【高知県東洋町】「国語、算数、英語、サーフィン!?」地域と学校でともに作り上げた東洋町ならではの学びのかたち
住民の想いから始まり、地域・学校・サーファーが対話を重ねた「サーフィン授業」実現のプロセス

サーフィンの聖地として知られる、高知県東洋町。このまちの小中学校の時間割には、国語や算数、英語と並んで「サーフィン」があります。
2022年7月の企画発案から実に1年もの準備期間を経て、2023年7月に正式な学校カリキュラムとしてサーフィン授業を導入。導入から数年が経った現在では、東洋町が誇る美しい海でサーフィンをする子どもたちの姿が、すっかりこのまちの日常の景色として定着しています。
「生まれ育った町を、胸を張って語れる大人になってほしい」
この取り組みの起点となったのは、「地元の子どもたちにもっとサーフィンを体験してほしい」「町の魅力であるサーフィンを広く知ってもらいたい」という地元サーファーたちの熱い想いでした。
この思いに深く共感したのが、当時「地域学校協働活動推進員」として東洋町で活動していた橋本恵子さん(現・FoundingBaseスタッフ)です。自身が立ち上げた地元の活動に参加していた子どもが、就職面接で地域の魅力を胸を張って語り、無事採用された原体験と重なり、「大人になったとき、自分が生まれ育った東洋町のことを胸を張って話せるようになってほしい」と、実現に向けてともに走り出しました。
世界で活躍するサーファーを多く輩出する東洋町だからこそできる、このまちならではの体験を子どもたちに届けたい。そんな地元住民の想いから、地域を巻き込んだプロジェクトが動き出しました。
「前例がない」を乗り越えた、5つのステークホルダーとの粘り強い対話
公的な「学校教育のカリキュラム」として結実させるまでには、「前例のなさ」「カリキュラムへの組み込み」「安全面や人員の確保」といった高いハードルが存在しました。これらをクリアするため、関係者一人ひとりと丁寧な対話を重ねました。
まず、サーフィン授業の実施には地元サーファーの協力が不可欠でした。そこで、サーフィンをきっかけに移住してきたサーファーに声をかけ、想いに共感する仲間とともに実行体制を構築。
次に、学校単独の負担にするのではなく「地域全体の取り組み」として位置付けるため、地域学校運営協議会を通して提案を行い、「町として実現すべき取り組み」としての合意形成を行いました。
さらに、単発の体験会にとどめず、全児童生徒が受けられる「正規の授業」として予算化できるよう町議会や行政との協議を推進。学校現場に対しては、「安全面の担保」という懸念を丁寧に解消しながら、学校側と対話を重ねて正式なカリキュラムへの組み込みを実現させていきました。
命を守り、海と生きる力を育む「段階的なカリキュラムと安全管理体制」

子どもの命を預かる授業だからこそ、徹底した安全・運用体制の構築にも力を入れました。
指導の根底にあるのは、「危険だから近づくな」と遠ざけるのではなく、正しい知識と安全対策を学んだ上で、海と付き合う姿勢を育むこと。
そのため、いきなり海に入るのではなく、発達段階に合わせた段階的なカリキュラム設計を行いました。保育園では「リズム体操+プール実践」、小学1〜3年生では「座学+プール実践」を通じて安全指導と水への慣れを育み、小学4〜中学3年生になって初めて「座学+海での実践」へとステップアップする構造をつくりました。

座学や実践の場では、事故を防ぐ知識だけでなく、地域や自然を守るための「海のマナー」も地元サーファーからしっかりと学びます。さらに、世界や全国で活躍するプロサーファーによる講演の機会もつくりました。海外渡航や様々な挑戦を重ねてきた大人の姿や体験談に触れることで、東洋町ならではの「キャリア教育」としても子どもたちの視野や可能性を広げています。
授業当日は地元のサーファーがチームとなってサポートに入ります。現場でのスムーズな連携と安全確保のため、学校教員とサーファーによる懇親会を年2回開催し、事前にお互いの顔や名前、人柄を把握し合える関係性を構築。
加えて、特定の個人に依存してこの取り組みが途絶えることがないよう、サーファーチームに代表者を立てて組織化を実行。連絡先リストの整備を行うなど、担当者が変わっても運用が回り続ける仕組みを確立させました。
地域の声
地域と学校が一体となって創り上げたこの授業は、子どもたちだけでなく、大人たちからも温かい反響を得ています。
<子どもたちの声>
・「毎年この授業を楽しみにしています!」
・「サーフィンが好きで移住してきました。部活には入っていませんが、この授業でサーフィンを通して同級生と関わることができて嬉しかったです」
<学校・保護者の声>
・「これまでサーファーの方と接点があまりなかったのですが、この授業を通して地域のいろんな大人たちと子どもが関わることができて本当に良かった」(生徒保護者)
・「複数の学校で勤務してきましたが、地域の方と一緒にこうした活動をしている学校は初めてです」(学校教員)
地域と共に取り組む、教育の魅力化
私たちFoundingBaseは、その地域が歴史の中で育んできた文化や営みを尊重し、その魅力を活かした「その地ならではの学び」の創出や活動伴走を行っています。
現在、東洋町においては町営塾「うみいろ」を運営しており、うみいろスタッフもこのサーフィン授業に参加し、子どもたちの成長を隣で支えています。
地域と学校が手を取り合って生まれた教育環境を一過性で終わらせず、持続可能な日常として定着させること。そして、その魅力を外に向けて届けていくこと。私たちはこれからも、地域の子どもたちが誇りを持てる教育環境づくりに寄り添い、地域全体の価値を高めるパートナーとして伴走してまいります。
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