植物の枝のかたちづくりの仕組みの一端を解明
〜植物の4次元表現型解析でミオシンXI の新たな機能に迫る〜

(ポイント)
植物の枝が上向きかつ安定した方向に伸びる仕組みに、ミオシンXIという細胞内のモータータンパク質が関与することを明らかにしました。植物の立体構造の時間変化を計測する「4次元表現型解析」により、正常な植物とミオシンXIのはたらきを欠いた変異体の側枝の形態を定量的に比較しました。本研究により、植物の枝の形づくりにおけるミオシンXIの新たな役割と、枝の成長方向を制御する仕組みの一端が明らかになりました。
【概要説明】
熊本大学大学院自然科学研究部博士前期課程2年(当時)の吉田大一大学院生、甲南大学理工学部の上田晴子教授、琉球大学工学部の國田樹准教授、熊本大学半導体・デジタル研究教育機構の戸田真志教授、同大学院先端科学研究部の檜垣匠教授からなる研究グループは、植物の枝の形がどのように作られ、維持されるのかを調べるため、独自の解析技術である植物の立体構造の時間変化を調べる「4次元表現型解析」を行いました。
本研究では、モデル植物であるシロイヌナズナを用い、細胞内で物質を運ぶミオシンXIというタンパク質に注目しました。遺伝子変異によってミオシンXIのはたらきを失わせた植物では、枝が垂れ下がったり、枝が伸びる方向が不安定になったりすることがわかりました。特に、MYOSIN XIkが枝の上向きの成長に関与すること、MYOSIN XIfとXIkが枝の向きを安定化させる役割を担っていることなどが示されました。
これらの成果は、植物が光や重力などの外部刺激に応答しながら、効率よく枝を伸ばしていく仕組みを理解する上で重要な知見となるとともに、今後の作物の形態制御技術や育種への応用にもつながることが期待されます。
本研究成果は令和7年6月10日、科学雑誌「Quantitative Plant Biology」(ケンブリッジ大学出版)に掲載されました。本研究は日本学術振興会科研費、JST CREST、甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成金の支援を受けて実施されました。
【今後の展開】
本研究グループの独自技術である植物の4次元表現型解析は、植物のかたちの変化を精密に捉える新たな手法であり、ミオシンXIに限らず、他の因子の作用機構の解明にも応用可能です。また、枝の伸び方や成長方向を制御する技術の開発にもつながる可能性があり、農業や園芸分野における実用展開も期待されます。
(論文情報)
論文名:Four-dimensional phenotyping reveals MYOSIN XI-dependent establishment of branch morphology through upward- and stably-directed growth in Arabidopsis
著者:Daichi Yoshida, Itsuki Kunita, Masashi Toda, Haruko Ueda, and Takumi Higaki*(責任著者)
掲載誌:Quantitative Plant Biology
DOI:10.1017/qpb.2025.10007
URL:https://doi.org/10.1017/qpb.2025.10007
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