーは「平均単価」と、それ以上に「販売数量」
3大ECモールの成長率13.0%を要因分解すると、「平均単価の上昇(+4.0%)」に加え、それを2倍以上上回る「販売数量の増加(+8.6%)」が力強い成長を支えていることが判明しました。 -
【考察】EC市場の二極化:なぜ事業者倒産は過去最多なのか
市場が成長する一方、東京商工リサーチのデータによれば2024年のネット通販事業者の倒産は過去最多を記録しています。この背景には、Nintの分析が示すような市場の構造変化にうまく対応できた事業者と、それが困難だった事業者との間で「二極化」が進んでいる可能性が考えられます。
日本のEC市場規模(2024年):経済産業省調査が示す緩やかな成長
経済産業省の調査によると、2024年の日本における物販系BtoC-ECの市場規模は15.2兆円(前年比3.7%増)となり、堅調な成長が続いています。また、商取引全体に占めるECの割合を示すEC化率も9.78%(前年比0.4ポイント増)と上昇しており、2025年には10%の大台を超えることが期待されます。

このマクロな成長トレンドの中で、消費者の購買行動の主戦場はどこになっているのでしょうか。次に、市場の大部分を占める3大ECモールの動向を詳しく見ていきます。
Nint独自分析①:3大ECモールが牽引する日本のEC市場
市場シェアは7割超、前年比13.0%の成長
Nintの推計データによれば、2024年における楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングの3大ECモールの流通総額は約11.2兆円に達し、前年比13.0%増という高い成長率を記録しました。これは、物販系EC市場全体の成長率(3.7%増)の3倍を超える数値です。
この結果、物販系EC市場全体(15.2兆円)に占める3大ECモールのシェアは73.7%に達し、日本のEC市場の成長において、大手プラットフォームの存在感がより一層強まってきています。
成長のドライバーは「販売数量」と「平均単価」
では、この力強い成長は何によってもたらされたのでしょうか。Nintは今回、この成長を「販売数量」と「平均単価」の2つの要素に分解し、その構造を分析しました。
分析の結果、成長率13.0%のうち、販売数量の増加による寄与が+8.6ポイント、平均単価の上昇による寄与が+4.0ポイントであることがわかりました。これは、昨今の物価上昇や高単価商品への需要増加による単価増が成長の一因であることは事実であるものの、それ以上に「ECでモノを買う」という消費行動が量的に拡大していることを示す、極めて重要なデータです。

Nint独自分析②:ジャンル別に見るEC市場成長ドライバー
3大ECモール全体の力強い成長は、すべてのジャンルで一様に起きているわけではありません。ジャンルごとに見ると、その成長ドライバーは多様な姿を見せます。
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「食品、飲料、酒類」:数量が増加
市場規模の大きいこのジャンルでは、ECでの購入が日常化したことによる「販売数量の増加」が大きく貢献しています。メーカーによる値上げはあったものの、比較的低単価の購入が進んでいると考えられます。 -
「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」:高価格帯商品の需要増と数量が両輪。
このジャンルでは、より高機能・高性能な製品への需要が活発化し、「平均単価の上昇」をもたらしつつ、消耗品の購入も進んでいます。 -
「化粧品、医薬品」:「販売数量」の増加が著しい成長ジャンル
専門ショップの拡大など裾野が広がり「販売数量」が大きく増加しました。高い成長率を記録しました。
このように、ジャンルごとに成長のメカニズムは異なります。自社が属するジャンルの特性をデータで正しく把握することが、戦略を立てる上で不可欠です。以降、ジャンルごとに述べます。

