変電設備などの電気事故を未然に防止 NITE、「スマート保安技術カタログ第12号、13号案件」を公開

~運用・実証事例の紹介~

 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 【NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原】は、電気設備の事故防止に向け、AIやIoT等を利用した新たな保安技術(スマート保安技術)を評価し、「スマート保安技術カタログ」として公表しています。
 この度、NITEは、以下の2つのスマート保安技術を新たに評価し、カタログに掲載しました。
①変電設備の劣化予兆を検出できる技術(12号案件)
②電気設備の地絡事故の予兆を検知する技術(13号案件)
これらの最新技術が普及することで、電気設備の安全性や生産性が高まることが期待されます。

 第12号案件としてスマート保安技術カタログ(以下、「カタログ」)に掲載されたのは、製鉄所で長期間使用されている設備に導入されたスマート保安技術の概要とその技術により得られた寿命予測等に関する知見で、特に高経年の設備の故障予測や更新のサポートに役立ちます。

 また、第13号案件について、PASに内蔵されているセンサーの活用により突発的な停電事故を防止できる技術の概要を実証データと共にカタログに掲載することで、保安レベル向上に資するものです。


       図1 第12号案件概要                       図2 第13号案件概要



  • 第12号 「製鉄所変電施設におけるスマート保安技術」について

技術の概要

 特別高圧受変電設備は日本に1万数千件程度あり、建設後30年以上経過している設備も多く、計画的に更新するためには、稼働中の設備の状態の把握(故障・寿命予測)が重要です。

 第12号の技術は、特高・高圧受変電設備に高周波パルス信号を検知する電圧センサー、TEVセンサー(過渡接地電圧センサー)、HFCTセンサー(高周波電流センサー)を設置して常時監視し、捉えた波形を数学的に変換した2種類のグラフ(PRPD,TF)を用いてノイズの中から部分放電を抽出することによって劣化予兆を検出できる技術で、JFEスチール株式会社で導入・運用されています。


                 図 3 TFマップを用いた特徴抽出



スマート保安の事例

 実際に部分放電を監視し、得られたデータから判断し特別高圧受変電設備を点検したところ、図4のような放電の跡が確認できました。これは、経年設備が重大事故に至る前に劣化予兆を検出できたと考えられます。


                  図4 部分放電の痕跡事例



  • 第 13号「高圧絶縁監視機能の導入による高圧地絡停電事故の前兆検知技術」について

技術の概要

 本技術は、株式会社戸上電機製作所(以下、戸上電機)が開発したPASに取り付けて使用する「高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置」についての技術です。 PASとは、需要設備から外部の配電線への波及事故防止のために、受変電設備と高圧配電線との間に設置されている装置です。本技術は、元々PASに内蔵されたセンサーを利用することで、地絡に至る前の「微地絡」と呼ばれる地絡事故の前兆現象(予兆)を検知します。この予兆を踏まえ、大きな事故が起きる前に設備点検やメンテナンスを行うことで、停電事故を防止することが出来るようになります。


               図5 高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置


                   図6 本技術の検出範囲


 この技術は2022年7月に「基礎要素技術」としてカタログに登録しておりますが、今回、実証データを踏まえた再評価を行い、新たに「保安技術モデル」としての登録となりました。


「IoTを活用した高圧電気事故の予兆を検知する技術「スマート保安技術カタログ」第2号案件を公開」 >>

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000092488.html

https://kyodonewsprwire.jp/release/202207254258



スマート保安の事例

 戸上電機では、図2のような「微地絡・地絡データ収集システム」を開発し、全国で実証試験を行ったところ、ケーブルの外側の皮膜(シース)からでは目視で確認できないケーブル内部に発生した穴(地絡事故の前兆現象(予兆))を確認することができました(図7,図8)。これにより地絡による停電を未然に防止できたと考えられます。

                  図7 ケーブル詳細調査(X線CT画像)


