オムロンとアプリズム、非集中学習技術「DcX」で開発効率を向上
環境変化に対応できるAIモデルを短期間で開発可能

オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長 CEO:辻永順太)と株式会社アプリズム(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:仙敷久善(以下、アプリズム)は、オムロン サイニックエックス株式会社(以下、OSX)が開発した非集中学習技術「Decentralized X(以下、DcX)」*1を活用し、アプリズムが提供するAIプロダクト「aiba」*2において、多様な環境条件の違いに対して期待する性能を発揮する馬体検出AIモデル(以下、検出AIモデル)の開発手法の構築に成功しました。
一般的に、外観検査等における物体検出や画像認識にAIモデルを活用する開発においては、元データや現場ごとの固有データをもとに学習を行う必要があるため、データ共有に伴う利用権利や情報漏洩への懸念とともに、対象とするデータ量の増大により開発期間やコストが課題となっています。また、近年はデータそのものの価値が高まっていることから、同一社内での共有や外部へのデータ転送に対する抵抗も強く、データを持ち寄ること自体が難しい状況にあります。こうした課題に対し、OSXが開発した非集中学習技術「DcX」は、各現場で学習されたAIモデルのみを統合することで、データを共有せずセキュアな環境でAIを高度化できる新たなアプローチです。本検証では、アプリズムとの共創により、競馬場や厩舎の馬房で利用されている検出モデルを対象にDcXを適用し、馬房環境や対象馬に変化が生じた場合でも、各現場の固有データを共有することなく、迅速に運用可能な検出モデルを生成できることを確認しました。
本検証の知見を活用し、オムロンは、中期ロードマップ「SF 2nd Stage」において強化を進める全社コア技術領域*3の一つであるAgentic AI領域に向け、追加学習に伴う開発・運用負荷を低減したAIモデル生成技術として展開していきます。これにより、各事業での活用を前提としたAI技術基盤の強化を進め、事業競争力の向上に貢献していきます。
*1 Decentralized X(DcX):複数のAIモデルを統合することで、AI開発期間を短縮し、精度を向上させる技術
*3 全社コア技術領域:SF 2nd Stageにおいて定めた注力事業に紐づき重点的に強化する6つのコア技術
■今回の検証の背景
アプリズムが提供する、馬の行動や状態をAIで見守り、管理業務を支援するAIプロダクト「aiba」は、現場ごとの環境や対象の特性に応じた検出AIモデルにより、馬の行動や状態変化を継続的に監視するサービスです。一方で、現場環境や対象条件など、学習時に想定していない条件変化が生じると、馬体の検出精度が低下する課題がありました。こうした変化に対応するためには、他のオーナーが保有する馬房データや、他拠点のデータを用いた追加学習が有効です。しかし、これらのデータは秘匿性が高く、データ共有や外部利用には制約があります。また、追加学習にはデータ収集、モデル開発、運用対応に加え、開発期間やコストの増大といった課題も伴います。

※当プロダクトは、医薬品医療機器等法(薬機法)に規定される動物用医療機器ではありません。
■技術検証の概要
OSXが開発したDcXは、各現場で生成されたAIモデルのみを持ち寄り、その出力結果を教師として用いる蒸留技術を利用した非集中型の学習手法です。これにより、各現場の固有データを第三者などの外部に共有することなく、異なる環境や対象の特徴を単一のAIモデルに統合することができます。aibaのユースケースと親和性が高いことから本手法を、「aiba」の検出AIモデルに実装し検証しました。
■各社の役割
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株式会社アプリズム:馬体検出AIモデルの開発、環境提供および実データによるアルゴリズム検証、サービス搭載に向けた実装およびプロトモデル開発
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オムロン株式会社:プロジェクトマネジメント、テクノロジーコミュニケーション
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オムロン サイニックエックス株式会社:DcXおよびAI技術に関する研究開発、AIおよび研究成果に関するアドバイザリー
■技術検証の成果
1)馬体検出AIモデルによる、馬体重心位置の推定性能の向上
「aiba」では、検出モデルにより画像内の馬体を検出し、検出枠(バウンディングボックス)で指定しています。そのバウンディングボックスの中心位置を馬体重心位置として推定しており、DcXの適用前後で重心位置の推定性能を比較しました。


