ジーンクエスト、東北大学病院総合感染症科とユーグレナ社の共同で新型コロナワクチン副反応の起こりやすさとの関連が示唆される遺伝子多型を日本で初めて同定
株式会社ジーンクエスト(代表取締役:高橋祥子、以下「ジーンクエスト」)は、東北大学病院総合感染症科(科長:徳田浩一、以下「東北大学」)と株式会社ユーグレナ(代表取締役社長:出雲充、以下「ユーグレナ社」)と共同で、新型コロナウイルスワクチン接種による副反応の起こりやすさとの関連が示唆されるヒト遺伝子多型を日本で初めて同定したことを、2021年11月30日にプレプリント・サーバー(注1)であるmedRxivに公開いたしました。なお本研究成果は、第三者による科学的な査読を経ていないプレプリント段階の発表内容です※1。
※1 本発表に関する留意点については、次ページの「本研究の限界と今後の展開」をご参照ください
※1 本発表に関する留意点については、次ページの「本研究の限界と今後の展開」をご参照ください
■経緯
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対するワクチンは、日本でも2021年から接種が進められており、2021年11月30日段階では国民全体の76.9%の方が2回の接種を終えていると報告されています。今後も未成年への接種や3回目の接種が検討されている一方で、新型コロナワクチンによる副反応には、発熱、接種部位反応、全身性反応等が多数報告されており、その発生には個人差が確認されています。これらの個人差にヒト遺伝子多型が影響している可能性が考えられ、この関連を調査した研究例は海外では少数確認されておりますが、日本人集団のデータを用いた研究は現在のところ確認されていません。
そこで、本研究では、新型コロナワクチン接種による副反応の個人差とゲノムワイドな一塩基多型(SNPs、注2)を調査することにより、ワクチン接種の副反応に関する深い知見を得ることを目的としました。
■概要
ジーンクエストあるいはユーグレナ社が提供する個人向け遺伝子解析サービスを通じて既に遺伝子情報を解析済みの方を対象に、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種後の副反応についてのウェブアンケート調査を実施しました※2。研究参加に同意しアンケートに回答していただいた参加者の中から、ファイザー社製のワクチンの接種者3,024名と武田/モデルナ社製のワクチン接種者1,512名の合計4,536名のデータを活用しました。遺伝子情報と51種類の各副反応についてのアンケート回答情報を用いて、ゲノムワイド関連解析(GWAS、注3)により関連の見られるSNPsを探索しました。
解析の結果、副反応の発生との関係が示唆される14の遺伝子座を同定することができました。その中の6番染色体の領域(6p21)では、発熱と筋肉痛など複数の副反応と関連していることが示唆されました。この領域には、HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子という免疫機構に関わる遺伝子が存在し、ヒトの免疫機構を用いて抗体を生成するワクチンのメカニズムから考えると、ワクチンの副反応にHLA遺伝子の遺伝子多型が関連することは妥当な結果であると考えられます。また、海外の報告(注4、注5)でもHLA遺伝子の多型は、新型コロナウイルス感染症のワクチン副反応に関連することが示されています。さらに、本研究にて特に関連の強かったrs183300 (6p21領域)というSNPについて、ファイザー社製ワクチンの2度目の接種後における37.5℃以上の発熱は、CC型では28%、CT型では35%、TT型では44%の割合で起きており、遺伝子型ごとに発生率に差があることが確認できました(p-value = 3.39 × 10^-11)。
本研究成果を活用することにより、新型コロナウイルス感染症のワクチンの作用機序の解明に役立つことが期待されます。
※2 2021年9月3日リリース https://www.euglena.jp/news/210903/
今後もジーンクエストとユーグレナ社は、遺伝子解析サービスを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組むことで、生命科学の発展と人々の生活を豊かにするより付加価値の高いヘルスケアソリューションの提供を目指してまいります。
■本研究の限界と今後の展開
新型コロナウイルスワクチンの副反応に関する遺伝的背景の解明には更なる詳細な追加解析が必要ですが、本研究成果について、現在の社会的情勢も鑑みて迅速な発信と社会還元が重要であるため、学術雑誌への投稿に先立ってプレプリント・サーバーであるmedRxiv への掲載を通じて発信しております。そのため、掲載や報道にあたっては、本研究成果は第三者による科学的な査読前の段階での発表内容である旨を明記していただくなど十分ご留意ください。
また、ワクチンの副反応については、必ずしも遺伝子多型の影響が100%ではなく、生活習慣や年齢、性別など複合的な要因が関わっています。本研究成果ですべてを説明できる性質のものではないことにご注意ください。また、本研究で同定された遺伝子多型のみで、全ての遺伝的な影響が解明されたわけではありません。
今後は、本研究成果について更なる詳細な追加解析も実施する予定です。また学術雑誌への投稿も予定しております。新型コロナウイルス感染流行の中で尽力されている医療従事者の皆様、すべての皆様に少しでも科学で貢献できるよう活動を続けてまいります。
■研究体制について
本研究について、ジーンクエストと東北大学で共同研究契約が締結されております※3、4。ジーンクエストでは研究計画の作成、アンケート情報の取得、統計解析が行われ、東北大学ではアンケート設問の設計と結果の考察、ユーグレナ社ではアンケート情報の取得が行われました。本研究に協力して頂いたジーンクエストおよびユーグレナ社のお客様には、改めて感謝申し上げます。なお、ジーンクエスト代表の高橋祥子は、2021年7月より東北大学特任教授(客員)を務めています。
※3 本研究についてジーンクエスト倫理審査委員会、および東北⼤学病院臨床研究倫理委員会の承認を得ております
※4 個人情報や個人遺伝情報はジーンクエスト内でのみ扱われ、東北大学には個人と紐づかない統計結果データのみが共有されています
■論文情報
英文タイトル:Identification of susceptibility loci for adverse events following COVID-19 vaccination in the Japanese population: A web-based genome-wide association study.