生活家電、AV機器、PC・周辺機器等:高価格帯商品の需要増
経済産業省の調査によると、このジャンルの2024年におけるBtoC-EC市場規模は約2兆7,443億円で、前年比2.26%の増加を示しました。EC化率は43.03%と高く、物販系の中でも特にEC化が進んでいるカテゴリーの一つです。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比112.0%)は、平均単価の上昇(前年比106.4%)と数量の増加(前年比105.2%) の両輪で成長しています。
衣類・服装雑貨等:スニーカー市場が活発化
経済産業省の調査によると、「衣類、服装雑貨」分野のBtoC-EC市場規模は約2兆7,980億円で、前年比4.74%の増加を示しました。EC化率は23.38%で、物販系の中でも高い水準を維持しています。 Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比100.1%)は、平均単価の上昇(前年比106.0%) によるもので、前年と同水準を維持しています。
食品、飲料、酒類:日常購買の拡大で数量が増加
経済産業省の調査によると、このジャンルのBtoC-EC市場規模は約3兆1,163億円で、前年比6.36%の増加を示しました。EC化率は4.52%と他のジャンルに比べて低いものの、ネットスーパーや食品デリバリーサービスの普及により市場は拡大傾向にあります。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比112.8%)は、数量の増加(前年比115.3%)によるもので、平均単価の減少を補っています。
化粧品、医薬品:美容意識の高まりで数量が急増
経済産業省の調査によると、「化粧品、医薬品」分野のBtoC-EC市場規模は約1兆150億円で、前年比4.54%の増加を示しました。EC化率は8.82%です。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比121.6%)は、数量の増加(前年比129.3%)によるもので、平均単価の減少を補っています。
生活雑貨、家具、インテリア:防災・快眠ニーズで市場拡大
経済産業省の調査によると、このジャンルのBtoC-EC市場規模は約2兆5,616億円で、前年比3.62%の増加となりました。EC化率は32.58%で、高い水準を維持しています。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比116.6%)は、数量の増加(前年比115.8%) によるもので、平均単価は横這い (前年比100.7%)となっています。
日本EC市場の二極化:成長と倒産増加が同時進行
ネット通販事業者の倒産は過去最多
Nintのデータは3大ECモールが力強く市場を牽引している「光」の側面を明らかにしました。しかしその一方で、市場全体には厳しい「影」の側面も存在します。
東京商工リサーチの調査によると、2024年のネット通販事業者の倒産は261件(前年比21.3%増)に達し、過去最多を記録しました。休廃業・解散も増加しています。特筆すべきは、倒産した企業の多くが負債額5千万円未満・従業員数5人未満の小規模事業者である点です。
「数量×単価」に対応できた企業と淘汰される企業
この「全体の成長」と「小規模事業者の苦境」という一見矛盾した事象は、EC市場の「二極化」が深刻化していることを示唆しているのかもしれません。参入障壁の低下による過当競争やコスト増といった環境下で、画一的な価格競争や広告施策に陥ってしまった事業者が採算悪化から淘汰されやすい状況がうかがえます。
Nintの分析が示すような「数量×単価」といった複雑な市場構造の変化に柔軟に対応できたかどうかが、明暗を分ける一つの要因となっている可能性も考えられます。
加えて、Nintのデータでは大手メーカーと大手店舗の組み合わせや、メーカー直販の公式ショップが売上を増加させているデータを確認しており、流通構造が変わりつつあります。特に”型番”でのビジネスは難易度を高めているという声をNint顧客からもいただいております。

これからの提言:データドリブンな戦略でEC市場を勝ち抜く
本レポートで見てきたように、EC市場は3大ECモールをエンジンに成長を続けています。しかし、その内実では「数量×単価」を軸とした複雑な成長構造の中で最終消費者と向き合わなくてはならず、裏側では過当競争などを背景に、厳しい状況に置かれる事業者も少なくないという二極化の側面が見られます。
このような状況下で、EC事業者が感覚や経験則だけに頼って事業を継続するのは極めて困難です。体力のある大手と価格だけで勝負するのではなく、データに基づいて自社の勝ち筋を発見し、戦略的な意思決定を行うことが、これからの市場で生き残るための重要な鍵であるとNintは考えます。
市場や競合の動向をデータで正確に把握し、消費者のニーズの変化を捉え、自社の強みを活かせる領域を見極める。こうしたデータドリブンなアプローチこそが、激しい競争環境を勝ち抜くための羅針盤となります。
Nintは、EC市場の透明性を高めるデータを提供することで、すべてのEC事業者がデータに基づいた最適な意思決定を行えるよう、これからも支援を続けてまいります。
<出典元>
<適応したNint推計ロジック>
楽天市場:version2024(β版)、Amazon:version2025(β版)、Yahoo!ショッピング:version2024(β版)
<調査概要・免責事項>
調査機関: 株式会社Nint
調査対象: Nint推計データ (楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)
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Nint ECommerceについて
Nint ECommerceは、AIやクローリングなどの技術により日本国内の3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)で販売される商品の売上金額・販売数量を高精度に推計したデータに、ECモール内でのプロモーションデータ等も加えた総合的なECデータ分析ツールです。
無料トライアルもご案内しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
株式会社Nint 会社概要
代表者: 吉野順子
所在地:東京都新宿区西新宿八丁目17番1号 住友不動産新宿グランドタワー37F
設立:2019年2月
事業内容:ECデータ分析サービスの提供
グループ会社:任拓数見数据服務(上海)有限公司
Nintグループは「データで世界を自由にする」というミッションのもと、急拡⼤するEC市場において、誰もが最適なマーケティング施策を可能とするECデータ分析プラットフォームを実現します。中国・⽇本のEC市場で10年以上にわたり、EC市場動向に関する推計データを独⾃に蓄積・提供し、⽇本で約2000社のサービス導⼊実績があります。
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