「ゴーストギア調査隊」第1回調査を西伊豆町安良里地区で実施――漁業由来の海洋プラスチックごみをダイバーが確認
■調査の結果(主な発見点)
※今回の調査は西伊豆町での初回の調査ダイビングであり、西伊豆町の海域のごく一部を調査したに過ぎず、今回の結果が西伊豆町の海底ごみの状態を代表している訳ではありません。本報告を参照する際は、その点についてご留意ください。
• 今回の調査エリアでは、主にロープ類が多く見つかった。
• ロープ類は長いものでは数m以上のものが岩に挟まりつつ伸びているものが大半だが、絡まった状態のものも発見された。
• これらのロープ類のほとんどは岩に挟まり、固定され浮遊はしているものはなかった。
• ロープ類以外で発見されたものとしては、一部原型をほとんどとどめていない漁網も数点あった。
• それらの発見物に魚類が絡まるなどのゴーストフィッシングは発生していなかった。
• 主たる発見物のロープ類の多くに海藻類が付着していた。
• 生活ごみについては、全く見つからなかった。
• 西伊豆町の主要漁業であるエビ網は見つからなかった。
• 釣り糸などの遊漁具についても見つからなかった。
※写真(上)藻類が付着したやや太めのロープ、写真(下)太さ1センチ程度のロープがソフトコーラル(軟質サンゴ)に絡まっている様子(©WWFジャパン)
■所見
• 多くの発見物は付着物がある、原型がわかりにくくなっているなど、発見場所においてある程度長い時間存在していると思われる。
• 調査地点は、沖から陸に向かって波が寄せている地点であることから、発見物はその場で岩に挟まった、沖から流されて岩に挟まったなど、いろいろな経緯で現状に至ったと考えられる。
• ロープ類が岩に挟まって固定されている状態では生物への直接的な影響は少ないのではないか。但し、波の力で岩から外れて浮遊することで藻場に影響を与える、ロープがほどけ繊維状になりマイクロプラスチック化する恐れといった懸念がある。
■プロジェクト担当者のコメント
WWFジャパン自然保護室 海洋水産グループ 浅井総一郎
ゴーストギア調査隊の初調査を、西伊豆町役場や伊豆漁業協同組合安良里支所、ダイバー、研究者などさまざまな関係者のお力添えをいただき、まずは無事に行なうことができました。第1回目の調査結果を見た限りでは、ゴーストフィッシングの発生は見られませんでしたが、サンゴへのロープの絡みつき等、生態系への影響も一部見られました。西伊豆町で残り3回の調査を通じて、さらに実態を確認しつつ、今後は発見された海底ごみの回収を行なうなどして、漁業者や自治体にとってより持続的な水産業や海業の活性化につながればと考えています。他の自治体への展開も計画しており、データを積み重ねて、これまでよくわかっていないゴーストギア問題の実態把握を目指し、さらには解決に向けた政策提言などの働きかけも視野に入れています。
■調査の概要
時間:2023年9月29日(金)午前9時~11時(潜水時間:10:58~11:42)
調査場所: 安良里、広磯ポイント
出港/入港地:安良里漁港
調査距離:約160メートル
体制:船長1名、調査ダイバー2名(黄金崎ダイブセンター)
■プロジェクトの概要
主催: 公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
アドバイザー:コーラル・ネットワーク 事務局長 宮本育昌氏、国立環境研究所 生物多様性領域/領域長 山野博哉氏
実施母体:黄金崎ダイブセンター、特非)日本安全潜水教育協会
協力: 西伊豆町役場、伊豆漁業協同組合 安良里支所
ご参考:
● 「ゴーストギア調査隊」発足――漁業由来の海洋プラスチックごみをダイバーが調査 静岡県西伊豆町を皮切りに、全国へ展開計画(2023年7月14日、WWFジャパンプレスリリース)https://www.wwf.or.jp/press/5368.html
● 海洋プラスチック問題への取り組み「ゴーストギア調査隊」活動開始(2023年7月13日、WWFウェブサイト掲載記事)
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5362.html
● 報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ』(日本語版)を発表(2021年7月、WWFウェブサイト掲載記事)https://www.wwf.or.jp/activities/lib/4680.html
● どうやって防ぐ? 海洋プラスチックごみ「ゴーストギア」 (2022年6月、WWFの寄稿記事)
https://www.asahi.com/sdgs/article/14644774
(備考)
*「プラスチックごみ」⇒「海底ごみ」に訂正(2023年10月6日)
訂正理由:ダイバーの目視レベルでは、プラスチック製と見られたことから、当初このように記載していましたが、正確には検証しないとわからないこと、混合素材の可能性等もあるため、表現を見直しました。訂正してお詫び申し上げます。
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