AI・量子時代のサイバーリスク、事業を守る備えを提言【A.T. カーニー】
重要サービスと外部依存の把握、耐量子暗号への移行を経営課題に
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考『サイバーリスクは経営課題に――AIと量子技術の進展が迫るレジリエンス強化』(英題:When cyber moves upstairs: why AI and quantum are making resilience a board-level capability)を公開しました。本論考は、AIによるサイバー攻防の加速、量子技術が暗号基盤にもたらす変化、規制当局が求める事業継続の実証を踏まえ、サイバーリスクを経営課題として捉える必要性を論じています。
企業の重要サービスは、クラウド、ソフトウェア、AIプラットフォーム、外部サプライヤーなどに支えられています。本論考は、混乱を完全に防ぐことを前提にせず、発生時にも事業と顧客サービスを継続し、信頼を維持するための対応を提言しています。経営層が進めるべき行動として、重要サービスの把握、外部依存の管理、耐量子化への移行、対策を示す証拠の整備を挙げています。
AIがサイバー攻防を加速、外部依存への備えも経営課題に
本論考が紹介する世界経済フォーラムの見通しでは、リーダーの94%がAIを2026年のサイバー分野における最大の変化要因と考え、87%がAIを利用した脆弱性を最も急速に拡大するリスクとみています。また、AIが生成したフィッシングのクリック率は約54%で、従来型の約12%の4倍超に達します。AIは、これまで専門知識と多くの人手を要した活動を、より速く大規模に実行できるようにしています。
一方、防御側もAIを活用できます。本論考はその事例として、MozillaがClaude Mythosをセキュリティ工程に組み込み、Firefoxの一度のリリースで同モデルが特定した271件のバグを修正したことを紹介しています。また、重要サービスがクラウド事業者やソフトウェア、AIプラットフォームに依存するほど、外部の障害や提供条件の変化が事業に及ぶ可能性も指摘しています。

耐量子暗号への移行には年単位の準備が必要
量子コンピューターが現在の公開鍵暗号を破れる時点は「Qデー」と呼ばれます。その到来時期を正確に予測することはできませんが、大企業の暗号基盤を置き換えるには何年もかかります。本論考は、暗号化された情報を今収集し、将来復号する手法を挙げ、5~20年にわたり機密性を保つ必要がある顧客情報や知的財産などは、すでに対策の対象だと指摘しています。
NIST(米国国立標準技術研究所)は、直ちに利用できる最初の耐量子暗号標準を確定しました。英国国家サイバーセキュリティセンターは、2028年までの対象の洗い出し、2031年までの優先システムの移行、2035年までの完了という道筋を示しています。本論考は、暗号への依存関係を把握し、暗号方式を変更できる柔軟性を備えた複数年計画を、今から進めるよう提言しています。

規制順守にとどまらず、事業を守れる証拠を整える
欧州ではデジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)が2025年1月から適用され、金融機関に対し、外部委託先に障害が起きても重要サービスを継続・復旧できることを示すよう求めています。改正ネットワーク・情報システム指令(NIS2)は、サイバーリスクに対する取締役会の直接的な責任を定めています。本論考は、規制対応を個別の活動にせず、日常の事業運営にレジリエンスを組み込むことが重要だと論じています。
そのために本論考は、経営層に4つの行動を提言しています。重要サービスを特定し復旧の優先順位を定めること、クラウドやAI基盤を含む外部依存の集中リスクを把握すること、耐量子化への移行を始めること、重要サービスの保護とAIの管理を示せる証拠を整えることです。サービスと依存関係のマップ、レジリエンステスト、修復履歴、復旧訓練などを通じて、混乱時の対応力を検証できるようにする必要があります。

論考について
論考名:『サイバーリスクは経営課題に――AIと量子技術の進展が迫るレジリエンス強化』(英題:When cyber moves upstairs: why AI and quantum are making resilience a board-level capability)
監修者
大塩 崇 シニアパートナー
早稲田大学理工学研究科卒。NTTデータ、米系戦略コンサルティングファームを経て、A.T. カーニーに入社。ハイテク、通信・ICT、エレクトロニクス、商社を中心に、シナリオプラニング、新規事業構築、Go-to-market、事業ポートフォリオの再構築、中長期経営計画、M&A戦略、収益改善、オペレーション改革などのコンサルティングに従事。
西川 覚也 シニアパートナー
東京大学工学部卒。特許事務所を経て、A.T. カーニー入社。現在の技術軸に新しい技術軸を足して、需要を創造するM&A戦略、IoTを梃にした新しい価値の創造(ビジネスモデル、オペレーションモデル)を支援。
川﨑 健史 パートナー
東京大学理学部卒、Duke University, Fuqua School of Business (MBA) 修了。NTT東日本、米系戦略コンサルティングファーム、Big4コンサルティング部門等を経て、A.T. カーニーに入社。日系及び東南アジアの通信・ハイテク企業を中心に、中期経営計画・グローバル経営マネジメント・テクノロジー戦略・事業モデル変革・業務パフォーマンス変革等の幅広いCXOアジェンダに従事。近年では、戦略コンセプトの立案から実行サポートまで一貫したデジタルトランスフォーメーションのサポートも数多く手掛ける。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。世界40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。 https://www.jp.kearney.com/
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