本検証では、夜間で照度が低い厩舎環境においても、他拠点で学習された知見を取り込むことで、暗所環境下でも安定して馬体を検出できるようになり、馬体重心位置の推定性能が19.00%*4改善されることを確認しました。
*4 他馬房と同等の夜間状況が発生したと想定した場合の、馬体重心位置の正解とのズレの平均値の比較
2)AIモデル開発期間の短縮および運用負荷の軽減
①AIモデル開発期間の短縮
他のオーナーが保有する馬房データや、他拠点のデータを利用するには、データ利用の契約や準備に多大な時間を要するため、従来は追加学習によって環境変化へ対応せざるを得ませんでした。本取り組みにより、現場での新たなデータ収集やアノテーション作業が不要となり、検出モデルの再構築までに要していたAIモデル開発期間を従来比最大で、約75%低減し、25%程度に大幅短縮します。これにより、現場導入までのリードタイムを短縮し、サービスの垂直立ち上げを可能にします。
②コストの削減
環境変化に対応する追加学習については、収集したデータの保管やアノテーション作業、検出AIモデルの学習など、多くの人的・システムコストが必要でした。DcXを利用することで、新たなデータ収集が不要となり、これらに伴う人件費に加え、学習環境として利用していたクラウドサービスなどのハードウェア利用料を約50%に大幅削減します。
■今後の展望
本技術は、環境や条件が異なる現場ごとに分散して蓄積された知識を活用し、固有データを共有することなく安全にAIを高度化できる点を特長としています。これにより、製造業、社会システム、ヘルスケアなど、ドメインが異なりデータ統合が難しい複数の事業領域にまたがる場合でも、AIモデルという「知識」を全社横断で活用可能な技術基盤として、事業ドメインを越えたAI活用や技術連携の促進が期待されます。将来的には、SF 2nd Stageで示した注力13事業の制御機器などをはじめ、他社・他業界との共創による社会的課題の解決へと発展が期待されます。
両社は本検証の知見を活かし、追加学習に伴う負荷を抑えながら安全にAIを高度化する技術として、さらなる顧客課題の解決を目指します。これにより、オムロンのAgentic AI分野における事業競争力の強化に貢献していきます。
■アプリズム 代表取締役社長 仙敷久善 コメント
オムロン様およびオムロン サイニックエックス様の先進的な非集中学習技術「DcX」との連携により、弊社のAIプロダクト「aiba」のAIモデルは、性能・適用領域の両面で大きな進化を遂げられたことを、大変嬉しく思います。本取り組みにより、各現場で蓄積された知見を安全に活用しながら、環境差に左右されにくいロバストなAIモデルの構築が可能となりました。今後も、現場に根ざしたAI開発を通じて、より実用性と信頼性を兼ね備えた高いサービスを提供し、社会に価値をもたらすプロダクトの創出に取り組んでまいります。
■オムロン 執行役員 ストラテジックR&D本部長 兼 オムロン サイニックエックス 代表取締役社長 諏訪正樹 コメント
アプリズム様からオムロン サイニックエックスの技術「DcX」に高い関心をお寄せいただき、共創を通じて社会実装につなげられたことは、当社の技術経営においても重要な観点と捉えています。今回の実証により、現場ごとに蓄積された知見を活かしながらAIを高度化できる可能性を大いに感じました。今後も、オムロン サイニックエックスの研究成果を社会実装につなげるべく、共創を戦略的に推進し事業の成長と社会的価値の創出に貢献してまいります。
■オムロン ストラテジックR&D本部 テクノロジーコミュニケーション&コラボレーション推進部長 兼 オムロン サイニックエックス 近未来デザインディビジョン長 西岡崇 コメント
当社は、バックキャスト思考で”近未来デザイン”し先端技術の研究開発による成果を実装した”近未来”の発信・共感を通じて共創パートナーを募ることで「革新的技術の創出を続ける研究モデル」の具現化に取り組んでいます。本取り組みでは、AIの実装が進む”近未来デザイン” を通じて、アプリズム様と開発現場の課題に挑戦し、実効性の高い検証結果を得ることができました。今後も、新たな共創機会の創出に向けオープンイノベーションを推進し、社会実装に向けた展開を加速してまいります。
<株式会社アプリズムについて>
株式会社アプリズムは、AI・生成AI・エッジ/フィジカルAIを中核とした先端技術開発を強みとするテクノロジーカンパニーです。産官学連携による研究開発から、製造・点検・検査・監視分野における現場への社会実装までを一貫して支援し、人手不足や属人化といった産業課題の解決に貢献しています。現場で使われ続けるAIの実装を通じて、企業の持続的な競争力向上を目指しています。
詳細については、https://apprhythm.co.jp/ をご参照ください。
<オムロン サイニックエックス株式会社について>
オムロン サイニックエックス株式会社は、オムロンが考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点です。「AI」「ロボティクス」「IoT」「センシング」など、幅広い領域の最先端技術のトップ人財が研究員として在籍し、社会的課題を解決するために、技術革新をベースに「ビジネスモデル」「技術戦略」「知財戦略」を統合し具体的な事業アーキテクチャに落とし込んだ"近未来デザイン"を創り出します。また、大学や社外研究機関との共同研究を通じて「近未来デザイン」の創出を加速していきます。
詳細については、https://www.omron.com/sinicx/ をご参照ください。
<オムロン株式会社について>
オムロン株式会社は、独自の「センシング&コントロール+Think」技術を中核としたオートメーションのリーディングカンパニーとして、制御機器、ヘルスケア、社会システム、電子部品、そしてこれらの事業をつうじて取得した多種多様なデータを活用したデータソリューション事業を展開しています。1933年に創業したオムロンは、現在では全世界で約2.6万人の社員を擁し、130ヶ国以上で商品・サービスを提供し、よりよい社会づくりに貢献しています。
詳細については、https://www.omron.com/jp/ja/ をご参照ください。
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