第5回 不動産投資に対する意識調査 ~価格高騰に伴い、投資対象エリアに変化の兆し~
グローバル都市不動産研究所 第34弾(都市政策の第一人者 市川宏雄氏監修)

投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。
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当研究所では、調査・研究の第34弾として、5回目となる「不動産投資に対する意識調査」を実施しました。


【01】 一般消費者の投資・不動産投資に対する興味 |
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・「投資に興味あり」44%超も 前年比では初の減少に転じる
・不動産投資に興味を持つ割合は過去5年で最少 高所得者層以外は費用が主なネック
不動産投資の意識を経年比較
グローバル都市不動産研究所(以下、「当研究所」)では、全国の20~60代約3万人を対象に、投資や不動産投資に対する興味・関心を尋ねる内容と、投資用不動産所有者400人に対して投資目的・投資意向を尋ねる調査を実施しました。
当研究所では同様の調査を2021年から実施しています。今回が5回目となり、経年比較を中心にまとめました。

①【一般】投資に対する興味
投資への興味 若年層中心に初の前年比減
投資に対する興味を尋ねたところ、前年と同じく「やや興味がある」(26.5%)が最多で、 「とても興味がある」(18.1%)が次点でした。ただし、両者を合わせた投資に「興味がある」層は44.6%と、過去5年の調査で初めて前年比減で2021年(42.4%)の次に低くなりました。
なお属性別には、性別では男性、年収ではより所得の高い方が投資に興味が強く、これらは過去の結果と同様の傾向です。
一方で年代別に前年と比べると、40代以下で「興味がある」層の減少幅と「興味がない」(「あまり興味がない」「全く興味がない」計)の増加幅が大きくなっています。これまでは若い世代ほど投資に対する興味が強い傾向にありましたが、やや関心が薄れ、年代別の差が小さくなったことがうかがえます。


②【一般】不動産投資に対する興味
不動産投資の経験・関心 過去5年で最少
不動産投資に対する行動や興味を尋ねたところ、「現在不動産投資の収入メインで生活をしている」は0.8%、「副業として不動産投資を運用している」は2.6%、「興味があり、セミナーや説明会に足を運んだことがある」は3.8%、 「興味はあるが実際に行動したことはない」は28.2%と、全体の構成比は前年とほぼ同様でした。しかし前述の層はいずれも微減したため、少なからず興味を持っている層は35.4%と、過去5年で最も少なくなりました。
属性別には、年収が高いほど、不動産投資から現在収入を得ている割合、セミナーや説明会に参加した割合の双方が高くなっています。
前年比では、年収2,000万円以上の層で、情報収集経験のある割合が増加し、「不動産投資に対して悪いイメージを持っている」割合は減少。他方、年代別には20代でその逆の傾向がみられました。セミナーや説明会への参加が、不動産投資に対してポジティブな印象を抱くひとつの機会になっているといえるかもしれません。


③【一般】不動産投資をしていない理由
不動産投資特有のネックは費用面に集中
不動産投資に対して非積極的な層に絞り、不動産投資をしていない理由(最もあてはまるものをひとつ)を尋ねました。最多は「投資する費用が高い(投資にかける預貯金がない)」(32.4%)で、上位5位の順位は前年と同様でした。ただし比率は、2位の「投資そのものに興味がない」(29.5%)が前年比+3.3㌽、3位の「不動産の知識がない、難しいと思っている」(11.3%)は
+0.6㌽と増加。反面、「資産価値や家賃が下がるリスクがある」が-1.4㌽の8.4%と過去5年で最も低くなり、他の投資手段を実施・検討中の層、利回りや災害を危惧する層も微減しています。
費用面では、為替の影響を受けやすい輸入建築資材コストや、人手不足による人件費の上昇などのため、首都圏のマンションを中心に続く物件価格の高騰が反映されたといえるでしょう。一方で比率が減少した項目をふまえると、不動産投資が持つ固有のハードル以上に、投資行動自体に対する意欲の頭打ち感が背景にあるといえるかもしれません。

属性別にみると、年代別には概ねどの世代も「投資する費用が高い」「投資そのものに興味がない」の比率が高く、全体と似た傾向でした。しかし年収別には、概ね年収が高い層ほど「投資する費用が高い」の割合が低く、かつ「資産価値や家賃が下がるリスクがある」「他の投資を実施している」の割合が高くなる傾向がみられます。高所得者層は、不動産投資の費用の高騰自体はある程度許容できる一方で、株式など他の投資を実際に行いながらそれぞれのリスクを評価・比較した結果、不動産投資に慎重になっているものと考えられるでしょう。