                      図8 ケーブル解体調査



  • スマート保安プロモーション委員会について

 電気保安の現場では、需要設備の高経年劣化や電気保安人材の高齢化・人材不足、台風や自然災害など様々な課題を抱えています。こうした課題の解決に向け、NITEは経済産業省からの要請を受けて、スマート保安プロモーション委員会を立ち上げました。

 当該委員会では、学識経験者等からなる委員が、申請のあった保安管理技術案件の代替性・実効性・経済性などを評価します。また、評価されたスマート保安技術の導入・普及を阻害する要因があれば、その対応策を検討し、国や業界団体への提言も行っています。


              図9 スマート保安プロモーション委員会の位置づけ


※出典:「電気保安分野 スマート保安アクションプラン」(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/smart_hoan/denryoku_anzen/20210430_action_plan.html


スマート保安プロモーション委員会 >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/smart_hoan_shiryo.html



  • スマート保安技術カタログについて

 スマート保安プロモーション委員会による評価の結果、スマート保安技術として妥当と判断されたものは、スマート保安技術カタログに掲載し、NITEのホームページ上で公開しています。本カタログは、電気設備の設置者等が保安技術導入・促進を検討する際の参考資料として活用されることを目的としたもので、スマート保安技術としての活用が可能又は期待されると評価された「基礎要素技術」と、スマート保安を導入する対象設備での実証試験により成果が評価された「保安技術モデル」に分類されております。


スマート保安技術カタログ >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/smart_hoan_catalog.pdf


※本技術は、保技 00004-P1(資料1.1)~保技 00004-P6(資料2.4)、

 保技 00005-P1(資料1.1)~保技 00005-P11(資料4.2)にそれぞれ掲載)



  • NITEにおける電気保安の課題解決に向けた取り組み

 NITEでは、経済産業省からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の設計、維持、運用等における安全を確保するための行政活動)を技術面から支援するため、2020年5月に電力安全センターを新設しました。NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、新しいスマート保安技術の普及啓発活動や規制見直し等の提言を行うなど、電気保安の維持・向上に資する様々な業務に取り組んでいます。


NITE電力安全センターの業務紹介 >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html



  • 用語解説

【スマート保安】:

IoTやAIなどの新技術を導入し、産業保安における安全性や効率性の向上を図っていく取り組みのことです。

スマート保安の説明 >>> https://nite-gov.note.jp/n/n91734ca4bbb3


【PAS(Pole Air Switch)】:

電柱の上部に付けられている開閉器のことです。万一事故が発生した場合、SOG動作により開閉器内の電路を遮断することでその事故による影響が電力会社の配電線へ及ばないようにします。SOG開閉器とも呼ばれます。


【SOG(Storage Over Current Ground)動作】:

短絡や地絡を検知した際に、開閉器内の電路を遮断する動作のことです。


【部分放電】:

部分放電とは微弱な放電のことです。電気機器の絶縁体中に微小な欠陥や絶縁体表面に汚れなどがあると、その部分に電界が集中し、部分放電が発生します。


【地絡】:

電気回路(電線等)が地面に接触し、大地へ電流が流れる現象のことです。本来想定していないところに電流が流れることで、大きな事故を引き起こす可能性があります。


【受変電設備】:

発電所から変電所を通して送られてくる電気を、使用する電圧に変換するための設備を指します。電気を多く利用する工場などに設置されます。電圧が7000 Vを超えるものは特別高圧受変電設備となります。


【保安技術モデル】:

スマート保安技術カタログにおいて、技術の登録区分は、まだ実証段階でない「基礎要素技術」と、実証試験等の結果を踏まえ、実装又は普及拡大が期待できる「保安技術モデル」の2種類があります。

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会社概要

URL
https://www.nite.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都渋谷区西原2-49-10
電話番号
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代表者名
長谷川 史彦
上場
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資本金
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設立
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