【福井県坂井市】三国町安島では「じぇじぇ」ではなく…「めっ」「めめめっ!」 龍翔博物館がユニークな安島区を深掘り
スペシャル歴史教室シリーズ「安島王国」(1) 安島言葉の世界

安島では「く」が「ff(ふ)」に。「あつくるしい」→「あつっふぁしー」
福井県坂井市の名勝地・東尋坊に近く、神の島「雄島」を眼前に見る集落・三国町安島(あんとう)区の民俗や芸能、自然などのユニークさに焦点を当てたスペシャル歴史教室「安島王国」が6月14日、同市の龍翔博物館で開かれた。教室はシリーズとして年度内に4回開催の予定。初回のこの日は「安島の方言」がテーマで、子音が重なる発音の仕方が、沖縄(琉球)の発音と共通点があり、研究者によると「子音を重ねる発音の仕方は、日本本土でここだけ」と言う。独特の言葉の背景には、近世に栄えた海運業や漁業の影響もあるともされる。教室には関心のある約80人の聴講者を前に、地元女性ら2人による、普段使いの生活場面の対話の実演も行われ、そのユニークさから会場は笑いに包まれていた。また、笠松雅弘館長からは「安島弁は十分に文化財。安島弁保存会をつくって、後世につたえてほしい」と保存活動の重要性を訴える提案もなされていた。
笠松館長「安島弁は十分に文化財、ぜひ地元で保存活動を」
「安島王国」は同博物館が、地域に残るユニークな文化、民俗を地域住民とともに深掘りするシリーズの企画で、1回目のこの日は「安島言葉の世界」がテーマ。安島在住の区民ら10人余りで実行委員会をつくり準備してきた。
はじめに笠松雅弘館長が、北陸の方言に詳しい言語学者の論文の例文などを引用しながら、安島弁のユニークさを解説。「安島弁の珍しさは、名詞や動詞などの単語がほかと違うということでなく、発音の子音が重なる、重子音という使い方が大変、変わっている」と語った。
さらに実際に安島生まれで地元育ちの小針悟さん(68)が、普段使われる例文をネイティブの安島弁で披露した。例えば「まくら(枕)」は「まっふぁ」や「さくら(桜)」は、「さっふぁ」のように「く」が、「f」を重ねる「ff(ふ)」になると発音例を紹介、例文にある会話フレーズの読み方では、「はよ しぇな しがっふぇっど(早くしないと日が暮れるよ)」との独特の発音となる。また「かんのけなごなって、あつっふぁしー、あつっふぁしー(髪の毛が長くなって、暑苦しい 、暑苦しい)」などと紹介していた。
このほかの重子音では、「白い」は「そい(ssoi)」や「真っ白」を「まっそっそ(massosso)」など、 「油」を「あっば(abba)」、「油げ」を「あっばげ(abbage)」などと「ss」や「bb」の例も紹介されると、会場から「まるで外国語みたい」と感嘆の声が上がっていた。


