James Dyson Award 2026、日本国内最優秀賞は法政大学卒業生が受賞
火を使わずに本物のような炎を再現。安全に供養できる、新しいデジタル仏具のアイデア

ジェームズ ダイソン財団は、国際学生デザイン・エンジニアリングアワードであるJames Dyson Award(ジェームズ ダイソン アワード、以下JDA)の2026年度日本国内最優秀賞1作品と国内準優秀賞2作品を発表しました。
【JDA2026 国内最優秀賞】
「morito -火を使わないデジタル仏具-」
開発者: 法政大学卒業生 山田 颯人氏、須田 丈晴氏、廣瀬 一紀氏、眞砂野 湧氏
発明品:火を使わずに本物のような炎を再現。安全に供養できる、新しいデジタル仏具のアイデア
【JDA2026 国内準優秀賞】
「Dust Paper」
開発者: 武蔵野美術大学 Ji Sangeun氏
発明品:埃を和紙の原理で書ける紙へと再生するサステナブル素材
「TAIKA」
開発者: 慶應義塾大学 Jacob Nygard氏、Moe Pwint Eain氏、Sai Yee Tip氏
発明品:キノコ由来成分と農業廃棄物を活用し、木造住宅の延焼リスク低減を目指す難燃コーティング
2005年の初開催以来、一貫して「問題解決のアイデア」をテーマとしてきた本アワードに、今年は世界27の国と地域から2,200件を超える応募が寄せられました。国内審査の結果、JDA2026の国内最優秀賞には、法政大学卒業生の山田 颯人氏、須田 丈晴氏、廣瀬 一紀氏、眞砂野 湧氏の4名による開発チームが選出されました。受賞アイデアは、火を使わずに本物のような炎を再現し、「光・煙・香」の情緒を受け継ぐ安全な供養品「morito -火を使わないデジタル仏具-」です。
「morito」は、火気を使わずに本物のような炎を再現する、安全な供養品です。ミストをLEDで照らすことで擬似的な炎を生み出し、従来の供養が持つ「光・煙・香」の情緒を継承しながら、火災や負傷のリスクを低減します。身体機能や認知機能の低下により、火の扱いに不安を抱える高齢者にも、視覚的な満足感と安心感のある供養体験を提供することを目指しています。
開発のきっかけは、筋力が弱くライターで火をつけられない祖母が、祖父の供養のために台所のコンロで線香に火を灯す姿を見て、危険だと感じた開発者自身の経験にあります。この経験をきっかけに、開発者たちは、伝統的な供養に込められた所作や心の充足感を大切にしながら、安全に故人を偲べる方法を形にしたいと考え、ミストによる擬似的な炎を用いた仏具という方向性にたどり着きました。
今回の受賞にあたり、「morito」開発チームは「率直にとても嬉しく、これまでの努力が報われたように感じました。受賞の知らせを受けてすぐにチームメンバーと連絡を取り、喜びを分かち合いました」とコメントしています。また、今後の展望については、「質感や耐久性などの改善を重ねながら商品化を目指し、最終的には、離れて暮らす祖父母へ贈ることができるようなプロダクトにしたいです。日本の文化である供養を若い世代にも身近なものにしていきたいと考えています」と述べています。
なお、本受賞作品には賞金5,000ポンド(約105万円*)が贈られます。
<JDA2026 国内最優秀賞:「morito -火を使わないデジタル仏具-」>
開発者: 法政大学卒業生 山田 颯人氏、須田 丈晴氏、廣瀬 一紀氏、眞砂野 湧氏
https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/2026/project/morito-fire-free-prayer-tools

