【慶應義塾】世界初のNK細胞リンパ腫の免疫環境を再現できるマウスモデルを開発
-起源細胞を見出し難治性疾患への新規治療法開発の道を開く-
発表のポイント
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世界で初めてNK細胞リンパ腫を自然発症し免疫環境を再現できるマウスモデルの開発に成功しました。このマウスは唾液腺など特徴的な臓器に腫瘍を形成し、アジア地域で高頻度に発生する難治性疾患の節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(ENKTCL)と類似した病態を示しました。
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本マウスモデルおよびヒトのNK細胞リンパ腫の細胞起源が組織常在性NK細胞であることを見出しました。この知見はENKTCLの発症メカニズムの解明に役立ちます。
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これまで明らかではなかったヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスのENKTCLへの関与メカニズムが明らかとなりました。
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本研究から、マウスモデルの腫瘍に特異的に発現していたタンパク質や、腫瘍内で活性が見られた免疫細胞の情報伝達経路への治療がマウスモデルでの生存延長効果を示し、新規治療法開発への道を開きました。
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)研究所(所長:間野 博行) 分子腫瘍学分野の古屋淳史外来研究員(慶應義塾大学医学部内科学教室(血液)専任講師)、同片岡 圭亮分野長(慶應義塾大学医学部内科学教室(血液)教授)らの研究グループは、NK(ナチュラルキラー)細胞リンパ腫の新規マウスモデルを開発し、その発症メカニズムを解明しました。
本研究では、NK細胞特異的にがん抑制遺伝子Trp53を欠失させることで、造血系および唾液腺にNK細胞リンパ腫を自然発症するマウスモデルの開発に世界で初めて成功し、腫瘍免疫微小環境を適切に評価することが可能になりました。
そのモデルの解析により以下の3点が明らかになりました。第一に、一般的なリンパ球のように体内巡回せず、組織に常在し免疫機能を担うNK細胞が豊富に存在する唾液腺において、腫瘍発症前から未熟なNK細胞の増加が認められました。この知見から組織に常在するNK細胞が本腫瘍の起源である可能性が示唆され、ヒトの節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type; ENKTCL) でも同様の特徴が確認されました。
第二にEBウイルス由来タンパク質LMP1の発現が、腫瘍免疫微小環境を変化させ、特に樹状細胞の増殖を促進し、腫瘍発症を加速させることを解明しました。
第三に、本マウスモデルの腫瘍細胞で特異的に発現するKLRG1というタンパク質が、ヒトENKTCL細胞でも発現していることを確認しました。さらに、KLRG1を標的とした治療により生存延長効果が得られることを実証しました。
本研究で開発されたマウスモデルは、腫瘍免疫微小環境の相互作用を評価できる初めてのモデルです。この成果は、難治性疾患であるENKTCLの発症メカニズムの解明に貢献するとともに、新規治療法開発への重要な手がかりを提供しました。
本研究結果は2024年10月22日(米国東部標準時)に英科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/11/28/241128-1.pdf
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