Indeed Hiring Lab、「責任あるAI(レスポンシブルAI)」のグローバル求人動向を調査。欧州各国や米国を中心に「責任あるAI」に言及する求人が増加

法務・金融・研究開発職の求人での伸びが特に顕著

Indeed Japan株式会社

世界No.1求人サイト(*1)「Indeed (インディード)」の日本法人であるIndeed Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:淺野 健、https://jp.indeed.com 以下 Indeed )は、国際的なエコノミックリサーチ機関であるIndeed Hiring Labのエコノミスト 青木 雄介によるレポート「『責任ある(レスポンシブル)』AI求人の台頭」(日本時間6月26日公開)の主要ポイントについてまとめました。

生成AIの急速な発展は、その利便性の一方で、不正確性やサイバーセキュリティ上の脅威、知的財産の侵害、アルゴリズムバイアス、誤情報の拡散など、多岐にわたる課題が指摘されています(*2)。こうした状況を受けて、AIの活用において倫理性・透明性・安全性などへの配慮を重視する「責任あるAI(Responsible AI)」(以下 「レスポンシブルAI」)という概念が注目され始めており、その関心の高まりは求人情報にも反映されつつあります。

本レポート「『責任ある(レスポンシブル)』AI求人の台頭」は、主に米国に焦点を当てた分析結果を中心に、急速に進みつつある「レスポンシブルAI」の求人ニーズに関する国際的な動向を紹介しています。米国や欧州でのAIの活用や求人での言及は、日本に先行している傾向にあり、米国や欧州の状況を知ることで、今後日本でどのような動きが予測されるかの参考となると考えられます。

■ レポート主要ポイント

  • AIに関連する求人情報におけるレスポンシブルAIの言及率は、グローバル平均で2019年のほぼ0%から2025年には0.9%へ上昇しており、AIの社会実装において倫理的配慮が高まっていることを示唆している。

  • 米国における職種カテゴリ別の傾向を見ると、AI求人におけるレスポンシブルAIへの言及率が高いのは、「法務」「金融」「研究開発」などの職種。テック系の職種では、AI求人の割合は高いものの、その中でレスポンシブルAI言及率は相対的に低い。

■ Indeed Hiring Lab エコノミスト 青木 雄介のコメント

生成AIの普及に伴い、その活用が新たな社会的リスクや倫理的課題を生む場面が増え、各国で規制やガバナンスの強化が急速に進んでいます。企業は法的対応に加え、評判や信頼の観点からも「責任あるAI(レスポンシブルAI)」の実践に踏み出しており、こうした姿勢は求人内容にも表れ始めています。

求人におけるレスポンシブルAIの言及割合は、2019年のほぼ0%から2025年にはグローバル平均0.9% (本調査で分析対象とした22か国の平均)と上昇しており、現在、オランダ・スイス・ルクセンブルクなどがレスポンシブルAI言及割合の高い国となっています。一方で、日本・メキシコ・ブラジルなどはグローバル平均を下回っていました。この違いは、国毎のAIへの規制状況だけでは説明できないように見えます。日本を含むこれらの国では、レスポンシブルAIという考え方が欧州や米国と比較するとまだ浸透しておらず、関連する人材の採用においても発展途上にあるものと考えられます。

また、米国における職種別のAI関連の求人におけるレスポンシブルAI言及率をみると、「法務」「金融」「研究開発」「経営」といった人間中心の職種において高いことがわかります。倫理的な判断や専門的知見が求められ、AIを活用する上でも人間の関与が不可欠な職種において際立って高い様子が見受けられます。

今後、企業がAIとどのように向き合っていくかを考える上で、「責任あるAI」の視点に立ち、レスポンシブルAIに知見のある人材の採用・育成等を行っていくことは、世界各国でより重要になっていくと考えられます。まだレスポンシブルAIの意識が発展途上にあると思われる日本においても、今後注目していく必要がありそうです。