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概要 |
火気を使わずに供養の所作を行える、安全な供養品です。ミストをLEDで照らすことで擬似的な炎を生み出し、従来の供養が持つ「光・煙・香」の情緒を継承します。火の扱いに不安を抱える高齢者にも、安心感と視覚的な満足感のある供養体験を提供することを目指しています。 |
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開発の背景・動機 |
開発のきっかけは、筋力が弱くライターで火をつけられない祖母が、祖父の供養のために台所のコンロで線香に火を灯していたという、開発者自身の経験にあります。伝統的な供養が持つ所作や心の充足感を大切にしながら、安全に故人を偲べる方法を形にしたいという思いから、ミストによる擬似的な炎を用いた仏具の開発が進められました。 |
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開発の課題と改善策 |
開発における主な課題は、限られたスペースの中で、ノズル、加湿器モジュール、光源、水分の詰まりを防ぐための構造を成立させながら、見た目の軽やかさも両立させることでした。特にミストを発生させるノズル部分は、機能上の厚みを確保しつつ、重く見えない形状にする必要がありました。開発チームは、祖父母へのユーザーテストや僧侶からのフィードバックを重ね、形状、煙の出力、内部構造を調整しながら、操作性とデザインの完成度を高めていきました。 |
JDA 国内審査員 緒方 壽人氏コメント
「安全性や問題解決の議論で置き去りにされがちなユーザーの気持ちに向き合っている点を評価したい。お坊さんへの聞き取りや試作改良を重ねられており、日々の供養を遠方の家族の見守りにつなげている発想もユニークである。」
<JDA2026 国内準優秀賞:「Dust Paper」>
開発者: 武蔵野美術大学 Ji Sangeun氏
https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/2026/project/dust-paper

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概要 |
再利用の道がなく捨てられてきた埃を、和紙の原理を用いて紙へと再生するサステナブルな素材です。集めた埃を煮沸し、和紙の繊維と混ぜて手漉きすることで、書くことや印刷ができる紙になります。また、同じパルプを使って破れた紙を糊なしで補修することも可能です。埃の構成は採集場所ごとに異なるため、同じ工程で作っても一枚ごとに異なるグレーの表情が生まれ、場所の記憶を保存する媒体にもなります。 |
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開発の背景・動機 |
開発のきっかけは、大学の授業で「素材から空間へ」というインスタレーション課題に取り組む中で、捨てられる素材を探したことにあります。リサイクルの仕組みがある素材ではなく、再利用の道がない「埃」に着目しました。 当初は埃を圧縮して造形化しましたが、「汚いもの」という印象を変えることは難しく、雨の日に濡れた埃が紙のパルプに似ていることに気づき、繊維素材として捉え直しました。その後、配合比や質感、採集場所を変えながら試作を重ね、煮沸とニスによる衛生処理も工程に組み込みました。今後は、記憶に残したい場所の埃を紙にすることで、場所の記憶を保存する素材として発展させることを目指しています。 |
JDA 国内審査員 武井 祥平氏コメント
「私たちは毎日さまざまな空間を経験する。家族と生活する住居、友人と過ごす教室、数多の人々が行き交う駅舎――。そしてその空間に堆積するホコリは、そこに確かに存在した人々の活動に由来する。ゴミとして見過ごされるホコリというものに「空間の記憶」を見出した洞察は目を見張るものがある。」
<JDA2026 国内準優秀賞:「TAIKA」>
開発者: 慶應義塾大学 Jacob Nygard氏、Moe Pwint Eain氏、Sai Yee Tip氏
https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/2026/project/taika

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概要 |
都市火災リスクと農業廃棄物という二つの課題を同時に解決する循環型ソリューションです。キノコ由来のキトサンと農業廃棄物から回収したシリカを原料とする、水性のハケ塗り型の難燃コーティングで、木材に塗布すると、高温下で断熱性のある炭化保護層を形成し、延焼を抑えるとともに、木材を保護し、煙の発生も低減します。地域の農業副産物から製造でき、既存住宅にも塗布できます。 |
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開発の背景・動機 |
開発のきっかけは、日本の木密地域における火災リスクへの問題意識でした。古く密集した木造住宅地は趣がある一方で、災害時には脆弱な面もあります。大地震の際には、揺れに加えて、その後に発生する火災も大きな脅威となります。道路が狭く、水道が寸断されることで、消防車が到達しにくい場合もあり、特に高齢者が多く暮らす古い木造住宅地では、被害の拡大が懸念されます。もう一つの着想は、キノコ産業における廃棄物の課題でした。大量の菌床やキノコ残渣が埋立や焼却処分されていることから、キノコ由来の素材から得られるキトサンが持つ炭化特性に着目しました。都市火災リスクと農業廃棄物という二つの課題が、一つの解決策として結びついたことが、TAIKAの開発につながっています。 |
JDA 国内審査員 川上 典李子氏コメント
「一般的に見過ごされている農業残渣の特性をとらえ、社会課題の解決をもたらす製品とするべく丁寧な検討が重ねられている。独自の切り口と社会実装に向けた現実的な計画など、まさに本賞にふさわしい提案として選出に至った。」
<今後の審査の流れ>
上記3作品を含む各国作品群は国際最終審査に進みます。世界27の国と地域より国内優秀賞受賞作品が集まり、その中からダイソンのエンジニアが国際TOP20作品を選出します。その後、ダイソン創業者 ジェームズ ダイソンが、国際最優秀賞、準優秀賞、そしてサステナビリティ賞を決定します。選考結果は、国際TOP20作品を10月14日に、国際最優秀賞の結果を11月4日に発表予定です。国際最優秀賞受賞者とサステナビリティ賞受賞者には、賞金30,000ポンド(約630万円*)が贈られます。
* 1ポンド=約212円 https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/
<JDA2026 国内審査員>

