要介護高齢者の外出増えるも、新型コロナ感染対策の意識・行動がおろそかに~「自己負担が理由で薬を断った」15%のケアマネが回答~
―ケアマネジャーをパネルにした要介護高齢者の医薬品独自調査『CMNRメディカル』第41回―
■調査概要
調査名:CMNRメディカル(第41回)「COVID-19感染症に関するアンケート」
期間:2023年11月12日~2023年11月19日
調査パネル:「ケアマネジメント・オンライン」に登録する会員ケアマネジャー(居宅介護支援事業所または地域包括支援センターに勤務)
調査サンプル数:569名
調査方法:WEBアンケート
サマリー ◆要介護高齢者の外出が増えている一方で、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種などの予防策がおろそかになってきている ◆5類移行後にワクチン・治療薬の自己負担金が発生することで、必要な予防・治療を受けられない要介護高齢者が出てくる可能性がある |
2023年5月8日より、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置づけが5類感染症へと変更されました。それを受けて、医療提供体制の見直しが行われ、2024年4月より新たな医療体制が模索されています。これまで、検査・治療費やワクチン接種費は公費支援により無料で受けられましたが、現在では検査・治療費には自己負担金が発生しており、ワクチン接種についても原則的に費用の一部を自己負担する方向で議論されています。
このような変化を受けて、要支援/要介護高齢者(以下、利用者)やその家族の意識や行動の現状と今後について、担当するケアマネを通じて調査を行いました。
■要介護高齢者(利用者)の外出が増えている
新型コロナウイルス感染症が5類になる前は、感染を恐れて外出や受診などを控える高齢者における心身の不健康が問題となっていました。5類移行から約半年経過した段階で、それが改善したかどうかを図1に示します。
回答者(ケアマネ)の64.7%は感染リスクよりも不活発が問題であると考えており、実際に5類になる前と比較して利用者の外出や他者とのコミュニケーションが増えたとの回答が過半数(67.3%)でした。
■ワクチン接種などの予防策がおろそかになってきている
要介護高齢者(利用者)は重症化リスクが高いので、外出やコミュニケーションの際には感染予防対策が求められます。5類移行前と比較して、現在のワクチン接種の状況を聞いた結果を図2に示します。
回答者(ケアマネ)の41.8%は、ワクチン接種を受ける利用者が減ったと回答しており、担当利用者におけるワクチン接種の割合は、5類移行前を100%とすると、現在は平均で75.2%に下がっていると報告されました。また、利用者の家族の接種についても、66.6%が減ったと回答しています。
ケアマネは利用者や家族にワクチン接種を勧めることができる立場です。今回、定期的なワクチン接種の必要性を尋ねたところ、図3のような結果となりました。
利用者に対して、ワクチン接種しなくてもよいと考えるケアマネは34.4%、家族に対しては40.5%にのぼりました。
5類に移行したからといって、新型コロナウイルスが変わるわけではありません。少なくとも重症化リスクが高い利用者については、外出やコミュニケーションを促進するとともにワクチン接種を勧める必要があるのではないでしょうか。本人はもちろん、ケアマネや家族を含めた周囲の人々への啓発がこれまで以上に重要になってくると考えます。
■ワクチン・治療薬の自己負担金が発生することで、必要な予防・治療を受けられない要介護高齢者(利用者)が出てきている
定期的なワクチン接種の必要性に対する意識低下とともに、もう一つ大きなハードルは「自己負担金の発生」です。経済的に余裕のない高齢者は、自己負担金が理由でワクチン接種を控える可能性があります。
今後、新型コロナウイルスのワクチン接種に自己負担金が発生しても、利用者に対して定期的な接種を促したいと思うケアマネは21.7%しかいませんでした(図4左)。
また、平均的な利用者において、ワクチン接種の自己負担金はいくらくらいまでなら払えそうか聞いたところ、全く払えないと答えたケアマネが17.0%、1000円までと答えたケアマネは69.6%にのぼりました(図4右)。
新型コロナウイルス感染症の治療薬については、2023年10月以降に自己負担を求めるようになっています。その影響について聞いた結果を図5に示します。
自己負担してでも治療薬の処方を希望する利用者が多いと思うと答えたケアマネは半数(49.7%)であり、処方を希望しないと答えたのは7.6%、処方を希望する利用者は少ないと答えたのは27.2%でした。
実際に2023年10月以降に新型コロナウイルス感染症に感染した利用者がいるケアマネの15.3%は、自己負担が理由で処方を断った利用者がいると回答しました。
今回、5類への移行より約半年後の介護現場の状況を調査しました。要介護高齢者(利用者)の外出や他者とのコミュニケーションは増えている一方で、感染対策(ワクチン接種)がおろそかになっていることが分かりました。重症化リスクの高い利用者はもちろん、生活の場でケアをしている介護家族や介護職においても、定期的にワクチン接種を行えるような啓発や費用補助などが検討されることを望みます。
また、今回の調査では、新型コロナウイルス感染症を発症した後に「自己負担金が原因で治療薬の処方を断った利用者がいた」と報告したケアマネが15%もいました。利用者は重症化リスクが高いため、必要な治療薬を使えないと不幸な結果につながる可能性があります。この点についても何らかの補助施策が求められるでしょう。
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