転職サービス「doda」、コロナ前後での「決定年収上昇率ランキング(業種版)」を発表 1位の総合商社は、コロナ前から決定年収が約10%上昇
~DX人材や企画管理の経験者の採用が決定年収アップに大きく影響~
※決定年収とは、転職を受入れる企業が採用決定時に個人に提示する年収のことを示します。
【調査サマリー】 ◆【業種大分類別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)(p1.2.3) ・多くの業種大分類でコロナ前と比較し決定年収がアップ。全体平均では約3%の上昇。 コロナ禍で売上に影響した業種大分類でも、事業フェーズや採用ポジションの変化により 決定年収が増加。 ・上昇率1位は「総合商社」で約10%上昇。歴史的な物価上昇による業績好調とDX人材の獲得が 背景に。 ・2位「インターネット/広告/メディア」と、3位「IT/通信」は、求人ニーズの高まりに加え、 マネジメントや進行・管理など+αのスキルを持つ人材を求める企業が増え、決定年収は5%以上の 上昇。 ◆【業種別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)(p4.5.6) ・対象全83業種のうち約6割で決定年収が上昇。そのうち10%以上の上昇がみられたのは10業種。 ・上昇率1位の「医療コンサルティング」は、医療機関からの経営コンサル需要の増加により、25% 以上アップ。 ・2位「損害保険」では、アナログな仕組みを改革するためDX化の推進や新規事業拡大ができる人材の 採用に注力する企業が増えたため、決定年収が上昇。 |
◆【業種大分類別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)
【表1】 業種大分類別 決定年収の上昇率ランキングTOP5 ※2019年を100とした場合の推移
【表2】 業種大分類別 決定年収の上昇率ランキングTOP6~10 ※2019年を100とした場合の推移
ほとんどの業種大分類でコロナ前の水準の金額に回復。全体平均では約3%決定年収がアップ。
業種大分類は業種を大きな分類で括ったカテゴリを指します。2021年の決定年収上昇率をみると、10のうち9つの業種大分類で、コロナ前の2019年の決定年収を上回りました。(【表1】【表2】)多くがコロナ前後で決定年収が上昇した背景には、下記の4つの要因が考えられます。
コロナ前後で決定年収が上昇した4つの要因 ① 事業運営上の体制立て直しのため、高い専門性を持った人材の採用を強化したため ② 業績好調で成長が見込める企業では、人員確保が急務となり提示金額を引き上げて採用したため ③ 企業が求めるポジションが、業務を遂行する「現場」から、「教育・管理」する側に変化したため ④ 求人ポジションの変化に伴い、転職決定者の平均年齢において30代や40代の比率が上がったため |
上昇率ランキング1位は「総合商社」で、約10%決定年収が上昇。
まず、業種大分類で決定年収の変化を見たところ、1位は「総合商社」で、決定年収が約10%上昇していることが分かりました。
求人ニーズの高まりで、2位「インターネット/広告/メディア」は約7%、3位「IT/通信」は約5%の上昇。
次いで上昇率が高かったのは、コロナ禍で業績好調なWebサービス・Webマーケティング企業が含まれる2位「インターネット/広告/メディア」で約7%上昇しています。3位の「IT/通信」は、オンライン化・DX化でニーズの高まりを受け、約5%アップしました。
■解説
業績好調の「総合商社」や採用急増の「インターネット系・IT通信」業界では+αのスキルが決定年収を上げる要因に |
上昇率1位の「総合商社」は、大幅な物価上昇により2021年は大きく利益を押し上げた年だったため、優秀な人材を確保する動きが見られました。そのため求人数は、2019年と比較して大幅に増加しています。(【表3】) 特に、経営企画や新規事業開発など、事業体制の強化や拡大を目的にしたポジションでの採用が増えたことが、決定年収を大きく引き上げた要因の一つと考えられます。また、業務改革のため決定年収水準が高いDX人材の採用を強化したことで、若手層でも高いスキルを持つ人材の中には、大幅な決定年収アップを叶えた人も少なくありません。今後も、経営体制や事業変革に対応できる人材は決定年収が上がる可能性がありそうです。
また、決定年収の上昇には、求人数の伸びも関係しています。2019年から2021年にかけて「IT/通信」と「インターネット/広告/メディア」の求人数は150%以上に伸びており、採用ニーズが高いことが分かります。(【表3】)サービスのオンライン化やDX化が進むに連れ、エンジニアやデジタルスキルを持つ人材のニーズが高まったこと、プロジェクト数自体も増加したことで、それぞれの業種で求められるベーススキルに加えて、マネジメント力や進行・管理力を持つ人材が決定年収を引き上げています。こうした人材は、今後も高い水準の決定年収になることが予想されます。
【表3】求人掲載数の変化(2019-2021)※2019年を100とした場合
◆【業種別】コロナ前後での決定年収上昇率ランキング(2019年と2021年比較)
続いて、業種大分類のなかでも細かな業種に分けた、業種別上昇率ランキングをみてみると、分類別では上昇率が目立たなかった「メディカル」や「金融」に分類される業種で上昇率が高くなっています。(【表4】)
【表4】業種別 決定年収の上昇率ランキングTOP20 ※2019年を100とした場合の推移
対象全83業種のうち約6割で決定年収が上昇。そのうち10%以上の上昇がみられたのは10業種。
対象の全83業種のうち、決定年収が上昇したのは53業種、減少したのは30業種と、約6割の業種で決定年収が増加しました。決定年収の金額が10%以上アップしたのは83業種中10業種でした。
上昇率1位の「医療コンサルティング」は、医療機関からの経営コンサル需要が増え25%以上アップ。
業種別で決定年収の上昇率が一番高かったのは、病院や製薬会社をはじめとする医療関連企業の経営計画やマーケティング、人材、会計などのコンサルティングを担う「医療コンサルティング」でした。