緒方 壽人氏 (デザインエンジニア / Takram ディレクター)
東大工学部からIAMAS、LEADING EDGE DESIGNを経てTakramに参加。主なプロジェクトは、「HAKUTO」月面探査ローバーの意匠コンセプト立案とスタイリング、21_21 DESIGN SIGHT「アスリート展」展覧会ディレクター、SKINCARE LOUNGE by ORBISのブランディングと体験デザイン、2025大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのち動的平衡館」展示ディレクターなど。2015年よりグッドデザイン賞審査員。近著に『コンヴィヴィアル・テクノロジー』。

川上 典李子氏 (デザインジャーナリスト)
デザイン誌「AXIS」編集部を経て1994年に独立。企業やデザイナーの取材、執筆を行うほか、2007年より21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクターとしても活動、近年では「デザインの先生」展(2025年)をディレクション。ほかにも「London Design Biennale 2016」日本公式展示キュレトリアル・アドバイザーを始め、国内外でのデザイン展の企画にも関わっている。2026年度グッドデザイン賞審査副委員長。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科客員教授。

武井 祥平氏 (エンジニア / nomena代表)
2012年に東京大学大学院情報学環・学際情報学府修士課程を修了し、同年nomenaを設立。工学的な視座から前例のない表現の可能性を追求する活動を展開。2020年東京オリンピックでの聖火台主任機構設計者をはじめ、セイコーやJAXAとの共同制作・研究など、アーティストとの共同制作やテクニカルディレクションも数多く手掛ける。主な受賞歴に、東京大学総長賞(2012)、文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞(2022)、2024年毎日デザイン賞(2025)など。
<ジェームズ ダイソン財団とジェームズ ダイソン アワードについて>
◆ジェームズ ダイソン財団 (James Dyson Foundation)
2002年に英国で設立されたジェームズ ダイソン財団は、現在では英国以外に、米国や日本、シンガポール、フィリピン、マレーシアといった世界中の国々で、デザイン、テクノロジー、エンジニアリング教育事業をサポートしています。ジェームズ ダイソンとジェームズ ダイソン財団はこれまでに慈善目的で1億5,500万ポンドを超える寄付を行ってきました。これには、インペリアル・カレッジ・ロンドンにダイソン スクール オブ デザイン エンジニアリングを設立するため行った1,200万ポンドの寄付や、ケンブリッジ大学にダイソン センター フォー エンジニアリング デザインおよびジェームズ ダイソン ビルの設立に向けた800万ポンドの寄付に加え、マームズベリー小学校のSTEAMセンター新設および校舎拡張プロジェクトを支援するための780万ポンドの寄付が含まれます。
◆ジェームズ ダイソン アワード (James Dyson Award)
ジェームズ ダイソン アワード( https://www.jamesdysonaward.org/ja-JP/ )は、エンジニアが世界の課題を解決する力を持っていることを証明するために設立されました。ジェームズ ダイソン財団によって運営され、これまでに400点以上の発明に賞金や国際的なメディア露出を提供しています。2002年に設立された同財団は、次世代のエンジニアをインスパイアすることを使命とする国際教育慈善団体です。また、医療研究にも投資しており、これまでに1億5,500万ポンド以上を慈善事業に寄付しています。
最新情報はJDAのInstagram( https://www.instagram.com/jamesdysonaward/?hl=en ※英語のみ )や、Dyson Newsroom( https://www.dyson.co.jp/discover/news )でも随時ご案内します。
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