インド初、電源用計器用変圧器(PVT)を用いたマイクロ変電所の実証運転を開始しました

配電網の未整備地域を対象に電力の安定供給を実現する技術を確立

NEDO

 NEDOの助成事業である「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の一環として、NEDOと日新電機株式会社は共同で「配電網未整備地域における環境負荷の小さい電力供給を実現するためのマイクロ変電所の実証研究(インド)」(以下、本実証研究)に取り組んでいます。

 このたび、日新電機が開発した電源用計器用変圧器(以下、PVT)を用いたマイクロ変電所を導入し、インドで実証運転を開始しました。

 本実証研究では、現地の配電会社であるTATA Power-Delhi Distribution Limited(以下、TATA Power-DDL)が保有するデリー郊外の変電所にマイクロ変電所を導入し、特別高圧送電線からの電力を直接低圧に変換し、周辺地域に供給します。これにより電力供給の信頼度や電力品質の有効性を検証するとともに、配電網の未整備地域や未電化地域に電力を安定供給する技術の確立を目指します。

 なお、これに併せて2025年6月18日に、ニューデリーにあるTATA Power-DDL のSmart Grid Labで運転開始式を開催しました。

図1 マイクロ変電所の外観

1.概要

 インドでは電力関連の主要政策として「24×7 Power for All」が掲げられ、すべての地域に対する365日24時間の電力供給を目指しています。しかし、北部や北東部などでは送電線は整備されているものの配電網が整備されていない地域が存在しています。そのような地域ではディーゼル発電機が使用されていますが、化石燃料の消費による大気汚染などが社会問題化しています。

 このような背景の下、NEDOは2024年1月、インド電力省傘下の公的金融機関Power Finance Corporation Ltd.(PFC)とマイクロ変電所による電力供給を目的とした本実証研究※1のために合意文書(Letter of Intent:LoI)を取り交わしました。また、本実証研究に取り組む助成先の日新電機はTATA Power-DDLと2024年8月に契約文書(Project Agreement:PA)を締結しました。なお、PVT※2を用いたマイクロ変電所による電力供給はインドで初めてとなります。

2.実証研究の内容

 本実証研究では日新電機が持つ変成器の技術を応用し、電力供給用に大容量化したPVTによって特別高圧送電線(66kV以上)から低圧電力(240V)を直接取得可能にするマイクロ変電所を導入します。

図2 マイクロ変電所による電力供給イメージ

 マイクロ変電所はPVTに加え、保護装置や開閉装置、避雷器、配電盤などで構成します。PVTを用いることにより、従来のような大規模の配電用変電所を設置することなく、100kVA程度(1カ所あたり50世帯~100世帯に供給可能と想定)の低圧電力を直接特別高圧送電線から取得できます。

 また静止機器※3だけで運用可能なため、構成がシンプルで信頼性が高く、従来型の変電所またはディーゼル発電機による電力供給システムに比べ以下の利点があります。

(1)低コスト:ディーゼル発電機への燃料補給や頻繁なメンテナンスが不要なため、運用コストを

 抑制可能。

(2)省スペース:従来型変電所に比べ省スペースでの設置が可能。

(3)低環境負荷:ディーゼル発電機に比べ大幅な二酸化炭素(CO2)削減(約45%)が可能。

図3 実証用に開発したPVT

 PVTを用いたマイクロ変電所を設置することにより、大規模な変電所の建設を行うことなく、配電網の未整備地域や未電化地域へ安定的に安価な電力の供給が可能です。

 本実証研究では、TATA Power-DDLが保有するデリー郊外の変電所にマイクロ変電所を導入します。特別高圧送電線からPVTで直接低圧に変換し周辺地域に供給し、電力供給の信頼度や電力品質の有効性を検証します。

 日新電機は本実証研究で取得したデータを分析・評価し、同様の課題を抱えるインドの他地域や諸外国への展開につなげていきます。

3.運転開始式

 2025年6月18日に、ニューデリーにあるTATA Power-DDLのSmart Grid Labで、日本、インドから多数の関係者が出席のもと、本実証研究の運転開始式を開催しました。

図4 運転開始式の様子

【注釈】

※1 本実証研究

事業名:脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業/配電網未整備地域における環境負荷の小さい電力供給を実現するためのマイクロ変電所の実証研究(インド)

事業期間:2020年度~2025年度

事業概要:脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業

※2 PVT

Power Voltage Transformerの略で、交流高電圧を測定するために特別高圧を低圧に変換する変成器の技術を応用し、特別高圧から直接低圧に変換して電力を供給できるよう大容量化した計器用変圧器のことです。

※3 静止機器

変圧器、変成器、開閉制御機器など、可動部を持たない電力用機器の総称です。

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会社概要

URL
https://www.nedo.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー
電話番号
044-520-5207
代表者名
斎藤 保
上場
未上場
資本金
-
設立
2003年10月