これからどうなる? 東京の空き家 ~23区別の空き家数・空き家率の傾向を詳細分析~

グローバル都市不動産研究所 第31弾(都市政策の第一人者 市川宏雄氏監修)

 投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。

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 このたび同研究所では、調査・研究の第31弾として、全国と東京都の空き家数と空き家率の推移に加え、23区別の空き家数・空き家率の増減実態を詳細分析した結果を紹介します。

【01】全国の空き家数と空き家率の最新動向

・2023年の全国の空き家数は900万戸超 30年間で約2倍に
・うち半数は維持管理が不全となるおそれ 総住宅数の6%弱を占める

 近年、全国の空き家の問題が社会的関心を呼んでいます。総務省「住宅・土地統計調査(確報値)」(2023年10月1日時点の最新データ)によると、全国の空き家数は約900万戸と過去最多、総住宅数に占める空き家の比率(空き家率)も13.8%と過去最高を記録したとのニュースが駆け巡りました。今回のレポートでは、全国、東京の空き家数(率)の推移とその実態について詳しくみていきます。

 はじめに全国の動向をみると、2023年の総住宅数は6504.7万戸であり、2018年と比べて264万戸増加(4.2%増)しています。その一方、空き家数は900.2万戸と、2018年と比べて51.3万戸増加(6.0%増)し、空き家率は13.8%(0.2ポイント上昇)となっています。空き家数はこれまで一貫して増加が続いており、1993年(447.6万戸)から2023年(900.2万戸)の30年間で約2倍に増え、空き家率も9.8%から13.8%へと着々と上昇しています【図表1】。

 この空き家数を種類別にみていくと【図表2】、2023年の空き家数900.2万戸のうち「賃貸用の空

き家」が443.6万戸、「売却用の空き家」が32.6万戸と、この2つで全体の52.9%を占めています。この賃貸用あるいは売却用の空き家は、いずれ人が入居する可能性があり、また老朽化等で競争力を失った時には修繕・建て替えがなされると想定されるため、比較的問題は小さいと考えられます。

 かたや、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」(本レポートでは「その他空き家」と称します)は、賃貸や売却用、別荘などを除き、長期にわたって居住者が不在の空き家であり、将来的に維持管理が不全となる可能性が高く問題が大きいとされています【図表3】。

 この「その他空き家」に注目すると、1993年(148.8万戸)から2023年(385.6万戸)の30年間で約2.6倍に増えており、総住宅数に占める「その他空き家」数の比率(その他空き家率)も、3.2%から5.9%へ上昇しています。将来的に、高齢者世帯の長期入院や介護施設入所による長期不在、相続後の放置などにより「その他空き家」が急速に増加し、ますます問題になると予測されています。


【02】東京都の空き家数と空き家率の動向

・直近15年の空き家率はほぼ横ばい 都道府県ランキングでは44位も
・新規大量供給の裏で増える空き家数は約90万戸 全国トップで総数の1割に 

 東京都における2023年の総住宅数は820.1万戸であり、2018年と比べて53.0万戸(6.9%)増加しています。空き家数は89.7万戸と、2018年と比べて8.7万戸(10.7%)増加し、空き家率は10.9%(0.3ポイント上昇)となっています。全国の空き家率が一貫して上昇しているのに対して、東京都ではほぼ横ばいとなっており、ここ15年間は全国の空き家率を下回る水準で推移しています【図表4】。

 しかし、空き家率が横ばい傾向であるといっても、東京都の場合は総住宅数が増加している(住宅の新規供給量が多い)ことが大きな要因となり、空き家数自体は着実に増加している状況にあります。空き家数全体でみると、1993年(52.7万戸)から2023年(89.7万戸)の30年間で約1.7倍に増えています。この間に大きく増えているのは「賃貸用の空き家」ではあるものの(1993年38.8万戸→2023年62.9万戸)、今後大きく問題化すると考えられる「その他空き家」も1993年(11.0万戸)から2023年(21.4万戸)の30年間で約1.9倍に増えています。

 2023年の空き家率(種類別)を都道府県ごとにみた場合に、東京都のランキングは空き家率では44位(1位の徳島県は21.3%)、「その他空き家」率では最下位(1位の鹿児島県は13.6%)に位置していますが、空き家数でみれば、東京都の空き家数は1位(全国の空き家数の10.0%)、「その他空き家」数は2位(全国のその他空き家数の5.6%)となっており、空き家の実数自体は極めて多いことが分かります【図表5】。

  また、空き家の建て方(一戸建て、長屋建、共同住宅)別の割合を全国と東京都で比較してみると、「賃貸用の空き家」については、全国、東京都とも共同住宅の割合が9割程度で圧倒的に高くなっています。その一方、「その他空き家」については、全国では一戸建が7割超を占めるのに比べて、東京都では一戸建が35%程度に過ぎず、共同住宅が6割強を占めています。「その他空き家」が一戸建の場合には単体の建物として放置され、共同住宅の場合には建物全体で放置されたり、建物内で虫食い状の放置になったりする恐れもあるため、どちらも複雑な問題になっていくことが予測されます【図表6-1、6-2】。


【03】東京23区別にみた空き家数と空き家率の動向

・直近20年間の平均空き家率はわずかに減少 千代田区・台東区では大幅減も
・維持管理が不全となるおそれの空き家数 世田谷区・江戸川区・台東区などを中心に急増

 次に、東京23区別に空き家数、空き家率の推移をみていきます【図表7】。

 空き家率(全体)でみると、特別区部平均で2003年(10.9%)から2023年(11.2%)の20年間では微減であり、各区別では千代田区、台東区が大きく数値が減少している以外はほとんど大きな変化がないようにみえます。

