中央アフリカ共和国:国際社会は民間人虐殺を抑止できていない――MSF、国連で訴え
中央アフリカ共和国(以下、中央アフリカ)における行き過ぎた暴力と社会的マイノリティに対する殺害行為は、関係諸国による民間人保護策の完全な失敗を示すものだ。国境なき医師団(MSF)は2月18日に国連で声明を発表し、国連とアフリカ諸国は暴力抑止と人道援助拡大に速やかな行動をとるべきだと訴えた。現地で医療援助にあたるMSFチームは、国際社会が同国を孤立無援の状態にしていると指摘した。
MSFは国連安全保障理事会理事国および資金援助国に、中央アフリカ国民に対する暴力の即時の抑止に努め、人びとが身の危険を感じず自由に移動できる安全性を確保し、最低限の生活ニーズを満たすための大規模支援の展開を求めた。また、地域・国レベルの指導者たちに、暴力の抑止と一般市民保護の強化に最善を尽くすことを強く求めた。
<前例を見ない人道危機>
先ごろ、同国を訪れたMSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は、「MSFの最大の懸念は民間人の保護です。極めて激しい暴力に直面し、私たちも無力感にとらわれながら、多数の負傷者の治療にあたっています。殺りくを免れるため、大勢の人が自宅からの退去を余儀なくされる様子も目にしました。国連安保理の指導者らの関心と注力の欠如には大変失望していますし、この国を分裂させている暴力への、アフリカ諸国およびアフリカ連合の取り組みはごく限られたものにとどまっています」と述べている。
中央アフリカでは、キリスト教、イスラム教いずれの信者であっても、対立する武装勢力による暴力に脅かされている。大規模な武力衝突が起きた2013年12月5日以降、MSFは首都バンギおよび国内全域で合計3600人余りの負傷者を治療。銃撃、爆弾、なた、ナイフその他の暴力による負傷者に対応してきた。
リュー医師はさらに現地で目撃した光景について話した。「ボゾウム(ウハム・ペンデ州都)では、銃撃、なた、爆弾で負傷した17人が小さな中庭に隠れているところに出会いました。彼らは再び標的となることを恐れ、病院にも行けなかったのです。ひどいけがでしたが、じっと座りこんだまま、血を流していました。医療を受けることへの人びとの不安を表す事例です。望みをすべて失い、押し黙って、その場所に座っていました」
MSFも病院の近くや敷地内における武力攻撃に何度も対処している。マンベレ・カデイ州都ベルベラティでは2月12日、なたと銃で武装した一団がMSFの活動する病院に押し入り、発砲。威嚇された患者のうち、2人が身の危険を感じ、病院を離れた。そのほかにも各地で幾度となく、地域の有力者、聖職者、そしてMSFの医療スタッフが身を呈して介入しなければならない状況が発生している。武装勢力が傷病者を含む人びとの殺害を試みたり、予告したりしたためだ。患者もさらなる暴力被害を恐れ、救急車での搬送を拒むことが多い。
<迫害を恐れて>
MSFの活動地8カ所の合計約1万5000人の民間人も武装勢力に殺害されるのではないかとおびえながら、病院、教会、モスクに身を隠している。ナナ・マンベレ州ブワルその他の町のイスラム教徒合計6000人は標的になることを恐れ、避難できずにいる。MSFはバンギをはじめ、このような孤立状態にある場所の多くに診療所を開設した。わずか数百メートル先の病院であっても、人びとは恐怖から通院を控えているためだ。
また直近の2週間にMSFが診療した、バンギ、バオロ、ベルベラティ、ボカランガ、ボサンゴア、ブーカ、ボゾウム、カルノー出身の多数のイスラム教徒は、自主的な避難や、多国籍軍に可能な唯一の手助けであるトラック輸送で周辺国へと脱出をはかる人びとだった。北西部からバンギに逃れ、孤立地区や避難キャンプで足止めに遭い、おびえて過ごしている人もいる。また、迫害への恐れから、各地で大勢の民間人がやぶに逃げ込んだが、完全に無防備で人道援助も届いてない。
<深刻な援助不足>
