COP28を前に、47都道府県の脱炭素化に関する実態調査結果を発表
約3割の自治体が削減目標「国未満」省エネ・再エネという削減対策も不十分
【調査結果の詳細は添付PDFをご覧ください。】
https://prtimes.jp/a/?f=d18383-211-30021dd1c2710d58e73b2f083f95e4d1.pdf
本リリースの一部に誤りがございました。以下訂正しお詫びいたします。
2023年12月20日 訂正
・P.2,6,7:中期目標(2030年目標)の評価において、国を超える目標値を持つ自治体に鳥取県を追加し7自治体(青森県、岩手県、秋田県、東京都、富山県、長野県、鳥取県の7都県)に変更。
・P.2,8:省エネの数値目標をもつ自治体20に変更。
・P.11,12:各自治体の「目標設定努力度」「省エネ努力度」「再エネ努力度」各得点と「財政力指数」との
関係数値を変更(省エネ・再エネ努力度と財政力指数の間の分析結果は変更なし)。
・P.14:「総合評価」において鳥取県と埼玉県のグループを変更。
・P.15:「目標設定努力度」最上位グループに鳥取県を追記。「省エネ努力度」最上位グループに埼玉県を追記。
・P.16:鳥取県および埼玉県の数値変更に伴い、「目標設定努力度」「省エネ努力度」数値を全般的に変更。
※訂正箇所:リリース本文中の太字下線部分
2023年11月22日 訂正
・P1,2【主な調査結果サマリー(1)中期目標】 注釈(1)下線部分加筆 ※対象ページの記載は当時のものです。
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各国の温室効果ガスの排出削減対策の強化が大きな課題となる、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を前に、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、全国47都道府県(以下、自治体)を対象として、自治体における脱炭素化の取り組みに関する実態調査を実施しました。その結果、約3割の自治体において、温室効果ガス削減目標が国の削減目標より小さい「国未満」であり、削減策の要となる省エネルギー(以下、省エネ)や再生可能エネルギー(以下、再エネ)の取り組みが必ずしも十分に進んでいない実態が明らかになりました。また、自治体が脱炭素化を推進するうえでの課題として「自治体独自の財源確保」、「人的リソースの不足」、「地元企業の理解不足」などが浮き彫りになりました。
主な調査結果サマリー
【1】中期目標(2030年目標):国の目標「2030年に温室効果ガス46%削減、50%の高みを目指す」を超える意欲的な削減目標(※1)を超える意欲的な削減目標を持つものは7自治体(青森県、岩手県、秋田県、東京都、富山県、長野県、鳥取県の7都県)でした。その他、国と同等の目標が27自治体と全体の約6割を占め、国を下回る目標を掲げているのが13自治体と全体の約3割に及びました[図3]。
長期目標(2050年目標):茨城県を除く46の自治体が「2050年までに排出量ゼロ」を掲げているものの、国が目標に掲げた「2050年」より早く温室効果ガス削減ゼロを掲げる自治体はありませんでした[図1]。
中期、長期の目標とも、国の目標が事実上の上限になっていると推察されました。
(※1) 本調査では、2030年度までに2013年度比50%を超えて温室効果ガス排出量を削減することを掲げる目標を、国の目標を超える意欲的な削減目標として評価しています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では2035年には世界全体で温室効果ガスを60%削減する必要があると示しており、先進国においてさらに高い数値設定が必要とされています。WWFジャパンでは、現状の2030年目標についても決して十分ではないと考えています。
【2】青森県を除く46の自治体で、自治体が所有する施設において再エネを導入し、普及に取り組んでいる様子が明らかになりました[図13]。一方省エネについては、具体的なエネルギー消費量の数値を目標とする自治体は、全体の4割の19自治体に留まるなど、省エネの普及の取り組みが遅れている可能性が高いことが分かりました[図12]。また17の自治体で温暖化対策を専門とする知事の諮問機関の設置がないことも分かりました[図20]。
【3】気候変動イニシアティブ(※1)など脱炭素に関する国内外の連盟やキャンペーンに、約半数(25自治体)の自治体が加入し、非国家アクター(参加企業、団体等)間で横連携を図りながら脱炭素化の取り組みを進めていることが分かりました[図18、図19]。
(※2) JCI(Japan Climate Initiative:気候変動イニシアティブ)。気候変動対策に積極的に取り組む日本の企業や自治体、団体、NGOなど、日本政府以外の多様な主体によるゆるやかなネットワーク。
