欧州「FLAGCHIP」プロジェクトでパワー半導体モジュールの状態監視技術の開発を開始
パワー半導体モジュール内部の半導体チップの温度を推定し、劣化状況の推定に応用
三菱電機株式会社は、欧州現地法人であるMitsubishi Electric R&D Centre Europe(三菱電機欧州R&Dセンター)を通じて、EUの研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」の中で、革新的なパワー半導体モジュールおよびその状態監視技術の開発や、これらによる再生可能エネルギーを用いた発電システムのコスト効率化の検討を行うプロジェクト「FLAGCHIP(※1)」に参画し、このたび、パワー半導体モジュール内部の半導体チップの温度を推定する技術の実証に向けた試験機の製作を開始します。
カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入拡大が求められる中、電力変換を担うパワーエレクトロニクス機器の信頼性、保守性の向上が課題となっています。これに対し、パワーエレクトロニクス機器の基幹部品であるパワー半導体モジュールは、技術革新による信頼性の向上や、劣化状況の把握のための稼働状態のデータ取得・解析技術に加えて、その結果に基づく適切なタイミングでのメンテナンスによる保守性の向上が期待されています。
「FLAGCHIP」は、欧州の9カ国から企業や学術機関など11のパートナー(※2)が参画し、革新的なパワー半導体モジュールやその状態監視技術の開発、および再生可能エネルギーを用いた発電システム全体の初期投資とメンテナンスを考慮したコスト効率の計算と、コスト削減に向けた検討を行うプロジェクトです。本プロジェクトでは、ノルウェーおよびフランスのパートナー企業2社が保有する風力発電システムおよび太陽光発電システムを対象とした試験設備での実証試験を行います。
当社は、状態監視技術の実用化に向けた開発のうち、劣化状況の推定に必要な、パワー半導体モジュール内部の半導体チップ(SiC-MOSFET(※3))の温度を正確に推定する技術の実証を担当します。フランスの風力発電システム向けDC/DCコンバーター(※4)の試験設備で、当社が新たに製作した試験機を用いて2026年10月から実証試験を行う予定です。
当社は、本プロジェクトへの参画を通じて得られる成果を活用することで、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
■「FLAGCHIP」プロジェクトの概要
目的 |
・革新的なパワー半導体モジュールやその状態監視技術の開発 ・再生可能エネルギーを用いた発電システム全体の初期投資とメンテナンスを考慮したコスト効率の計算とコスト削減に向けた検討 ・上記技術の風力発電システムおよび太陽光発電システムを対象とした試験設備での実証試験 |
実施場所 |
パートナー企業2社の試験設備 ・SINTEF Energi AS(ノルウェー) ・SuperGrid Institute(フランス)※当社試験の実施場所 |
実施期間 |
・プロジェクト全体:2024年9月から2028年2月まで(予定) (※当社の実証試験:2026年10月から2028年2月まで(予定)) |
■「FLAGCHIP」プロジェクトにおける当社の役割
パワー半導体モジュール内部の半導体チップの温度を推定する技術を実証
パワー半導体モジュールは、半導体チップとボンディングワイヤー(※5)の接合部(ワイヤー接合部)に、通電時の温度変化によって機械的な疲労が蓄積することが劣化の一因となるため、ワイヤー接合部近傍の半導体チップの温度変化を把握することが劣化状況の推定に繋がります。
半導体チップの表面には電気抵抗(内蔵ゲート抵抗)が配置されており、この電気抵抗値は温度によって変化する性質をもちます。当社はこの性質を利用し、ゲート電流(※6)を印加して得られる電圧値を測定して内蔵ゲート抵抗の電気抵抗値を算出し、そこから半導体チップ(SiC-MOSFET)の温度を正確に推定する技術を保有しています。この技術はパワー半導体モジュールに温度センサーを組み込んだり複雑なシステムを構成したりする必要が無く、簡易なシステム構成で温度の推定が可能です。当社は、本技術の実証試験用に製作する試験機を用いて、本プロジェクトのパートナーである、フランスのSuperGrid Instituteが提供する風力発電システム向けDC/DCコンバーターの試験設備で実証試験を実施します。そこから得られた半導体チップの温度推定結果を、イギリスのノッティンガム大学が担当するパワー半導体モジュールの劣化推定技術へと応用することで、状態監視技術の実用化に向けた開発に貢献します。
■今後の予定・将来展望
試験機を2026年10月までに完成させた後、2028年2月まで半導体チップの温度推定技術の実証実験を実施します。温度推定結果から劣化推定への効果検証を進め、状態監視機能の早期実用化に向けて研究開発を推進していきます。
■三菱電機グループについて
私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie®」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、電力システム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、情報システム・サービス、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2023年度の連結売上高は5兆2,579億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。
※1 Flagship advanced solutions for Condition and Health monitoring In Power electronicsの略称
プロジェクトのウェブサイト:https://flagchip-project.eu/
※2 2025年1月30日時点
※3 Silicon Carbide:炭化ケイ素
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ
※4 Direct Current:直流。直流電圧を所望の直流電圧に変換する装置
※5 半導体チップと基板を接続する細い金属線
※6 パワー半導体モジュールのゲート端子への電圧印加によって流れる微小な電流
<お客様からのお問い合わせ先>
Mitsubishi Electric R&D Centre Europe
1 Allée de Beaulieu, 35700 Rennes, France
TEL +33 2 23 45 58 58
E-mail:info@fr.merce.mee.com
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