暴力による甚大な被害に加え、人びとの最低限のニーズを満たせるだけの人道援助拡大さえ全く十分ではない。援助はバンギ市内でも不足しているが、市外では事実上皆無だ。援助の基本である水、食糧、住居の提供にいたるまで、依然として不足状態が続く。最も顕著な例はバンギのムポコ国際空港で、国内避難民約6万人が、1人あたり1日4リットル以下の給水と劣悪な衛生設備しかない非常に過酷な環境で暮らしている。空港の滑走路もわずか数百メートル先だ。
同空港を訪れたリュー医師は、 「すさまじい現状から、援助が遅れているのは空港から避難者を追い返すための意図的な策略なのではないかと疑ってしまいます。人びとには実情に即した選択肢が与えられるべきです。バンギ市内の暴力の激しさを考慮し、帰宅か、安全な場所への避難かを選べるようでなくてはなりません。援助は、最も安全な場所で行われるべきでしょう」と語る。
MSFも日々、安全を脅かす出来事にわずらわされているが、現在、合計2240人余りの外国人・現地スタッフを広域に派遣し、緊急援助活動地8カ所を含む国内16ヵ所で活動している事実は、人道援助が実行可能だということを表している。
「各方面からの支援が急務です。それも1~6ヵ月程度で終了するものであってはなりません。これほど大規模な惨劇が国際社会の眼前で繰り広げられているのです。これに対処をしないということは、この国の人びとを意図的に見捨てる道を選択したことと同じ意味を持つのです」。リュー医師は最後に訴えた。
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旧セレカ軍による極端な暴力行為への報復として、アンチ・バラカと呼ばれる国内の自衛民兵が民間人イスラム教徒を、セレカの政治的基盤と見なし集団攻撃を開始した。その結果、直近の数週間は主にイスラム教徒を標的とした暴力と略奪が頻発。その一方で、キリスト教徒もやはり被害に遭っている。
MSFは中央アフリカで1997年から活動。現在はバタンガフォ、ボギラ、カルノー、カボ、ンデレ、パウア、ブリア、ゼミオの8ヵ所で定常の援助プログラムを、バンギ、ブワル、バンガッスー、ボゾウム、ボサンゴア、ブリア、ヤロケ、ベルベラティの8ヵ所で緊急の援助プログラムを運営している。240人以上の外国人スタッフと2000人の現地スタッフが国内で活動するほか、カメルーン、チャド、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国でも中央アフリカ人難民を援助中だ。
MSFは国連安全保障理事会理事国および資金援助国に、中央アフリカ国民に対する暴力の即時の抑止に努め、人びとが身の危険を感じず自由に移動できる安全性を確保し、最低限の生活ニーズを満たすための大規模支援の展開を求めた。また、地域・国レベルの指導者たちに、暴力の抑止と一般市民保護の強化に最善を尽くすことを強く求めた。
<前例を見ない人道危機>
先ごろ、同国を訪れたMSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は、「MSFの最大の懸念は民間人の保護です。極めて激しい暴力に直面し、私たちも無力感にとらわれながら、多数の負傷者の治療にあたっています。殺りくを免れるため、大勢の人が自宅からの退去を余儀なくされる様子も目にしました。国連安保理の指導者らの関心と注力の欠如には大変失望していますし、この国を分裂させている暴力への、アフリカ諸国およびアフリカ連合の取り組みはごく限られたものにとどまっています」と述べている。
中央アフリカでは、キリスト教、イスラム教いずれの信者であっても、対立する武装勢力による暴力に脅かされている。大規模な武力衝突が起きた2013年12月5日以降、MSFは首都バンギおよび国内全域で合計3600人余りの負傷者を治療。銃撃、爆弾、なた、ナイフその他の暴力による負傷者に対応してきた。
リュー医師はさらに現地で目撃した光景について話した。「ボゾウム(ウハム・ペンデ州都)では、銃撃、なた、爆弾で負傷した17人が小さな中庭に隠れているところに出会いました。彼らは再び標的となることを恐れ、病院にも行けなかったのです。ひどいけがでしたが、じっと座りこんだまま、血を流していました。医療を受けることへの人びとの不安を表す事例です。望みをすべて失い、押し黙って、その場所に座っていました」
