脳動脈瘤のない成人に、新たな脳動脈瘤はどれくらいできる?1万人超を追跡して判明 発生率は1,000人あたり年間約1人

スマート脳ドックを繰り返し受けた人の検査データから新たな脳動脈瘤の発生頻度を調査 喫煙歴のある人ではおよそ2倍 

株式会社ユカリア

本研究成果のポイント

○脳動脈瘤がなかった1万人超を最長約7年追跡し、新しくできる頻度を調査

脳ドックで頭部MRA(磁気共鳴血管撮影)を2回以上受けた成人10,995人(年齢の中央値50歳、女性約43%)が対象です。初回検査で脳の血管にこぶ(脳動脈瘤)がないことが確認されていました。これらの人々を最長約7年追跡したところ、34人に新たな脳動脈瘤が見つかりました。発生率は、1,000人あたり年間で約1人、3年間の累積では約0.3%(およそ360人に1人)です。

◯これまで不明だった脳動脈瘤の新規発生頻度を、実際の追跡で測定

従来の調査は、すでに脳動脈瘤が見つかった人を対象にしたものが中心でした。しかし、脳動脈瘤が破裂した人は脳ドックを受ける前に調査の対象から外れてしまうため、こうした調査では、新たに発生する頻度を知ることができません。本研究は、脳動脈瘤のない人を繰り返し検査して追跡し、新規の発生を直接数えました。

◯喫煙歴のある人は約2倍、喫煙量が多いほど発生しやすい傾向

年齢・性別・高血圧・家族歴の影響をそろえて比べたところ、喫煙歴のある人は、ない人より新たな脳動脈瘤ができる頻度が約2倍でした。喫煙量(1日の箱数×年数、パックイヤー)が多いほど頻度は高く、10パックイヤー増えるごとに約1.3倍でした。

◯これまで明らかでなかった疫学的知見であり、異常なしの人のフォローを考える基礎情報に

3年間で新たな脳動脈瘤が見つかった割合は約0.3%と低く、見つかった脳動脈瘤の約7割は3mm未満でした。脳ドックで異常なしとされた人を、どのような間隔でフォローすべきかを考える際の基礎情報となります。


 京都府立医科大学大学院医学研究科 脳神経機能再生外科学 客員講師 藤原 岳(学長:夜久 均)、島根県立中央病院 医療局次長 井川房夫ら研究グループと株式会社ユカリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三沢英生、以下「ユカリア」)は、共同研究において、ユカリアが運営する健診プラットフォーム「スマートドック」の主力サービス「スマート脳ドック」(以下「脳ドック」)で脳動脈瘤がないと確認された成人10,995人を、繰り返しの検査データで追跡し、新たに脳動脈瘤ができる頻度と、関連する要因を調べました。

 脳動脈瘤は脳の血管の一部がふくらんだもので、成人の約3%にみられます。多くは無症状ですが、破裂するとくも膜下出血を起こします。くも膜下出血は、発症後1か月以内の致死率がおよそ3分の1に上る重い病気で、日本を含む東アジアでは欧米の約3倍多く発症されています。これまでの研究の多くは、すでに脳動脈瘤がある人が対象で、脳動脈瘤のない人に新たにできる頻度は、国際的にも未解明の課題とされてきました。

 本研究では、追跡期間の中央値約3年の間に34人で新たな脳動脈瘤が見つかり、1,000人を1年間追跡し、新たに脳動脈瘤が見つかる発生率は約1人、3年間の累積で約0.3%でした。喫煙歴のある人では約2倍で、喫煙量が多いほど高いことも分かりました。脳動脈瘤の新規発生頻度を実際の追跡で示したこれらの結果は、脳ドックで異常なしとされた人をどのようにフォローすべきかを考える際の基礎情報となります。本研究論文は科学誌『Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry』に2026年10月29日付で掲載されましたのでお知らせします。

【論文基礎情報】

掲載誌情報

雑誌名 Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry

発表媒体 ■ オンライン速報版 □ ペーパー発行 □ その他

雑誌の発行元国 イギリス

オンライン閲覧 可

(URL)https://jnnp.bmj.com/content/early/2026/10/28/jnnp-2026-339724.full

掲載日 2026年10月29日(日本時間)

