スペースデータ、CSO兵頭龍樹博士が3次元シミュレーションで微小隕石の超高速衝突現象に迫る

岩石質の微小隕石が氷の天体へ秒速 30km で衝突する過程を 3 次元シミュレーションで可視化・解析。空隙率がクレーター形成・衝撃加熱・蒸発を左右すると実証した成果が、地球惑星科学の国際学術誌に掲載。

株式会社スペースデータ

株式会社スペースデータ(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤航陽、以下「スペースデータ」)は、最高科学責任者(CSO)を務める兵頭龍樹博士(惑星科学/AI科学の大学教員を兼任)を主著者とする論文が、2026年6月20日、地球惑星科学の国際学術誌「Earth and Planetary Science Letters」にオンライン掲載されたことをお知らせします。本研究は、宇宙で普遍的に起こる「超高速衝突」という現象そのものに着目し、岩石質の微小隕石(マイクロメテオロイド)が氷の天体へ秒速30kmで衝突する過程を、世界最高水準の3次元衝突シミュレーションで詳細に可視化・解析したものです。その結果、衝突体(隕石)と標的それぞれの空隙率(内部のすきまの多さ)が、クレーターの形成過程や衝撃による加熱・蒸発の度合いを大きく左右することを明らかにしました。

■ 背景:宇宙で絶えず起こる「超高速衝突」という現象

天体衝突は、惑星表面の地形や組成、温度状態を時間をかけて作り変えていく、宇宙でもっとも基本的な現象のひとつです。とりわけ太陽系には、小惑星や彗星、カイパーベルト天体に由来する「微小隕石(マイクロメテオロイド)」――数ミクロンからサブミリメートルほどの“宇宙のちり”――が無数に漂っており、外惑星の領域では、惑星の強い重力に引き寄せられた微小隕石が、リングや衛星などの天体表面に秒速10~100kmという超高速で次々と衝突しています。

こうした超高速衝突では、衝突体は一瞬で強い衝撃波にさらされ、加熱・溶融・蒸発し、高温の蒸気や溶融粒子が噴き出すと考えられてきました。しかし、この衝突という現象が「実際にどのように進行し、衝突体がどれほどの圧力や温度を経験するのか」、とりわけ衝突体と標的の空隙率(内部のすきまの割合)の違いがその結末をどう左右するのかは、微小隕石のスケールではよく分かっていませんでした。微小隕石の多くは岩石質(非氷)である一方、標的となる天体は氷でできていることが多く、しかも双方が大きく異なる空隙率を持ちうるため、衝突の進み方は一様ではないと予想されます。

本研究が主な対象として想定したのは、日本の次世代探査計画の候補天体としても注目されている土星リングです。土星リングでは、秒速およそ30kmに達する超高速衝突が頻繁に発生していると考えられています。土星リングは、外部から降り注ぐ非氷の微小隕石によって「汚染(pollution)」され、その度合いがリングの年齢を推定する手がかりとしても使われてきました。だからこそ、降り注いだ微小隕石が「衝突という現象」を通じて実際にどうなるのかを正確に理解することが、土星リングをはじめとする天体表面の進化を読み解くうえで欠かせない第一歩となります。

■ 研究の概要:超高速衝突で微小隕石はどうなるのか

本研究を主導した兵頭龍樹博士は、衝突現象の専門家であり、かつ10年以上にわたって土星リングの起源という難問に取り組んできました。現在は、東京科学大学 地球生命研究所や立教大学大学院 人工知能科学研究科などで特任准教授などとして研究・教育に携わりながら、スペースデータの最高科学責任者(CSO)を務めています。今回の成果も、長年積み重ねてきた研究の延長線上に位置づけられるものです。

研究グループは、世界最高水準の3次元衝突計算コード「iSALE-3D」を用いて、岩石質(ダナイト)の微小隕石が氷の標的に秒速30kmで斜め(45度)に衝突する過程を、超高解像度でシミュレーションしました。さらに、隕石と標的それぞれの空隙率を独立に変えながら(すきまのない0%と、極端にすきまの多い90%という両極端の組み合わせ)、衝突直後のクレーター形成と、隕石が経験する最高圧力・最高温度を調べました。あわせて、計算結果を物理的に解釈するための半解析モデル(数式に基づく簡便な予測モデル)も新たに構築し、衝突のエネルギーが「物質の圧縮」と「すきまの潰れ(不可逆な散逸)」にどう振り分けられるのかを透明性高く示しました。

標的と隕石の空隙率の組み合わせを変えた3次元衝突シミュレーション(衝突速度 秒速30km、衝突角度45度、隕石半径10μm)。色は温度を表す。空隙率の組み合わせによって、深く貫入する細長い空洞から、表面付近での爆発的な蒸気の広がりまで、衝突直後の様相が大きく変化する様子がわかる。(出典:Hyodo et al. 2026, Earth and Planetary Science Letters/CC BY 4.0)