【02】投資用不動産所有の目的とメリット・懸念点 |
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・投資目的は資産運用目的が初の70%超え 全属性で“増やす”思考高まる
・不労所得としての安定性が主なメリット 気がかりの中心は空室リスク
④不動産投資の目的
「資産運用」が7割超 老後資金対策も根強く
投資用不動産所有者に、不動産投資を始めた目的(最もあてはまるもの)を尋ねました。その結果、これまでと同じく「資産運用」(73%)が最多で、初めて7割を超えています。他の全項目が前年比で減少する中、+5㌽と唯一増加しました。
次点も昨年と同様「老後の年金対策」(18%)ですが、前回3位の「生命保険の代用(団体信用生命保険)」(2.5%)は前年比-1.5㌽で、「所得税・住民税対策」(3.0%)と順位が入れ替わり4位となっています。
属性別にみても、概ねすべての性別・年代・所得層で「資産運用」が6割以上を占め、最多となりました。同じく全属性で「資産運用」がトップの昨年は5割以上だった点をふまえると、不動産投資は“損をしない”から“増やす”目的で行うという傾向が総体的に増したといえそうです。
なお前年比では、女性が+12㌽で顕著な伸びをみせました。
また世代別には、50代以上で「老後の年金対策」が約3割を占め、他の年代より高くなっています。ただし、年収別には特定の傾向はみられませんでした。
投資用不動産の所有者には、基本的には資産を増やすというアクティブな思考、いわば“攻め”の姿勢がうかがえます。しかし、老後資金については年収を問わず、万が一に備える思考、一定の“守り”の姿勢も読み取れるでしょう。確かに、全企業における65歳以上の雇用確保義務化、在職老齢年金の見直し検討など、高齢者が長く働き続けられる社会的な後押しは進みつつあります。しかし、長引く円安ドル高や政情不安などにより続く物価高、2025年初に再任したトランプ米大統領の過激な関税政策による世界経済の不透明感を背景に、今後は守りの姿勢から不動産投資を行う人が再び増える可能性もありそうです。


⑤不動産投資のメリット
「安定的な不労所得」約6割 他を引き離す
投資用不動産所有者に、不動産投資のメリットを尋ねた結果、「安定的な不労所得を得られる」(58.5%)が他に大差をつけトップとなりました。不労所得の手段として一般的な株式やFXといった他の投資商品と比べ、不動産の資産としての安定性に対する評価、また引き続くマンション価格高騰などを背景とした資産価値向上への期待感の表れといえるでしょう。
さらに「老後の備えになる(居住もできる)」「節税になる」が3割前後で次ぎ、老後の備えと税金対策としての有用性に対する評価は「投資目的」の調査結果を反映するものといえそうです。

⑥不動産投資の懸念点
空室を強く不安視 長期的には資産価値低下も
投資用不動産所有者に、不動産投資で懸念していることについて短期(3~5年程度)と長期(10年以上)に分けて尋ねました。短期では、「空室になること」(54.8%)が半数超で他を引き離し、「資産価値が下がること」が33.5%、「家賃が下
がること」が22.5%で次いでいます。
一方長期では、資産価値の低下が44.3%でトップ、空室リスク(41.5%)が僅差で次ぎ、家賃低下(28.8%)が3位となりました。また「経年等による管理費用・維持費用増」(23.8%)が、短期の割合と比較し+8.8㌽で4位となっています。
空室が長引くと広告宣伝費や共用部の維持費など経費の負担感が増すことから、入居者確保のため家賃を下げざるをえなくなり、さらにその結果、収益物件としての資産価値が下落し借入金の返済や売却に影響しかねません。直近の家賃収入有無だけでなく、他のリスクの呼び水としても空室リスクが懸念されたとみられます。また、長期の空室を避けるには築年数に見合った管理・修繕が重要になるため、人件費や資材の値上がりもふまえ、将来的にはそれらの費用がかさむことが懸念されているといえそうです。



【03】不動産投資家の注目エリア・物件 |
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・所有物件トップはワンルーム区分も前年比減 実績・興味ともに“一棟モノ”が目立つ
・注目エリアは都心5区と23区で3割弱も 東京都市部や近隣県の人気に伸び
⑦所有している物件 区分マンションが初の減少
投資用不動産所有者に所有している物件の種別を尋ねました。「ワンルーム区分マンション」(39%)が5年連続でトップとなるも、比率は
前年比-3.3㌽で初めて減少し次点の「戸建て」(31%)との差が一桁に縮まっています。上位6位は順位こそ前年同様ながら、比率では3位の「ファミリー向け区分マンション」(20.3%)が前年より微減、続く「一棟アパート」(15.8%)と「一棟マンション」(13.5%)が微増となりました。なお、前年比で伸びが大きいのは「海外不動産」(+3.7㌽で6%)と「商業施設」(+2.5㌽で5.3%)でともに順位を上げました。
一棟アパートや一棟マンションといったそもそもが高額な物件を許容できる層を除くと、都心を主とするマンション価格高騰が個人投資家の選択に影響している可能性がありそうです。