論文情報

論文タイトル(英・日)

英語:Incidence of de novo intracranial aneurysm formation in initially aneurysm-free adults

(日本語:初回検査で脳動脈瘤のなかった成人における、新たな脳動脈瘤の形成の発生率)

代表著者

 京都府立医科大学大学院医学研究科 脳神経機能再生外科学  藤原 岳

共同著者

 島根県立中央病院 脳神経外科               井川房夫

 メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 脳神経外科 知久正明

 株式会社ユカリア                     川田隆二

 京都府立医科大学大学院医学研究科 脳神経機能再生外科学  橋本直哉

研究情報

代表研究者

 京都府立医科大学大学院医学研究科 脳神経機能再生外科学  藤原 岳

利益相反

 本研究に対する資金的関与はありません。

【論文概要】

1 研究分野の背景や問題点

脳動脈瘤は、脳の血管の一部がふくらんだもので、成人の約3%にあるとされます。多くは症状がなく、脳ドックなどで偶然見つかります。破裂するとくも膜下出血を起こし、発症から1か月以内に約3人に1人が亡くなり、助かっても後遺症が残る方が少なくありません。日本を含む東アジアでは、脳動脈瘤を持つ人の割合は欧米とあまり変わらない一方で、くも膜下出血の発症率は欧米の約3倍とされています。

これまでの研究の多くは、すでに脳動脈瘤がある人を調べたものでした。しかし、脳動脈瘤が破裂した人は検査を受ける前に調査の対象から外れてしまうため、こうした調査から、脳動脈瘤が新たにできる頻度を正しく知ることはできません。脳動脈瘤のない人を追跡して新たな発生を確かめるには、多数の人を繰り返し検査する必要があり、大規模には行われてきませんでした。近年の国際的な総説(Lancet Neurology、2025年)でも、脳動脈瘤のない人に新たにできる頻度と、再検査の間隔は、未解決の課題として挙げられています。

日本の脳ドックは、症状のない人が脳のMRI・MRAを受ける仕組みで、同じ人が繰り返し受診することもあります。本研究はこの脳ドックのデータを用いて、脳動脈瘤のない人に新たに脳動脈瘤ができる頻度と、関連する要因を調べました。

2 研究内容・成果の要点

対象は、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックの脳ドックで、2018年1月から2024年12月にMRAを受けた65,454人のうち、2回以上受診し、初回検査で脳動脈瘤がなかった10,995人です。

ステップ1:脳動脈瘤のない人を、繰り返しのMRAで追跡する

初回のMRAで脳動脈瘤やその疑いがなく、脳動脈瘤の治療歴やくも膜下出血の既往もない人を選びました。受診間隔は人により異なり、追跡期間は中央値約3年(最長約7年)です。

ステップ2:新たにできる頻度を算出する

追跡中に34人で新たな脳動脈瘤が見つかりました。発生率は、脳動脈瘤のない1,000人で1年間に約1人の割合に相当します。3年間の累積では約0.3%(およそ360人に1人)でした。見つかった脳動脈瘤の大きさは、3mm未満が約7割(23個)、3mm以上5mm未満が約2割(8個)、5mm以上が3個で、10mm以上はありませんでした。

ステップ3:どのような人に多いかを解析する

年齢、性別、喫煙歴、高血圧、家族歴(血縁者に脳動脈瘤またはくも膜下出血)の5つを同時に考慮して解析した結果、喫煙歴のある人は、ない人に比べて新たな脳動脈瘤ができる頻度が約2倍でした。喫煙量が多いほど頻度は高く、10パックイヤー(1日1箱を10年間に相当)増えるごとに約1.3倍となる関係がみられました。一方、年齢・性別・高血圧・家族歴については、今回の人数(新たな脳動脈瘤34人)では明確な差は確認されませんでした。

【用語の補足】

MRA:磁気共鳴血管撮影。

人年:追跡した人数×年数。

パックイヤー:1日の喫煙箱数(20本で1箱)×喫煙年数。

 

