AI需要で拡大するデータセンター、成長の鍵は地域社会からの信頼【A.T. カーニー】
2030年の世界のデータセンター電力消費量は約945TWhへ。電力・水と地域便益の両立が課題
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考『データセンター成長の新たな条件――地域社会からの信頼をいかに獲得するか』(英題:Data centers: the new imperative of social license)を公開しました。本論考は、AI需要の拡大に伴いデータセンターの電力・水への負荷が高まる中、地域社会からの信頼や承認、すなわち社会的受容(ソーシャルライセンス)を立地、運用、そして投資判断に組み込む必要性を指摘しています。
世界のデータセンターによる電力消費量は、2030年までに約945TWhに達する見通しです。従来のように、建設支出や税収を地域への主な価値として示すだけでは、電力・水利用、送電網への負荷、土地利用、騒音、雇用創出に対する地域の懸念に十分応えることは難しくなっています。本論考は、「設計」「運用」「正当性」の3つの柱に沿って、地域への負荷を抑えながら、地域社会に見える便益を生み出す施策を提案しています。
2030年の世界の電力消費量は約945TWh、電力と水が地域の制約に
世界のデータセンターの電力消費量は2030年までに約945TWhとなり、世界の電力需要の3%弱を占める見通しです。米国では、2023年に176TWh、国内消費量の4.4%を占め、2028年には325~580TWh、6.7~12.0%に達する可能性があると本論考は示しています。
水もまた、地域ごとの重要な制約要因です。ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の推計では、2023年の米国データセンターによる直接的な水使用量は約660億リットル、電力使用に伴う間接的な水使用量は約8,000億リットルでした。送電網の容量や水の利用可能性は、地域によって大きく異なります。そのため、施設単位の効率にとどまらず、立地先の地域システム全体に与える負荷を踏まえた判断が必要となります。
建設支出や税収だけでは、地域社会の懸念に十分応えられない
従来、データセンター事業者が地域に示してきた価値提案は、建設支出や税収を中心としていました。本論考が挙げるバージニア州ラウドン郡の事例では、2020年のデータセンター関連税収は4億2,470万ドルに達し、同産業による推定予算コストの13倍を超えました。一方で、財政面の便益は地域によって一様ではなく、税収だけで地域社会の懸念に応えられるわけではありません。バージニア州の合同立法監査審査委員会によると、一般的な25万平方フィートのデータセンターでは、建設のピーク時に約1,500人が現場で働く一方、稼働後の常勤雇用は約50人にとどまります。直接雇用を過度に訴求するのではなく、人材育成、地元調達、エネルギー負担の軽減などを通じて、地域にとって実感できる価値を示すことが重要です。

「設計・運用・正当性」の3本柱で、地域との合意を投資計画に組み込む
本論考は、データセンター事業者が社会的受容を獲得するための実行領域として、「設計」「運用」「正当性」の3つの柱を提示しています。
「設計」では、AIの学習と推論の処理特性に応じて立地を選び、送電網に柔軟性を提供するとともに、新たなクリーン電力、蓄電設備、ピーク需要抑制への投資を行うことを提案しています。施設が地域から資源を調達するだけでなく、地域システム全体の容量を高めるという考え方です。
「運用」では、電力使用効率(PUE)の改善だけで評価するのではなく、水利用とのトレードオフを踏まえた流域ごとの冷却戦略、排熱の地域利用、周辺の住宅や学校などの省エネ支援を挙げています。例えば、蒸発冷却は電力使用量の削減に寄与する一方、施設内の水使用量を増やす可能性があります。
「正当性」では、地元人材の育成と調達、施設ごとの電源構成や水使用量などの情報開示、地域への投資成果の測定と監査を求めています。本論考は、地域社会との関係構築を、企業の社会的責任に付随する活動ではなく、データセンター事業の成長と資本管理に関わる中核課題として位置付けています。

論考について
論考名:『データセンター成長の新たな条件――地域社会からの信頼をいかに獲得するか』(英題:Data centers: the new imperative of social license)
監修者
針ヶ谷 武文 日本代表 マネージングディレクタージャパン / シニアパートナー
東京大学教養学部卒業。大手通信会社で営業企画・事業企画・サービス開発を経て、A.T. カーニーに入社。通信・ハイテク・メディア企業を中心に、約20年の超えるコンサルティング経験を有する。事業会社における様々な組織横断での事業推進の経験を下敷きに、デジタルを始めとするトランスフォーメーション、海外事業戦略、新規事業戦略、事業ポートフォリオの再構築、事業ターンアラウンドのテーマを中心に地の足の付いた実効性の高いコンサルティングサービスを提供。
滝 健太郎 シニアパートナー
東京大学経済学部経済学科を卒業後、A.T. カーニーに入社。約10年のコンサルティング経験を有する。通信・金融機関・消費財を中心に、戦略~新規事業・R&D~M&A~マーケ・営業~オペレーション~コスト~人事・組織など、経営に係わる幅広いテーマを手掛け、特に、全社レベルでの大規模デジタルトランスフォーメーションを得意とする。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。世界40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。 https://www.jp.kearney.com/
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