【4】脱炭素を推進するうえでの課題として挙げられたものの中で最も多かったものは、「自治体独自の財源確保」でした。このほか「人的リソースが不足」や、「地元企業の理解不足」を挙げる自治体も少なからずありました [図21] 。また、再エネや省エネの取り組み姿勢と財政力の間に弱いながらも相関関係があることが分かりました[図23]。
【5】地域別の分析では以下のような点が明らかになりました[図25~図31]。
・「総合評価」の最上位グループには、東京都、神奈川県、大阪府などの大都市が入っている一方、西日本ブロックで取り組みが遅れている傾向です。
・「目標設定努力度」最上位グループは青森県、岩手県、秋田県、東京都、富山県、長野県、鳥取県の7都県です。
・「省エネ努力度」最下位グループはほぼ西日本が占め、課題が浮き彫りになりました。
・「再エネ努力度」は西日本ブロックで取り組みが遅れている傾向がありました。
WWFジャパンの考察
パリ協定の掲げる1.5度目標の達成には、現状の世界全体の温室効果ガス排出量が整合していないことが、同協定の進捗評価制度「グローバルストックテイク(GST)」における「技術的評価」の統合報告書で示されました。その上で、同報告書は世界全体で温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減するべきとし、それを実現できるように各国の「国が決定する貢献(NDC)」の強化を求めています。11月30日から開催されるCOP28では、こうしたGSTプロセスでの検討結果を基に政策の加速を促すメッセージが打ち出されることが期待されます。そして何より、それを受けて日本を含めた各国が実際に、削減目標と政策を強化することが強く求められるのです。
こうした潮流の中で、日本は、2030年削減目標の引き上げと2035年目標の新設に向けて、早急に議論を開始するべきです。その中では、削減の「現場」として重要な地方自治体が抱えるあらゆる課題や事情も、オープンな形で俎上に載せることが重要となります。今回の調査に基づき、WWFジャパンは、国および自治体がそれぞれ、次のような形で貢献すべきだと考えます。
パリ協定の掲げる1.5度目標の達成には、現状の世界全体の温室効果ガス排出量が整合していないことが、同協定の進捗評価制度「グローバルストックテイク(GST)」における「技術的評価」の統合報告書で示されました。その上で、同報告書は世界全体で温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減するべきとし、それを実現できるように各国の「国が決定する貢献(NDC)」の強化を求めています。11月30日から開催されるCOP28では、こうしたGSTプロセスでの検討結果を基に政策の加速を促すメッセージが打ち出されることが期待されます。そして何より、それを受けて日本を含めた各国が実際に、削減目標と政策を強化することが強く求められるのです。
こうした潮流の中で、日本は、2030年削減目標の引き上げと2035年目標の新設に向けて、早急に議論を開始するべきです。その中では、削減の「現場」として重要な地方自治体が抱えるあらゆる課題や事情も、オープンな形で俎上に載せることが重要となります。今回の調査に基づき、WWFジャパンは、国および自治体がそれぞれ、次のような形で貢献すべきだと考えます。
(1) 国による貢献
国は、科学的知見や国際的議論に基づき、日本全体での意欲的な排出削減の水準を導出するべきです。今回の調査では、自治体の削減目標が、長期ではほぼ全自治体(46自治体)が、中期では約6割(27自治体)が、それぞれ国と同様の値です。国の目標が事実上の上限になっていることが推察されます。
また、自治体の脱炭素化の支援案を一層、充実させるべきです。自治体は脱炭素に向けて財源や人的リソースの観点で課題を抱えていました。脱炭素投資などの資金を調達するためとして発行されるGX経済移行債を通じて、排出削減の効果が不確実な事業への投資の支援ではなく、これらの根本的な自治体の課題の解消を検討するべきです。
(2) 自治体による貢献
自治体は、国の示す排出削減の上記水準を考慮要素の一つとしつつも、可能な限り意欲的な削減目標案と、それを実現する省エネ・再エネ等に関する施策案を検討するべきです。目標が意欲的であっても、省エネ・再エネに関する取り組みは必ずしも十分とは言えない現状が今回の調査から明らかになりました。地域の制約条件に過度にこだわることなく、意欲的な目標を達成するために今、必要なことを検討する「バックキャスト」の考えに立って、削減目標と省エネ・再エネ等の施策を同時に検討することが重要です。 明らかになった制約条件を自治体のみでは克服できない場合には、その事実と必要な支援策を国および社会、投資家などに明確に発信するべきです。それによって、適切な支援のあり方を社会全体で検討することが可能になります。
