【慶應義塾】固形がんに対し強い抗腫瘍効果をもつCAR-T細胞の作成に成功

-「疲弊」に打ち勝つ新規のCAR-T細胞療法の開発-

慶應義塾

CAR-T細胞療法は、患者の末梢血からT細胞を採取し、体外でがんを認識する遺伝子CARを導入してがん細胞を攻撃できるようにしてから患者へ再び戻す治療法です。現在B細胞性血液悪性腫瘍に対し臨床応用がなされていますが、固形がんに対するCAR-T細胞療法の有効性は限定的でした。その要因の一つにCAR-T細胞が体内でがん細胞と戦ううちに消耗し攻撃力が落ちる「疲弊」と呼ばれる現象があります。過去に東京理科大学・生命医科学研究所の吉村昭彦教授(研究当時:慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室)らの研究グループは、マウスの実験モデルにおいて、疲弊の調節因子であるNR4Aをなくすことで、CAR-T細胞が疲弊しにくく、強い抗腫瘍効果を発揮することを報告しました(Nature 2019; 567: 530-534)。しかし、これまでヒトのT細胞においてNR4Aの発現を抑えることによる影響や、疲弊化を回避する潜在的なメカニズムについては明らかにされていませんでした。

今回、本学医学部内科学教室(呼吸器)の中川原賢亮大学院生(学術振興会特別研究員)、福永興壱教授、および東京理科大学の吉村昭彦教授らの研究グループは、NR4Aの発現を全てなくしたヒト由来CAR-T細胞を作成することに成功し、その抗腫瘍効果を評価しました。NR4Aを無くしたCAR-T細胞は、がん細胞との培養下において、野生型のCAR-T細胞と比較し高い増殖能と疲弊化への抵抗性をもち、持続的に強い抗腫瘍効果を発揮することが確認されました。またNR4Aの発現を抑えたCAR-T細胞は、ミトコンドリアの恒常性が高まり、優れた代謝活性をもつことも明らかにしました。さらに人の肺がん細胞株を移植したマウスの実験モデルにおいても、NR4Aを無くしたCAR-T細胞はヒト肺がんへの治療効果が増強され、マウスの寿命を延長することができました。


この研究は、固形がんに対するCAR-T細胞療法の新規治療戦略につながり、固形がんに対する免疫療法への応用が期待されます。


本研究成果は、2024年8月16日(英国夏時間)に、米国がん免疫治療学会(Society for Immunotherapy of Cancer)の機関誌である『Journal for ImmunoTherapy of Cancer』に公開されました。


▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/8/20/240820-1.pdf

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都港区三田2-15-45
電話番号
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代表者名
伊藤 公平
上場
未上場
資本金
-
設立
1858年10月