⑧所有していないが興味のある投資用物件
多様な物件への注目 “一棟モノ”が牽引
投資用不動産所有者に、現在は所有していないが興味を持っている投資用物件の種別を尋ねたところ、「一棟マンション」(16.5%)が前年に続きトップでした。また、前回4位だった「一棟アパート」(13.8%)が前年比+1.5㌽で前年2位の「ファミリー向け区分マンション」(13.5%)を僅かながら上回り、順位を上げています。
一方、『所有している物件』で最多の「ワンルーム区分マンション」は9位、同じく所有物件で2位の「戸建て」は12位となり、いずれも順位・比率を落としました。前年同様、これら比較的小規模・低価格帯な物件に興味を持つ投資家は、すでに所有している可能性が高いでしょう。
なお一棟アパート以外にも、前年比での伸び幅は「賃貸併用住宅」「シェアハウス」「事務所・店舗」「商業施設」「データセンター」の順に大きく、1㌽以上の増加となりました。区分マンションの“手頃感”が弱まるなか、不動産投資家にとって魅力的な物件の種別が多様化しつつあるといえそうです。

⑨購入を検討したいエリア
東京都心5区・23区が核も 周縁の人気高まる
投資用不動産所有者に、購入を検討したい投資用物件のエリアを尋ねた結果、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)」(28.3%)が3年連続でトップでした。ただし比率は前年比-4.2㌽で初の減少となり、同じく前年比減の「東京その他23区」(27.5%)との差は1㌽を切っています。
3位は「横浜・川崎エリア」と「大阪府」が15.8%で並び、いずれも過去4年の調査の中で最も比率が高くなりました。なお、「神奈川その他」も9.8%で過去最高となっています。また、今回より「その他関東」から切り分けて調査対象とした「千葉県エリア」と「埼玉県エリア」は、いずれも約7%を占めました。
さらに前年からの伸び幅では「その他関西」(8.0%)と「東京都市部」(13.5%)が+2㌽
以上と大きくなっています。全体として、関西圏の人気が総じて上がり、また東京都市部や神奈川県を中心に23区周縁への注目が高まったといえそうです。後者の要因のひとつには、物件種別の結果同様、都心部の区分マンションの“値頃感”が弱まっていることがあるかもしれません。


【04】都市政策の第一人者 市川宏雄所長による分析結果統括 |
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・コロナ禍でも維持された不動産価格 終息後も高騰で投資のハードルに
・投資家の関心はより手頃な価格のエリアへ移るも、富裕層の意欲は旺盛
不動産投資に対する意識調査は2021年以来今回で5回目ですが、過去3年以上に渡るコロナパンデミックの騒乱が落ち着いた中での人々の意識調査となります。
投資に興味ありとの返答は44%を超えていますが、それまで増加していた流れとは変わり、対前年比では初の減少に転じました。これを、不動産への投資に興味を持つ人の割合でみても、少なからず興味を持っている層は35.4%と、過去5年で最小となりました。高所得者層以外では不動産価格高騰がネックとなっています。一方、年収2,000万円以上の層では、情報収集経験のある割合は増加し、さらに不動産投資に対して悪いイメージを持っている割合が減少しています。
また、不動産投資の目的は資産運用が初めて70%を超えました。概ねすべての性別・年代・所得層で資産運用目的が6割以上を占め、増やす思考が確実に高まっています。特に、株式やFXといった他投資商品と比べ、不動産の資産としての安定性や資産価値向上への期待感の表れがあります。しかしながら、気がかりは空室リスクや資産価値の低下という不動産の宿命にあります。
不動産投資家の所有物件トップはワンルーム区分マンション(39%)ですが対前年比で3㌽以上減少し、 戸建て(31%)との差が一桁に縮まっています。実際、「興味を持っている投資用物件」の上位は“一棟モノ”のマンションやアパートです。
注目するエリアは都心5区と23区で、ともに3割弱ですが、都心5区では対前年で4㌽以上も下がっています。一方、東京都市部や近隣県、さらには大阪府での人気が上がっています。
今回の結果の背景には、コロナ禍でも不動産価格はあまり下がらず、アフターコロナになって再び高騰の兆しとなったことがあります。その結果、不動産購入がしやすいエリアへのシフトと、それでも富裕層の投資意欲は根強いことが分かります。

取材可能事項 |
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本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。
ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画室 広報担当までお問い合わせください。

・氏名 :市川 宏雄(いちかわ ひろお)
・生年月日 :1947年 東京生まれ(77歳)
・略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。
世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。
現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。

・氏名 :金 大仲(きむ てじゅん)
・役職 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長
・生年月日 :1974年 横浜生まれ(51歳)
・略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。

会社概要 |
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会社名 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント
会社HP :https://www.global-link-m.com/
所在地 :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階
代表者 :代表取締役社長 金 大仲
設立年月日 :2005年3月
資本金 :5億82百万円(2024年12月末現在)
業務内容 :不動産ソリューション事業(投資用不動産の開発、販売、賃貸管理)
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