<Indeed Hiring Labエコノミスト 青木 雄介(あおき ゆうすけ)プロフィール>

英国UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)経済学修士。その後、外資系コンサルティングファーム等でエコノミスト・データサイエンティストとして政府・民間・司法機関に向けた経済統計分析及び報告書作成に従事。2022年8月より現職。 Indeed のデータを活用してOECD各国及び日本の労働市場を分析し、外部関係者に向けて分析結果・インサイトを発信している。

Indeed Hiring Lab エコノミスト/青木雄介

■ レポート概要

・求人内のレスポンシブルAIの言及は2024年以降に急増、企業の「AI活用における倫理・社会的責任」への意識が拡大

22か国を対象に、AI関連求人およびレスポンシブルAIに言及している求人の割合を調べました。グローバルのAI関連求人のうちレスポンシブルAIに言及している求人(*3)の割合(以降、レスポンシブルAI言及率)は、2019年にはほぼ0%でしたが、2025年3月時点でグローバル平均(調査対象とした22か国(*4)の平均)は0.9%に達していました。企業がAI活用において倫理性や社会的責任を意識し始めている兆しがうかがえます。レスポンシブルAIを明示的に言及した求人は、一般的なAI関連の求人よりも登場が遅れたものの、2024年以降に増加ペースが明確に加速しています。

22か国のうち、8か国(*5)を対象にレスポンシブルAI言及求人の動向をさらに詳しく調査すると、レスポンシブルAI言及率は、オランダ(1.7%)が最も高く、英国(1.2%)・カナダ(1.16%)・米国(1.0%)と続いており、主要国間で大きな開きは見られませんでした。注目すべきは、レスポンシブルAI言及率の上昇が国によるAI規制の厳しい欧州に限らず、AI規制が比較的緩やかな米国でも同様に見られている点です。こうした傾向は、法制度の厳しさだけでなく、企業がグローバルな事業展開や社会的信頼の維持といった観点から、自主的にレスポンシブルAIの概念を採用活動に取り入れている可能性もあると考えられます。

8つの選定された市場(オランダ・英国・カナダ・米国・オーストラリア・フランス・イタリア・ドイツ)における、AI関連求人に占めるレスポンシブルAIの言及割合の推移。データは12か月移動平均で2019年1月から2025年3月までの期間を使用。

ルクセンブルク・オランダ・スイス・ベルギーといった国では、レスポンシブルAIへの言及率が他国よりも高くなっています。これは、国際機関や規制当局が集中している点も影響しているかもしれません。一方、シンガポール・インド・スペイン・ポーランドなどはAI関連求人全体に占める割合は高いものの、レスポンシブルAIへの言及は相対的に少なくなっています。つまり、AI求人の需要が高い国でも、レスポンシブルAIへの関心の高さは必ずしも比例しておらず、国ごとのAIに対する態度や実務の成熟度にばらつきがある可能性があります。日本ではテック分野を中心にAIに関連する求人は出てきているものの、レスポンシブルAIとなるとほとんど言及されません。

2025年3月時点での全求人に占めるAI関連求人のシェア(X軸)と、AI関連求人に占めるレスポンシブルAIの言及割合(Y軸)を国別で示している。全ての値は12か月移動平均に基づく。

・米国における職種別レスポンシブルAI言及率はテック職よりむしろ人間中心的な専門職で高い傾向

レスポンシブルAIに言及する求人は、職種によってその出現傾向に差が見られます。そこで、世界の中で、AIやレスポンシブルAIに関連する求人が約半数を占める米国における、職種別の動向を調査しました。

2024年4月から2025年3月のデータを分析したところ、レスポンシブルAI言及率が特に高かったのは「法務」(3.5%)、「金融」(2.3%)、「研究開発」(2.3%)、「教育・研修」(1.7%)、「経営」(1.5%)でした。これらの職種は、人との関わりが深く、AIが一部タスクに活用される一方で、「責任をもってAIを使う」ことへの倫理的な配慮が求められる分野でもあります。例えば、AIは弁護士が長い文書を読んだり書いたりするのを助けることができますが、その倫理的な意味合いには懸念が残ります。また、金融では、AIによる不正検出や信用スコアリングが進んでおり、公平性や透明性、説明責任が不可欠です。