MSFも病院の近くや敷地内における武力攻撃に何度も対処している。マンベレ・カデイ州都ベルベラティでは2月12日、なたと銃で武装した一団がMSFの活動する病院に押し入り、発砲。威嚇された患者のうち、2人が身の危険を感じ、病院を離れた。そのほかにも各地で幾度となく、地域の有力者、聖職者、そしてMSFの医療スタッフが身を呈して介入しなければならない状況が発生している。武装勢力が傷病者を含む人びとの殺害を試みたり、予告したりしたためだ。患者もさらなる暴力被害を恐れ、救急車での搬送を拒むことが多い。
<迫害を恐れて>
MSFの活動地8カ所の合計約1万5000人の民間人も武装勢力に殺害されるのではないかとおびえながら、病院、教会、モスクに身を隠している。ナナ・マンベレ州ブワルその他の町のイスラム教徒合計6000人は標的になることを恐れ、避難できずにいる。MSFはバンギをはじめ、このような孤立状態にある場所の多くに診療所を開設した。わずか数百メートル先の病院であっても、人びとは恐怖から通院を控えているためだ。
また直近の2週間にMSFが診療した、バンギ、バオロ、ベルベラティ、ボカランガ、ボサンゴア、ブーカ、ボゾウム、カルノー出身の多数のイスラム教徒は、自主的な避難や、多国籍軍に可能な唯一の手助けであるトラック輸送で周辺国へと脱出をはかる人びとだった。北西部からバンギに逃れ、孤立地区や避難キャンプで足止めに遭い、おびえて過ごしている人もいる。また、迫害への恐れから、各地で大勢の民間人がやぶに逃げ込んだが、完全に無防備で人道援助も届いてない。
<深刻な援助不足>
暴力による甚大な被害に加え、人びとの最低限のニーズを満たせるだけの人道援助拡大さえ全く十分ではない。援助はバンギ市内でも不足しているが、市外では事実上皆無だ。援助の基本である水、食糧、住居の提供にいたるまで、依然として不足状態が続く。最も顕著な例はバンギのムポコ国際空港で、国内避難民約6万人が、1人あたり1日4リットル以下の給水と劣悪な衛生設備しかない非常に過酷な環境で暮らしている。空港の滑走路もわずか数百メートル先だ。
同空港を訪れたリュー医師は、 「すさまじい現状から、援助が遅れているのは空港から避難者を追い返すための意図的な策略なのではないかと疑ってしまいます。人びとには実情に即した選択肢が与えられるべきです。バンギ市内の暴力の激しさを考慮し、帰宅か、安全な場所への避難かを選べるようでなくてはなりません。援助は、最も安全な場所で行われるべきでしょう」と語る。
MSFも日々、安全を脅かす出来事にわずらわされているが、現在、合計2240人余りの外国人・現地スタッフを広域に派遣し、緊急援助活動地8カ所を含む国内16ヵ所で活動している事実は、人道援助が実行可能だということを表している。
「各方面からの支援が急務です。それも1~6ヵ月程度で終了するものであってはなりません。これほど大規模な惨劇が国際社会の眼前で繰り広げられているのです。これに対処をしないということは、この国の人びとを意図的に見捨てる道を選択したことと同じ意味を持つのです」。リュー医師は最後に訴えた。
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旧セレカ軍による極端な暴力行為への報復として、アンチ・バラカと呼ばれる国内の自衛民兵が民間人イスラム教徒を、セレカの政治的基盤と見なし集団攻撃を開始した。その結果、直近の数週間は主にイスラム教徒を標的とした暴力と略奪が頻発。その一方で、キリスト教徒もやはり被害に遭っている。
MSFは中央アフリカで1997年から活動。現在はバタンガフォ、ボギラ、カルノー、カボ、ンデレ、パウア、ブリア、ゼミオの8ヵ所で定常の援助プログラムを、バンギ、ブワル、バンガッスー、ボゾウム、ボサンゴア、ブリア、ヤロケ、ベルベラティの8ヵ所で緊急の援助プログラムを運営している。240人以上の外国人スタッフと2000人の現地スタッフが国内で活動するほか、カメルーン、チャド、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国でも中央アフリカ人難民を援助中だ。
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