 ただし、空き家の種類別にみると、「その他空き家」率では、文京区、台東区、世田谷区、荒川区、江戸川区 、中央区で大きく上昇しており、また「賃貸用の空き家」率では、港区、墨田区、渋谷区、中野区、豊島区で上昇している傾向がみてとれます【図表8-1、8-2、8-3】。

 そこで、空き家増加の実態をよりみえやすくするため、X軸をその他空き家、Y軸を賃貸用の空き家の実数とする2003年・2023年のプロット図を描いて比較してみると、多くの区で「その他空き家」、「賃貸用の空き家」とも増加している状況がみてとれますが、とくに世田谷区・足立区・板橋区・大田区・練馬区では「その他空き家」「賃貸用の空き家」の両方が、江戸川区・台東区・江東区では「その他空き家」が、新宿区・豊島区・杉並区・中野区・葛飾区で は「賃貸用の空き家」の実数が、特別区部平均値を超えて増えてきていることが分かります【図表9-1、9-2】。

 ここまでみたように、都区部では空き家率が横ばい傾向で推移し、「その他空き家」率も全国で最も低いことから、それほど深刻には捉えられていない状況がありました。しかしながら、都内においては、もともと住宅ストック量(総住宅数)が膨大で、新規供給も旺盛なため、空き家の実数そのものが多く、着実に増加しています。

 さらに、都内に住む団塊の世代を含めた居住者が高齢化するに従い、空き家数は爆発的に増えることも予想されます。

 こうした空き家が無駄に眠る資源とならないように、いかに活用し、バリューアップや再開発に繋げていくかが今後ますます重要になっていくでしょう。


【04】都市政策の第一人者 市川宏雄所長による分析結果統括

・東京都の空き家率は15年横ばいだが、数は約90万戸と全国最多で1割占める
・都心回帰の人口増での住宅需要高まりや相続した家屋の放置等、要因は多様

 全国の空き家数は2023年10月に約900万戸と過去最多になり、この30年間で約2倍になっています。総住宅数に占める空き家の比率(空き家率)も13.8%と過去最高を記録しています。空き家には「賃貸用の空き家」、「売却用の空き家」、「二次的住宅の空き家」、「賃貸用・売却用及び二次的住宅を除く空き家」(本レポートでは「その他空き家」)の4種類の区分があります。最も多い「賃貸用の空き家」(49.3%)と「その他空き家」(42.8%)が大半を占め、「二次的住宅の空き家」(4.3%)、「売却用の空き家」(3.6%)がこれに続きます。なお、二次的住宅とは別荘や残業用の寝泊まり所等で、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く「その他空き家」とは、転勤・入院など長期に不在、立て替えなどの予定、さらには不在が特定ができないものを指しますが、これが4割を超しています。

 東京都の直近15年間の空き家率はほぼ横ばいで都道府県ランキングでは44位(10.9%)と低位ですが、2023年の総住宅数は820.1万戸で、新規に大量供給することもあり、空き家数は約89.7万戸となり、数字では全国トップで総数の1割にもなります。

 空き家の建て方では、東京都の「賃貸用の空き家」は97.6%が共同住宅となっており、これに対して「その他空き家」は一戸建てが34.8%、共同住宅が62.7%と比率が異なります。また全国では「その他空き家」の73.9%を一戸建てが占め、東京との違いが際立っています。

 東京23区の直近20年間の平均空き家率はわずかに減少し、千代田区・台東区では大幅減しました。しかし維持管理が不全となるおそれの「その他空き家」率をみると、文京区、台東区、世田谷区、荒川区、江戸川区、中央区では大幅増となっています。また実数をみると、「その他空き家」、「賃貸用の空き家」は区によって変化の様相が大きく異なります。世田谷区・足立区・板橋区・大田区・練馬区では「その他空き家」「賃貸用の空き家」の両方で増加、江戸川区・台東区・江東区では「その他空き家」が、新宿区・豊島区・杉並区・中野区・葛飾区では「賃貸用の空き家」が増加しました。特異なのは台東区で、「賃貸用の空き家」が約3分の1に減りましたが、「その他空き家」は6.4倍増となっています。

 都心回帰の人口増での住宅需要の高まり、相続した親の家屋の放置など、複数の絡み合った要因が各区にあることが推察されますが、空き家施策の実施は焦眉の急となっています。


【取材可能事項】

本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。

ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画部 広報担当までお問い合わせください。

・氏名  :市川 宏雄(いちかわ ひろお)

・生年月日  :1947年 東京生まれ(77歳)

・略歴  :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。

世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。

現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。

・氏名      :金 大仲(きむ てじゅん)

・役職      :株式会社グローバル・リンク・マネジメント

      代表取締役社長

・生年月日  :1974年 横浜生まれ(50歳)

・略歴  :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。


【会社概要】

会社名  :株式会社グローバル・リンク・マネジメント

会社HP  :https://www.global-link-m.com/

所在地  :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階

代表者    :代表取締役社長 金 大仲

設立年月日  :2005年3月

資本金  :5億68百万円(2023年12月末現在)

業務内容  :不動産ソリューション事業(投資用不動産の開発、販売、賃貸管理)

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会社概要

URL
https://www.global-link-m.com/
業種
不動産業
本社所在地
東京都渋谷区道玄坂1-12-1 渋谷マークシティウエスト21階
電話番号
03-6415-6525
代表者名
金 大仲
上場
東証プライム
資本金
5億6800万円
設立
2005年03月