一方、「ソフトウェア開発」「情報システム」などのテック職種は、AI関連求人自体は多いものの、レスポンシブルAI言及率は平均的でした。AIには強く特化していても、レスポンシブルAIには相対的に特化していない傾向が見られます。

また「飲食サービス」「看護」「設備管理」などの全体における求人シェアが大きい(求人の数自体が多い)職種をみてみると、AI関連の求人もレスポンシブルAIに言及した求人も、いずれも低い割合にあることがわかります。これらの役割におけるAIの導入が全体的に限定的であり、レスポンシブルAIはどちらかというとより、小規模で専門的な分野に集中していることを反映しています。

米国において、職種カテゴリ別に、AI求人の中でレスポンシブルAIの言及割合(縦軸)と、AI求人シェア(全求人の中でAIに関連する求人の割合)(横軸)との関係をプロットしたもの。2024年4月から2025年3月までのデータを使用。各円は1つの職種カテゴリを表しており、その大きさは、米国において職種カテゴリの求人シェアに応じてスケーリングされている(すなわち、より大きな円はメジャーな職種カテゴリを意味する)。青色はテック分野に該当する職種カテゴリ、赤色はそれ以外を表す。

■ Indeed Hiring Labについて

Indeed Hiring Labは、世界No.1求人サイト(*1)「 Indeed 」の国際的なエコノミックリサーチ機関です。Indeed の保有する豊富な独自データと一般公開されている各種ソースをもとに、労働市場に関するさまざまな調査・研究を実施し、メディア、研究者、政策立案者、求職者、採用企業の皆様に向けて知見を提供。グローバル労働市場に関する革新的なデータインサイトを発信し、仕事の現状について新たな議論が交わされる土壌を作り出します。Indeed Hiring Labの日本向けウェブサイト(https://www.hiringlab.org/jp/)では、日本における労働市場の状況や、仕事探しにおける最新トピック、注視すべき求職者行動などの調査・分析結果をレポートとしてまとめ、有益な情報を発信しています。

*1:Comscore 2024年3月総訪問数

*2:出典:McKinsey & Company, “The state of AI: How organizations are rewiring to capture value

*3:レスポンシブルAIの言及の識別には、レスポンシブルAIに関連するキーワードが求人に入っているかどうかで識別している。具体的には「責任のあるAI」「AI倫理」「公平性のあるAI」「説明可能なAI」などさまざまな関連キーワードに基づく。キーワードは、各種公的な参考文献(例:UNESCO)やAI特化の職種情報に基づき、設定している。

*4:「『責任ある(レスポンシブル)』AIの台頭と求人動向」内分析のサンプルに含まれる22か国の平均(アイルランド・米国・英国・イタリア・インド・オーストラリア・オーストリア・オランダ・カナダ・シンガポール・スイス・スウェーデン・スペイン・ドイツ・日本・フランス・ブラジル・ベルギー・ポーランド・マレーシア・メキシコ・ルクセンブルク)

*5:米国・英国・イタリア・オーストラリア・オランダ・カナダ・ドイツ・フランス

Indeed(インディード)について

Indeed は、最も多くの人が仕事を見つけている世界No.1求人サイト(Comscore 2024年3月総訪問数)です。 Indeed には、5億9,500万件の求職者プロフィールがあり、28言語で60か国以上の人々が Indeed で仕事を探したり、履歴書を投稿したり、企業を調べたりしています。350万以上の雇用主が Indeed を利用して新しい従業員を見つけ、採用しています。詳細はhttps://jp.indeed.comをご覧ください。

※本プレスリリースは、以下からもご確認いただけます。

 Indeed Japan Press Room:https://jp.indeed.com/press/releases/20250630-2

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代表者名
淺野 健
上場
未上場
資本金
-
設立
2013年10月