タイトル和訳:日本人集団においてCOVID-19ワクチン副反応の起こりやすさとの関連が示唆される遺伝子多型を同定-ウェブベースのゲノムワイド関連研究を実施-
著者名:Shun Nogawa, Hajime Kanamori, Koichi Tokuda, Kaoru Kawafune, Miyuki Chijiiwa, Kenji Saito and Shoko Takahashi
掲載:medRxiv
DOI:https://doi.org/10.1101/2021.11.30.21267043
URL:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.11.30.21267043v1
■用語解説
注1 プレプリント・サーバー:一般的に論文として公開される前には、査読と呼ばれる第三者の専門家により内容の検証が行われます。プレプリントとは、査読を通過する前段階の原稿のことを一般的に指します。プレプリント・サーバーとは、プレプリントの原稿を公開するためのサーバーを指します。
注2 SNP (Single Nucleotide Polymorphism):ある生物種集団のゲノム塩基配列中に1%以上の頻度で見られる一塩基が変異した多様性を指します。
注3 ゲノムワイド関連解析(GWAS):ヒトゲノム全体のSNPsの遺伝子型を決定し、SNPsの頻度と病気や量的形質との関連を統計的に調べる方法です。
注4 Bolze A, Neveux I, Barrett KMS, et al. HLA-A*03:01 Is Associated with Increased Risk of Fever, Chills, and More Severe Reaction to Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccination. 2021:2021.11.16.21266408. doi:10.1101/2021.11.16.21266408
注5 The genetics behind the different reactions to COVID-19 vaccines. 23andMe blog. published 9 November, 2021. Accessed November 24, 2021. Posted online https://blog.23andme.com/23andme-research/reaction-to-covid-vaccine/
■図
【株式会社ジーンクエストについて】
2014年に国内で初めて大規模遺伝子解析サービスを個人向けに展開。生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など300項目以上におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるサービスを提供しています。遺伝子の研究を推進し、正しい使い方を広め、人々の生活を豊かにすることをビジョンに掲げ、蓄積されたゲノムデータを活用し研究活動を積極的に行っています。
企業サイト:https://genequest.jp/
【株式会社ユーグレナについて】
2005 年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。微細藻類ユーグレナ・クロレラなどを活用した機能性食品、化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究、2018年からジーンクエストと協業し遺伝子解析サービスを含む「ユーグレナ・マイへルス」を展開しています。また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大。2012 年 12 月東証マザーズに上場。2014 年 12 月に東証一部市場変更。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対するワクチンは、日本でも2021年から接種が進められており、2021年11月30日段階では国民全体の76.9%の方が2回の接種を終えていると報告されています。今後も未成年への接種や3回目の接種が検討されている一方で、新型コロナワクチンによる副反応には、発熱、接種部位反応、全身性反応等が多数報告されており、その発生には個人差が確認されています。これらの個人差にヒト遺伝子多型が影響している可能性が考えられ、この関連を調査した研究例は海外では少数確認されておりますが、日本人集団のデータを用いた研究は現在のところ確認されていません。
そこで、本研究では、新型コロナワクチン接種による副反応の個人差とゲノムワイドな一塩基多型(SNPs、注2)を調査することにより、ワクチン接種の副反応に関する深い知見を得ることを目的としました。
■概要
ジーンクエストあるいはユーグレナ社が提供する個人向け遺伝子解析サービスを通じて既に遺伝子情報を解析済みの方を対象に、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種後の副反応についてのウェブアンケート調査を実施しました※2。研究参加に同意しアンケートに回答していただいた参加者の中から、ファイザー社製のワクチンの接種者3,024名と武田/モデルナ社製のワクチン接種者1,512名の合計4,536名のデータを活用しました。遺伝子情報と51種類の各副反応についてのアンケート回答情報を用いて、ゲノムワイド関連解析(GWAS、注3)により関連の見られるSNPsを探索しました。
解析の結果、副反応の発生との関係が示唆される14の遺伝子座を同定することができました。その中の6番染色体の領域(6p21)では、発熱と筋肉痛など複数の副反応と関連していることが示唆されました。この領域には、HLA(ヒト白血球抗原)遺伝子という免疫機構に関わる遺伝子が存在し、ヒトの免疫機構を用いて抗体を生成するワクチンのメカニズムから考えると、ワクチンの副反応にHLA遺伝子の遺伝子多型が関連することは妥当な結果であると考えられます。また、海外の報告(注4、注5)でもHLA遺伝子の多型は、新型コロナウイルス感染症のワクチン副反応に関連することが示されています。さらに、本研究にて特に関連の強かったrs183300 (6p21領域)というSNPについて、ファイザー社製ワクチンの2度目の接種後における37.5℃以上の発熱は、CC型では28%、CT型では35%、TT型では44%の割合で起きており、遺伝子型ごとに発生率に差があることが確認できました(p-value = 3.39 × 10^-11)。