■ 主な成果

1. 衝突直後のクレーター形状は、空隙率の組み合わせで劇的に変化する

  • すきまのない隕石が、すきまの多い(90%)氷の標的に衝突すると、隕石は標的に深く貫入し、高温の蒸気で満たされた細長い空洞をつくります。

  • 逆に、すきまの多い(90%)隕石が、すきまのない氷の標的に衝突すると、ほとんど貫入せず、表面付近で1万度に達する高温の蒸気が爆発的に広がります。

  • 双方の空隙率が同程度の場合は、その中間的で、より半球状に近いクレーターになります。

2. 隕石が受ける最高圧力・最高温度は、空隙率によって約1桁も変わる

空隙率が高い(すきまが多い)ほど、衝突のエネルギーがすきまを潰すこと(不可逆な散逸)に費やされ、隕石に伝わる衝撃圧は弱まります。その結果、隕石が経験する最高圧力・最高温度は、空隙率の組み合わせによって10倍近くも変化することがわかりました。

3. それでも、30km/sの高速衝突では岩石質の微小隕石は“ほぼ確実に”蒸発する

最高圧力・最高温度がこれほど大きく変わるにもかかわらず、岩石質の微小隕石は、隕石・標的の空隙率の組み合わせによらず、いずれの場合も効率よく加熱され、蒸発することが示されました。さらに、すきまの多い氷の標的に隕石が深く貫入する場合には、標的側から生じた高温の水蒸気との熱のやりとりによって、隕石が直接の衝撃を強く受けなくても高温に達することも明らかになりました。

■ 本成果の意義:土星にとどまらない、宇宙の衝突現象への波及

本成果の意義は、「空隙率という物質の内部構造が、超高速衝突という現象の結末を支配する」ことを、クレーターのでき方から衝撃加熱・蒸発まで一貫して明らかにした点にあります。衝突のエネルギーが、物質そのものの圧縮と、すきまが潰れることによる不可逆な加熱とにどう振り分けられるのかを、数値計算と新たに構築した半解析モデルの両面から定量的に示したことで、超高速衝突現象の普遍的な理解が一歩進みました。

この知見は、土星リングの成り立ちにも直接かかわります。これまで、外部から降り注ぐ非氷の微小隕石はリングを“そのまま”汚していくと暗黙に想定されがちでした。しかし本研究は、その汚染源である微小隕石が衝突という現象を通じてほぼ蒸発してしまうことを示しました。つまり、微小隕石はもとの形のままリングに取り込まれるのではなく、蒸発・凝縮・化学変化といった大きな熱力学的・化学的プロセスを経て初めてリングに残されるということです。これは、兵頭博士らが2025年に「Nature Geoscience」誌で発表した、土星リング粒子の“汚染耐性”に関する研究とも整合する結果です。また、リング粒子の空隙率の違いが、衝突で生じる蒸気の量やエネルギーの散逸に影響しうることも示唆されました。

そして、こうした超高速衝突は土星に限らず、外惑星領域をはじめとする多くの天体表面で普遍的に起きており、表面の構造・組成・熱的な状態を長い時間をかけて変えていきます。今回得られた「衝突現象の進み方と空隙率の役割」という知見は、土星以外のさまざまな惑星環境における衝突・表面進化の理解へと幅広く拡張できるものです。

■ 今後の展望

今回は岩石質の隕石が氷の標的に衝突する場合を扱いましたが、研究グループは今後、氷の隕石が岩石質の標的に衝突する逆のケースや、より広い衝突速度・空隙率・組成の範囲へと研究を拡張していく予定です。また、スペースデータが提供する宇宙空間の脅威を統合的に監視・分析・予測する宇宙AIプラットフォーム「SpaceBrain(スペースブレイン)」への活用ならびに機能グレードアップにも活かし、研究とプロダクトを接続してまいります。

スペースデータは、「宇宙を誰もが活用できる社会へ」という思いのもと、宇宙の民主化を掲げ、誰もが宇宙にアクセスし、宇宙を理解できる社会の実現を目指しています。今回のような基礎研究は、宇宙で起こっている現象のより深い理解につながるものです。スペースデータは今後も、宇宙への根源的な問いに挑む研究の成果を社会へ届けてまいります。

■ 論文情報

掲載誌:Earth and Planetary Science Letters(2026年6月20日オンライン掲載)

論文タイトル:Numerical simulations of hypervelocity micrometeoroid impacts: Rocky impactors onto icy targets and the role of porosity

著者:兵頭龍樹(株式会社スペースデータ/東京科学大学 地球生命研究所/立教大学大学院 人工知能科学研究科/パリ・シテ大学)、脇田茂(Purdue University)Brandon C. Johnson(Purdue University)

DOI:10.1016/j.epsl.2026.120179

URL:https://doi.org/10.1016/j.epsl.2026.120179

※本論文はオープンアクセス(CC BY 4.0)で公開されており、どなたでも全文をご覧いただけます。

※本リリースは研究成果を一般向けにわかりやすく紹介するものです。専門的な詳細・前提条件については原著論文をご参照ください。


株式会社スペースデータについて

株式会社スペースデータは、「宇宙を誰もが活用できる社会へ」という思いのもと、宇宙とデジタル技術の融合によって新たな産業や社会基盤を創造するテクノロジースタートアップです。

地球・宇宙環境を精密に再現するデジタルツイン技術を活用して、宇宙から都市開発、防災、安全保障まで、次の未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を目指しています。さらに、宇宙ロボット・宇宙ステーションの運用基盤開発を通じて、宇宙社会の実現に向けて取り組んでいます。

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社名:株式会社スペースデータ
代表:佐藤航陽
所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
資本金:15億1300万円
事業内容:宇宙開発に関わる投資と研究

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代表者名
佐藤 航陽
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未上場
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15億1300万円
設立
2017年01月