一定数の自治体がJCI(Japan Climate Initiative:気候変動イニシアティブ)などの脱炭素系イニシアティブに加入し、非国家アクター間で連携を図りながら脱炭素化に取り組んでいることは歓迎できます。このような活動を通じ、他の自治体での先行事例やノウハウを共有し、省エネ対策・再エネ対策の強化が図られることを期待します。WWFジャパンもその後押しができるよう、脱炭素系イニシアティブの情報発信や自治体との議論などに引き続き努めていきます。
調査背景
WWFジャパンが47自治体を対象に脱炭素化への取り組みを聞き、その進捗と実態を明らかにしましたのは、以下のような背景からです。
地球規模の深刻な課題である気候変動問題の解決を目指し、世界は2015年にパリ協定を採択しました。その達成に向けて2020年10月、日本政府は「2050年温室効果ガス実質ゼロ」と「2030年温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みを目指す」と宣言。同様に120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、取り組みを進めています。しかし2023年9月に国連が発表したパリ協定の進捗に関する統合報告書(Synthesis report by the co-facilitators on the technical dialogue:以下、TD SYN)(※2)は、「現状の世界全体の排出量がパリ協定の目標に合致しておらず、『1.5度目標』(※3)に抑えるための機会の『窓』は急速に閉じられつつある」と指摘しています(TD SYN Key finding 4)。つまり、目標と政策の両面で、あるべき姿とのギャップが生じています。
また、今年4月に開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明では、「世界全体で2035年までに温室効果ガス排出量を2019年比60%削減」が求められ、中でも排出責任のある先進国としての日本は、それ以上の削減寄与が国際社会から求められています。世界において排出削減に関する現状の目標と取り組みが1.5度目標の実現に不十分であることが明らかとなり、COP28ではそれらの一層の強化に向けたメッセージが打ち出されることが期待されます。日本全体、そしてそれが立脚する自治体の目標と政策も例外ではありません。
(※3) パリ協定が掲げる国際目標の達成に向けた進捗状況を、世界全体で把握するための制度「グローバルストックテイク」におけるこれまでの議論をまとめた報告書
(※4) パリ協定で示された、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をするという目標
WWFジャパンの取り組み
WWFジャパンでは、自治体における脱炭素化の取り組みを後押しするため、自治体の皆様に脱炭素施策を推進するための情報をWWFジャパンのウェブサイトに公開しています。WWFジャパンでは今後も、各自治体の脱炭素の取り組みを応援すべく、情報発信を続けてまいります。
★自治体向けプラットフォーム:
https://www.wwf.or.jp/campaign/zerocarbonisland/concept.html#toLocalGovernments
自治体の皆様が脱炭素化の取り組みを推進するうえで欠かせない脱炭素系イニシアティブやゾーニング情報(自治体による再生可能エネルギーの適地選定)など、様々なプラットフォームをご紹介しています。
★自治体の脱炭素施策 事例集:
https://www.wwf.or.jp/activities/project/4957.html
日本各地の自治体が進める脱炭素施策の先進事例を取材し、「シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集」としてまとめました(2022年公開)。各事例には、実施前後の課題や工夫点、導入をおすすめする自治体、取材にご協力いただいた自治体ご担当者様からのメッセージなどが含まれています。
<調査概要>
調査期間:2023年6月9日(金)~7月14日(金)
調査手法:WEB、郵送、FAX、メール
WWFジャパン・株式会社共同通信社の共同調査
調査対象:47都道府県
※本調査では、小数第2位を四捨五入しています。そのため、数字の合計が100%とならない場合があります。
※本文では、回答した自治体数を文中で示す際、「都道府県」「都府県」「府県」などである場合も、「自治体」と表記している箇所があります。
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