2位と3位には、DX化や新規事業拡大のための人員確保を強化した業種がランクイン。
2位はDX化の推進と新規事業拡大を図る「損害保険」で、約23%の上昇でした。3位の「日用品/文具/家具メーカー」では、約19%上昇しています。
■解説
「メディカル」業界のうち3つの業種で決定年収が10%以上アップした背景に、ミドル層の転職成功者の増加も。 |
病院をはじめとする医療機関はコロナの影響を受け、大きな変革期を迎えました。
1位の「医療コンサルティング」では、顧客である医療機関の課題が多岐に渡ったため、コンサルが必要とされる場面が増えたことから、ニーズが高まりました。特に、経営戦略やリスクマネジメント、病床の分配計画や人的資本の管理などのコンサルができる人材の採用強化につながっています。これまでは、若手の事務アシスタントポジションが採用の中心でしたが、2021年にかけてはミドル層の経験者ポジションの転職成功者が増加。決定年収の上昇に影響していると考えられます。
4位の「福祉/介護関連」に関しては、シニア市場をビジネスチャンスと捉える企業の参入で、株式会社の新設や市場拡大が進んでいます。介護施設の数も右肩上がりで増加。それに伴い、「経営企画」「人事」「経理」といったポジションで知識・経験ともに豊富な人材の採用を強化しています。転職成功者において、年収水準が比較的高い40代以上のミドル層の割合が増加していることも、決定年収を引き上げた要因の1つに挙げられそうです。
6位の「バイオ関連」は、薬の開発・研究などを行うバイオベンチャー企業を指します。これまでの日本の製薬メーカーのビジネスは、薬の開発から製造までのすべてを行う「一気通貫型」でした。ところが今は、バイオベンチャーと連携して開発の一部だけを担う「分散型」への転換が図られています。その流れからバイオベンチャーは今、成長段階にあるのです。そのため人材確保が急務となり獲得競争が激化。決定年収の相場が上がっていると考えられます。
アナログな仕組みが残る「損害保険」では、DXの推進と新規事業拡大に注目。 |
2位の「損害保険」では、事故連絡や請求手続きをスマートフォンで完結させる仕組みづくりやペーパーレス化などDXの推進が積極的に行われています。これにより、ITインフラを整えるエンジニアのプロジェクトマネジメントポジションやWebアプリのシステム開発、デザインもできるクリエイティブ人材のニーズが高まったことが、決定年収を引き上げたと考えられます。
また生活様式の変化によって、必要とされる保険も変化。新たな価値を提供できる企画職でのポジションでは、今後、決定年収が上がる可能性があります。
在宅勤務の浸透で、明暗が分かれたメーカーは業績が2極化。いずれも即戦力採用が加速。 |
3位の「日用品/文具/オフィス用品メーカー」は、在宅勤務の広がりを受け、企業の対応は大きく2つに分かれました。「日用品メーカー」は、家庭での日用品消費スピードが加速したことで、商品開発や品質管理などのモノづくり系ポジションで経験豊富な即戦力採用が強化されました。一方で、「オフィス用品メーカー」は、出社機会が減少したことから、多くの企業で抜本的な事業方針の転換が急務となりました。それによる新規事業開発や営業企画など組織体制の強化のため、即戦力となる企画管理職の採用が増えたことが、決定年収が約19%上昇した要因の一つといえそうです。
また店舗販売からEC化へ移行し、アプリ開発やWebマーケティングといった職種で一定のスキルや知識を持った人材の採用を強化する動きが強まったことも、結果として年収を押し上げたと考えられます。
「サービス」では対面接客の機会が減少し、採用ポジションは「接客業」から「管理部門」へ変化。 |
「サービス」の中で上位にランクインしたのは、5位の「理容/美容/エステ」(+約17%)と、7位の「冠婚葬祭」(+約15%)でした。
これら業種は、2019年時点では顧客と直接的に関わるポジションの募集が目立っていました。ところが、コロナにより打撃を受けたことから、リスク分散のために事業の新たな柱を作る動きが出ています。そこで求められたのが事業戦略を立てる経営企画などのポジションです。経験スキルが必要な職種のため、決定年収の上昇につながったと考えられます。
「冠婚葬祭」では、コロナの影響を受け、結婚式の実施頻度の減少、葬儀の実施規模(参列人数)の縮小などにより、大きな打撃を受けました。そのため、2021年は経営の立て直しに重要な管理部門の採用に限定され、決定年収を押し上げました。
上記を受け、転職成功者のボリュームゾーンが20代だったところから、30代の割合が高まってきたことも、決定年収の平均値を引き上げる要因になったと考えられます。
■調査概要
前職の業種大分類・業種を問わず、転職先の業種大分類・業種で提示された決定年収を指数化し、ランキング化。
【対象者】2019年1月~12月末、2021年1月~12月末までの間に
転職サービス「doda」経由で転職に成功した20~65歳の男女
【雇用形態】正社員
■解説者プロフィール doda編集長 喜多 恭子(きだ きょうこ)
派遣・アウトソーシング事業で法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、人材紹介事業へ。法人営業・キャリアアドバイザーのマネジャーとして組織を牽引。その後、派遣事業の事業部長として、機械電子系の派遣サービス立ち上げやフリーランス雇用のマッチング事業立ち上げなどを行う。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、アルバイト求人情報サービス「an」の事業部長を経て、2019年10月、執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。2020年6月、doda編集長就任。
■「doda」について< https://doda.jp >
「doda」は、「はたらく今日が、いい日に。」をスローガンに、転職サイトや転職エージェント、日本最大級のdoda転職フェアなど、各種コンテンツで転職希望者と求人企業の最適なマッチングを提供しています。
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