企業のIT関連支出、IT予算を15~30%上回る事例も――全社的な支出管理の見直しを提言【A.T. カーニー】

SaaS・従量課金・生成AIで複雑化するIT支出、全社横断の可視化と統制に向けた6つの施策

KEARNEY

A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考『管理の届かないIT支出が利益率を圧迫する』(英題:Ungoverned spending on IT is compressing margins)を公開しました。本論考では、SaaS、従量課金、生成AIの普及に伴い、企業のテクノロジー支出が部門横断で拡大する一方、従来のIT予算を中心とした管理体制では実支出の全体像を十分に把握しきれなくなっている問題を指摘しています。

Kearneyが支援を行った複数の企業事例では、各部門のSaaS、経費処理されるAIサブスクリプション、分散したクラウド利用などを合算した実際のテクノロジー支出は、公式のIT予算を15~30%上回っています。本論考は、こうした管理の行き届かない支出を可視化し、企業全体で統制するための6つの施策を提示しています。具体的には、支出の一元管理、従量課金やAI料金に対応した調達の見直し、AI施策の段階的な審査、シャドーAI(従業員が会社の承認を得ずにAIを利用すること)の正式な管理体制への組み込みなどを通じて、テクノロジー投資の最適化と利益率の維持を図ることの重要性を示しています。

 

実際のテクノロジー支出は公式IT予算を15~30%上回る

企業のテクノロジー支出は、売上高の3~5倍のペースで伸びています。米国の調査会社Gartnerの予測によると、2026年の世界のIT支出は前年比10.8%増の6兆1,500億ドルに達する一方、S&P 500企業の売上高成長率に関する市場予想は1桁台半ばにとどまっています。売上高が4%増加する中、IT支出が10%増える状況が継続すれば、価格設定、人員配置、戦略投資といった経営判断にも影響を及ぼす可能性があります。

従来のIT予算管理では、公式IT予算の枠外で発生するに支出を十分に捉えることができません。部門ごとに分散する契約や利用量を含め、実際のテクノロジー支出を一元的に把握し、経営指標と結び付けて管理することが、利益率を維持するための出発点となります。

SaaS、従量課金、生成AIなど4つの構造変化が、従来のIT予算管理を複雑化

本論考では、従来のIT予算管理を難しくしている要因として、4つの構造変化を挙げています。第1の変化は、永続ライセンスからSaaSへの移行です。大企業では平均660のSaaSアプリケーションが利用され、従業員1人当たりの年間費用は4,830ドルに達しています。一方、企業全体のライセンス利用率は54%にとどまり、未使用ライセンスによる損失は年間平均1,980万ドルに上ります。第2の変化は、利用量に応じて費用が動く従量課金の拡大です。2025年にはITリーダーの66.5%が、従量課金またはAI関連料金の利用増により予想外の請求を経験しています。

第3の変化は、アプリケーション管理がIT部門の外へ移ったことです。現在、企業が利用するアプリケーションの56%は中央IT部門以外によって管理されており、全社的な支出の把握や統制が難しくなっています。第4の変化は、生成AIの普及による新たな支出経路の拡大です。生成AIは、既存SaaSへの有料追加機能、AI事業者との直接契約、従業員による個人向けツールの利用という3つの経路から企業内に広がっています。一方、生成AIの実証実験では、損益への明確な効果を伴う本番運用に到達するのは5%にとどまっており、90日以内の利用状況を基準に、継続可否を判断するといった仕組みが求められます。

6つの施策で、IT支出の可視化とコスト最適化を推進

本論考は、1~2回の予算編成サイクル内に効果を確認できる取り組みとして、以下の6つの取り組みを挙げています。

① テクノロジー支出の一元的な把握 
公式IT予算、SaaS、シャドーAI、クラウドの従量課金、既存ライセンスに組み込まれたAI、開発費を含む支出の一元的な把握。

②従量課金・AI料金に対応した調達の見直し 
価格上昇率、トークン利用量、利用量の上限、AIモデルのバージョン固定などを契約条件に盛り込んだ調達モデルの見直し。

③AI施策の段階的な審査とポートフォリオ管理
AI施策の段階別分類と、明確な審査基準および利用状況に連動したKPIに基づくポートフォリオ管理。

④シャドーAIの正式な管理体制への組み込み
CIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)、法務責任者の連携によるシャドーAIの正式な管理対象への移行。

⑤既存システムの運用予算の圧縮とAI投資原資の確保
既存システムの運用予算の圧縮による、新たなAI投資に向けた原資の確保。

⑥取締役会によるIT支出の継続的なモニタリング
売上高の成長率に対するIT支出の伸びについて、取締役会による四半期ごとの継続的な追跡。

また、支出の可視化と最適化を担うFinOps(クラウドなどのテクノロジー支出を可視化・最適化する管理手法)の成熟度向上も、予測精度を高めるための重要な前提になります。

2026年の大手クラウド事業者による設備投資は6,000億~7,700億ドルで、その約75%がAI関連に充てられると見込まれています。こうした投資は2027~2028年に企業の利用料金を通じて回収されるため、2026年中に管理の空白を埋めることが、将来のコスト上昇に備えるうえで重要です。

 

論考について

論考名:『管理の届かないIT支出が利益率を圧迫する』(英題:Ungoverned spending on IT is compressing margins)

URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/ungoverned-spending-on-it-is-compressing-margins

 

監修者

川﨑 健史 パートナー

東京大学理学部卒、Duke University, Fuqua School of Business (MBA) 修了。NTT東日本、米系戦略コンサルティングファーム、Big4コンサルティング部門等を経て、A.T. カーニーに入社。日系及び東南アジアの通信・ハイテク企業を中心に、中期経営計画・グローバル経営マネジメント・テクノロジー戦略・事業モデル変革・業務パフォーマンス変革等の幅広いCXOアジェンダに従事。近年では、戦略コンセプトの立案から実行サポートまで一貫したデジタルトランスフォーメーションのサポートも数多く手掛ける。

長内 正一 パートナー

東京オフィスの戦略オペレーションプラクティスのコアメンバー。ICT企業、金融機関、製造業などのクライアント企業のトランスフォーメーションを中心に支援。

 

A.T. カーニーについて

A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。世界40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。 https://www.jp.kearney.com/

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

A.T. カーニー株式会社

20フォロワー

RSS
URL
https://www.jp.kearney.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー23階
電話番号
03-6890-5001
代表者名
針ヶ谷 武文
上場
未上場
資本金
-
設立
1926年09月