低所得国のB型肝炎母子感染予防に新たな一手:簡便で高精度な迅速診断テストの有効性を検証
【ポイント】
・B型肝炎の世界的排除(エリミネーション)には、母子感染の予防が不可欠であり、高リスク妊婦の特定と抗ウイルス予防療法の投与が重要です。
・しかし、高リスク妊婦を特定するために必要な従来の診断法(PCR検査)は、医療資源の限られた低所得国では利用が難しく、普及が進んでいませんでした。
・パスツール研究所と熊本大学を中心とする国際チームは、カンボジア、カメルーン、ブルキナファソで、新たに開発されたB型肝炎コア関連抗原迅速診断テスト(HBcrAg-RDT)※1・※2の診断性能を評価しました。その結果、本検査は抗ウイルス療法が必要な女性の93%、不要な女性の94%を正しく判別できることが確認されました。本検査は、妊婦健診の現場で即時に使用できるため、B型肝炎母子感染予防の新たなアプローチとして、医療資源の限られた地域における対策強化に貢献することが期待されます。
【概要説明】
フランス・パスツール研究所の島川祐輔グループ・リーダーと、熊本大学大学院生命科学研究部の田中靖人教授を中心とする国際チームが、新たに開発されたB型肝炎コア関連抗原迅速診断テスト(HBcrAg-RDT)の診断性能を、カンボジア、カメルーン、ブルキナファソの3か国で評価しました。その結果、本検査は高ウイルス血症を持つB型肝炎ウイルス(HBV)陽性妊婦を高精度で特定できることが確認されました。これにより、低所得国においても、抗ウイルス予防療法が必要なハイリスク妊婦を迅速に特定でき、HBV母子感染の予防が強化されると期待されます。さらに、本検査の実用化は、B型肝炎の世界的な排除(エリミネーション)にも寄与する可能性があります。
本研究成果は、「Lancet Gastroenterology & Hepatology」に2025年3月13日(日本時間:3月14日)に掲載されました。
【展開】
本検査は、妊婦健診の現場で即時に使用できるため、B型肝炎母子感染予防の新たなアプローチとして、医療資源の限られた地域における対策強化に貢献することが期待されます。
【用語解説】
※1HBcrAg(B型肝炎コア関連抗原)
B型肝炎ウイルスの複製活性を反映するマーカーで、高ウイルス血症を持つ患者の識別に有効。
※2HBcrAg-RDT(B型肝炎コア関連抗原迅速診断テスト)
指先採血による簡便な検査で、HBV DNA 20万 IU/mL以上の高ウイルス血症を持つ妊婦を即時に特定可能。
【論文情報】
論文名:Hepatitis B core-related antigen rapid diagnostic test for point-of-care identification of women at high risk of hepatitis B vertical transmission: a multicountry diagnostic accuracy study.
著者:Vincent JP, S$00E9g$00E9ral O, Kania D, Borand L, Adoukara JP, Pivert A, Kon$00E9 A, Tiendrebeogo ASE, Tall H, Schaeffer L, Vray M, Sanou AM, Njouom R, Cloherty G, Hashimoto N, Miura T, Sugiura W, Sovann S, Yang JS, Delvallez G, Lunel-Fabiani F, Tanaka Y, Shimakawa Y.
掲載誌:Lancet Gastroenterology & Hepatology
doi:https://doi.org/10.1016/S2468-1253(25)00015-9
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2468125325000159?via%3Dihub

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