「三国に返すことでき、誇り」
国重文・エッセル堤(福井県坂井市)図面6点、市に寄贈G・A・エッシャーのひ孫ヨリスさん(オランダ)


福井県坂井市の国重要文化財、三国港突堤(通称・エッセル堤)を設計したオランダ人G・A・エッシャーのひ孫にあたる水利工学研究者、ヨリス・エッシャーさん(59)が5月30日、エッシャー直筆のエッセル堤の築造法や指示を盛り込んだ設計図、地形図などの図面6点を同市に寄贈した。この日2年ぶりに同市の龍翔博物館を訪れたヨリスさんは「三国で駆使された技術を、この三国に返すことができてうれしい」「日本にとって貴重な文化財、返すことができて誇り」などと語り、「子どもたちの学びにも役立ててほしい」と今後の活用に期待を寄せた。図面は同博物館の秋の特別展で公開される。
図面6点ともに「アメージング!」と市長歓喜
水利工学研究者のヨリスさんは、過去150年間のオランダと日本の水利工学における職人の役割と位置付けを調査研究している。2023年7月にもその調査で、坂井市龍翔博物館を訪れており、その際に同館に、曽祖父直筆のオランダ語原文「日本回想録」や同突堤工事の計画書などが丁寧に展示されていることに感銘を受けた。そこで、ヨリスさん自身が、所有しているエッセル堤の関連図面の寄贈を申し出ていた。
寄贈された6点は、和紙に描かれた4点、と洋紙の2点で、図面は大きなもので縦62×横92センチ、小さいもので縦31×横41.5センチのサイズのドローイング(図面)。明治初期に突堤が建設された九頭龍川河口の俯瞰図や、船で運搬された石の積み下ろしをイラストで描いた指示書、突堤の基礎部分で水中に沈められた土木技術「粗朶沈床(そだちんしょう)」を具体的に描いた図などいずれも建設工事関連の図面。中には、約500メートルある突堤の根元から先端まで11地点別の断面を描いたイラストもあり、突堤の構造を知る非常に貴重な史料となっている。


指示書きはオランダ語や英語、日本語読みの外国文字が入り交じり、「Kusuriu Gawa(九頭龍川)」「Mikuni(三国)」などがはっきり読める部分もあった。
同館ではヨリスさんが池田禎孝(いけだ・よしたか)市長や笠松雅弘(かさまつ・まさひろ)館長らの目の前で、図面を1枚1枚丁寧に広げ、何が描かれているのかを解説した。池田市長が「いくつか(の図面の)寄贈か、貸与をお願いしたい」と願い出ると、ヨリスさんは「もちろん、ここにあるべき。すべての図面を寄贈したい」の笑顔で答えると、池田市長は「いや、びっくり、アメージング!」と大声を挙げるほど喜んだ。当初、市側は、寄贈は1点だけと考えていた。
図面はいずれも明治初期に描かれたもので多少の痛みはあるが、ヨリスさんは「祖父や父らから大切に受け継いできたものだが、日本ではきっと文化財に当たる代物。この技術が生かされた三国に返すことができて誇りに思う。エッセル堤がどのように建設されていったのか、子どもたちの学びに役立ててほしい」と熱く語った。池田市長も「オランダの先進土木技術を知ることができる貴重な史料、みんなに、市民みんなにぜひ見てもらいたい」と答え、深く感謝していた。
同館では、図面6点を展示物の目玉に、今秋10~12月に「文明開化の華~龍翔小学校とエッセル堤〜」展を開くことにしている。
G・A・エッシャー(オランダ語読みはエッセル 1843-1939)
明治初期に、政府のお雇い外国人技術者として来日、日本各地で治水工事に携わる。三国には明治9(1876)年に2度滞在、当時、港底の砂溜まりがひどく船が停泊できないなど北前船主らが頭を抱えていた難題に対し、突堤案を提案。設計するなど改修で主導的役割を果たした。三国港突堤は1878(明治11)年に着工、4年後に完成。現在は全長927メートルあるが、手前の約511メートルが当時、築造された。幅は約9メートル。その機能性、技術力の高さ、歴史的価値などから国の重要文化財に指定されている。

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