【統計値(専門家向け)】

発生率1.03/1,000人年(95%信頼区間0.71–1.44)、延べ追跡32,941人年、3年累積発生率0.28%(0.16–0.40%)。喫煙経験の調整後ハザード比2.10(1.03–4.28)、10パックイヤーあたり1.28(1.13–1.46)。

3 今後の展開と社会へのアピールポイント

今回の最大のポイントは、脳動脈瘤のない人に新たな脳動脈瘤がどの程度の頻度でできるのかという、これまで明らかになっていなかった重要な疫学的知見を、1万人超の実際の追跡データで示したことです。この知見は、脳ドックで異常なしとされた人をどのようにフォローすべきかを考える基礎情報となり、次のような展開が期待されます。

1.フォローの在り方を考える基礎情報に: 脳ドックで異常なしとされた人を、いつ、どの程度の間隔でフォローすべきかについては、これまで明確な根拠がありませんでした。本研究で、3年間に新たな脳動脈瘤が見つかる割合は約0.3%にとどまることが分かりました。この数値をもとに、フォローの間隔や、費用に見合う効果があるかどうかを検討していくことができます。

2.一人ひとりのリスクに合わせた検診へ: 喫煙歴があると新たな脳動脈瘤ができる頻度が約2倍で、喫煙量が多いほど高くなることは、脳動脈瘤が形成される最も早い段階から、喫煙との関連がみられることを示しています。喫煙歴や喫煙量に応じて検査頻度を変えるなど、個人のリスクに合わせた検診を考える手がかりになります。

3.日本のデータを世界へ: 脳ドックは日本で広く普及した仕組みのため、症状のない人を繰り返し検査した大規模なデータは、世界的にも限られています。本研究データは、くも膜下出血を防ぐための検診をどう設計するかという世界の議論に、具体的な数字を提供します。

今回の研究は、脳動脈瘤が見つかった人を調べるのではなく、脳動脈瘤のない人に新たに脳動脈瘤ができる様子を追跡することで、脳動脈瘤の発生そのものを大規模なデータで捉えたものです。今後は、より長期の追跡や他の地域・集団での検証を進め、くも膜下出血の予防につながる検診のあり方を明らかにしていきたいと考えています。


【参考】

■ 京都府立医科大学について

 1872年に創立され、150年以上の歴史を有する京都府立医科大学は、「世界トップレベルの医学を地域へ」の理念のもと、教育・研究・医療の三位一体のさらなる深化を図っています。医学および看護学の深奥を究めて有能な医療人を育成し、先進的な医療と研究を通じて、文化の進展や人類の福祉、地域社会の課題解決に貢献しています。

所在地:京都府京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465番地

ホームページ:https://www.kpu-m.ac.jp/

 

■ 株式会社ユカリアについて

ユカリアは、ビジョン「ヘルスケアの産業化」・ミッション「変革を通じて医療・介護のあるべき姿を実現する」のもと、医療・介護の現場の皆さまと共に、5つの変革テーマ「①医経分離 ②病院運営の最適化 ③患者起点のVBHCの追求 ④地域包括モデル ⑤現場に適したDX化」を推進するため、経営支援・運営支援、デジタルテクノロジーを中心とするソリューションの提供を行っています。

所在地:東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング 19階

事業内容:医療経営総合支援事業、シニア関連事業、高度管理医療機器事業

ホームページ:https://eucalia.jp/

 

■ 「スマート脳ドック」について

「スマートドック」は、医療機関のMRIやCTの非稼働時間を活用することで、全国の消費者がリーズナブルかつ短時間で受診可能となるシェアリングエコノミー事業です。主力サービスである「スマート脳ドック」は、脳動脈瘤や脳梗塞、脳腫瘍などの自覚症状のない脳の異常を早期に発見可能な頭部MRIおよび頭部・頸部MRAの検査です。

ウェブ上で予約と問診票の事前登録を行い、受診結果をパソコンやスマートフォンで確認できるため、医療施設の滞在時間を短縮し、受付からお帰りまで30分で完了するのが特長です。撮影された画像は、放射線科専門医と脳神経外科専門医によるダブルチェックを行っています。万が一異常が確認された場合も、結果に応じて専門の医療機関をご紹介いたします。

「スマートドック」サービスサイト:https://smartdock.jp/

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設立
2005年02月