進行役で安島在住の坂本浩幸さん(53)も、集落での普段使いの安島言葉を紹介。「自分」を「んだ」、「わが家」を「んだこ」、 「海の水」は「おっしょ」、「調子がよくない」を「あんにゃかんべ」など…「漁師町なので、海女文化や海運文化の影響もあるのではないか」と推察しながら、ウニを「がんじょ」と言うなど魚介類にも独特な呼び名がある、と紹介。
また各戸の屋号では「すなや」、「よそもん」、「こざかや」など一風変わった呼び名があることも紹介された。独特の感嘆詞「め」の使い方でも「普通に驚くときは『めっ』と言いますが、ちょっと驚くと『めめっ』、もおっと驚くと『めめめめっ~』と言います。このように、安島人は普段から感情あふれる言葉遣いをしている」と解説した。
こうした安島言葉の独自性について、笠松館長は「大変、貴重だ」としたうえで、「どうでしたか?皆さん。僕は聴いているうちに、本当に安島弁が大好きになりました。方言は一度無くなると、元に戻らないものですから、なんとか、安島の人が中心となって、安島弁を守っていく運動を起こしてほしいな、と思います」と保存活動を提案していた。
北陸方言の専門家、松倉金沢大講師が発言「独特の重子音、本土でここだけ」
また第2部では、ネイティブな安島弁を肌で感じてもらおうと、海女らによる会話を設定し、日常会話の実演も行われた。安島生まれの坂本洋子さん(78)と石黒幸美さん(43)の2人が雄島集落でばったり会って、世間話をする様子を実演すると、先ほど紹介された感嘆詞「めっ」「めぇ~」の使い方が生声でしっかり使われ、会場からは「なるほど〜」と納得する一方、2人の熱演に盛んな拍手も起きていた。
最後に会場とのやり取りでは、北陸地方の方言を研究している金沢大学講師の松倉昂平氏(34)が飛び入り発言。「僕の研究した安島弁を例文で引用していただきありがとうございます」と突然の専門家の登場に、一同はびっくり。松倉氏は「冒頭の『重子音』の話ですが、『まっふぁ』とか『ふぇ』とか 口の上の歯と下の唇をくっつけて発音する英語の『f』の子音は、沖縄地方の発音を除くと、北海道から九州までの本土の方言ですと安島だけ。本当に珍しい発音の仕方で、アクセントも安島固有のもの」と補足説明し、その希少性に太鼓判を押した。さらに「安島言葉の辞書や文法書をつくりたくて、長年1人で研究してきた。もし、地元で『安島言葉の保存会』ができるなら、ぜひお手伝いさせていただきたい」と提案もあり、驚きの声と〝歓迎の拍手〟が起きた。
実行委員の1人としてこのイベントを準備してきた坂本浩幸さんは「1回目から大勢の来場者が来てくれてよかった。普段しゃべっている安島弁が、自分たちはどこか恥ずかしかったが、今日は何かほめられたようで、誇らしく感じた。安島王国の企画はこのあと3回続くので、今後、仲間たちと内容をしっかり詰めていきたい」と話していた。
暮らしの中で安島弁の日常会話

集落でばったり幸美さんと会って…
幸美さん ひざんぼがいや てっかまっかね ほんじあがっとる
んじゃーぁー
【膝が真っ赤かで、腫れあがっちゃってるの】
洋子さん めいやぁー【そうなの?】
幸美さん 骨がどーかなっとっかもさんなぁ
【骨がどうかなってしまったのかも知れないわ】
洋子さん めっっ! めーいや!(※かなりの驚き)
聞き上手の洋子さんのおしゃべりに連られて…
幸美さん んだこのおっつぁどま っさぁーんかおしとるんじゃ
ぞぉー
【うちの旦那さん 知らん顔をしているんですよ】
洋子さん めみ~!!
(※「め」と「み」の中間のような声、最上級の驚き)
どしたんじゃろかぁー、あんまっだわ
【どうして、それはあんまりだわ】

坂井市龍翔博物館スペシャル歴史教室「安島王国」の今後のスケジュール

第2回
9月13日(日)「祭りとモッコ(刺し子)」
第3回 11月ごろ 「海女となんぼや」
第4回 12~1月ごろ 「神の島・雄島の自然」
※会場は福井県坂井市龍翔博物館。時間は14時~15時30分。参加料は無料。

安島(あんとう)=福井県坂井市三国町
福井県の景勝地・東尋坊の北に位置する集落。日本海の荒波と潮風に抱かれて、歴史と信仰、海の文化が深く息づく。古くから海上安全の要として崇敬を集める大湊神社は、延喜式にも記載が残る由緒ある神社。沖合に浮かぶ雄島は「神の島」と呼ばれ、毎年4月20日の雄島祭りでは神と海を結ぶ神事が行われる。江戸時代から明治にかけ、近隣の三国湊が「北前船交易」で栄えたのに伴い、男衆の多くは船乗りとなり、女性たちは一針一針縫うモッコ刺し(刺し子)の着物をつくり男衆を支えた。また海女の素潜り漁も盛んで昔から海の幸の恩恵を受け、暮らしに漁業や海女の文化が根付いている。
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