本研究成果を活用することにより、新型コロナウイルス感染症のワクチンの作用機序の解明に役立つことが期待されます。
※2 2021年9月3日リリース https://www.euglena.jp/news/210903/
今後もジーンクエストとユーグレナ社は、遺伝子解析サービスを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組むことで、生命科学の発展と人々の生活を豊かにするより付加価値の高いヘルスケアソリューションの提供を目指してまいります。
■本研究の限界と今後の展開
新型コロナウイルスワクチンの副反応に関する遺伝的背景の解明には更なる詳細な追加解析が必要ですが、本研究成果について、現在の社会的情勢も鑑みて迅速な発信と社会還元が重要であるため、学術雑誌への投稿に先立ってプレプリント・サーバーであるmedRxiv への掲載を通じて発信しております。そのため、掲載や報道にあたっては、本研究成果は第三者による科学的な査読前の段階での発表内容である旨を明記していただくなど十分ご留意ください。
また、ワクチンの副反応については、必ずしも遺伝子多型の影響が100%ではなく、生活習慣や年齢、性別など複合的な要因が関わっています。本研究成果ですべてを説明できる性質のものではないことにご注意ください。また、本研究で同定された遺伝子多型のみで、全ての遺伝的な影響が解明されたわけではありません。
今後は、本研究成果について更なる詳細な追加解析も実施する予定です。また学術雑誌への投稿も予定しております。新型コロナウイルス感染流行の中で尽力されている医療従事者の皆様、すべての皆様に少しでも科学で貢献できるよう活動を続けてまいります。
■研究体制について
本研究について、ジーンクエストと東北大学で共同研究契約が締結されております※3、4。ジーンクエストでは研究計画の作成、アンケート情報の取得、統計解析が行われ、東北大学ではアンケート設問の設計と結果の考察、ユーグレナ社ではアンケート情報の取得が行われました。本研究に協力して頂いたジーンクエストおよびユーグレナ社のお客様には、改めて感謝申し上げます。なお、ジーンクエスト代表の高橋祥子は、2021年7月より東北大学特任教授(客員)を務めています。
※3 本研究についてジーンクエスト倫理審査委員会、および東北⼤学病院臨床研究倫理委員会の承認を得ております
※4 個人情報や個人遺伝情報はジーンクエスト内でのみ扱われ、東北大学には個人と紐づかない統計結果データのみが共有されています
■論文情報
英文タイトル:Identification of susceptibility loci for adverse events following COVID-19 vaccination in the Japanese population: A web-based genome-wide association study.
タイトル和訳:日本人集団においてCOVID-19ワクチン副反応の起こりやすさとの関連が示唆される遺伝子多型を同定-ウェブベースのゲノムワイド関連研究を実施-
著者名:Shun Nogawa, Hajime Kanamori, Koichi Tokuda, Kaoru Kawafune, Miyuki Chijiiwa, Kenji Saito and Shoko Takahashi
掲載:medRxiv
DOI:https://doi.org/10.1101/2021.11.30.21267043
URL:https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.11.30.21267043v1
■用語解説
注1 プレプリント・サーバー:一般的に論文として公開される前には、査読と呼ばれる第三者の専門家により内容の検証が行われます。プレプリントとは、査読を通過する前段階の原稿のことを一般的に指します。プレプリント・サーバーとは、プレプリントの原稿を公開するためのサーバーを指します。
注2 SNP (Single Nucleotide Polymorphism):ある生物種集団のゲノム塩基配列中に1%以上の頻度で見られる一塩基が変異した多様性を指します。
注3 ゲノムワイド関連解析(GWAS):ヒトゲノム全体のSNPsの遺伝子型を決定し、SNPsの頻度と病気や量的形質との関連を統計的に調べる方法です。
注4 Bolze A, Neveux I, Barrett KMS, et al. HLA-A*03:01 Is Associated with Increased Risk of Fever, Chills, and More Severe Reaction to Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccination. 2021:2021.11.16.21266408. doi:10.1101/2021.11.16.21266408
注5 The genetics behind the different reactions to COVID-19 vaccines. 23andMe blog. published 9 November, 2021. Accessed November 24, 2021. Posted online https://blog.23andme.com/23andme-research/reaction-to-covid-vaccine/
■図
【株式会社ジーンクエストについて】
2014年に国内で初めて大規模遺伝子解析サービスを個人向けに展開。生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など300項目以上におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるサービスを提供しています。遺伝子の研究を推進し、正しい使い方を広め、人々の生活を豊かにすることをビジョンに掲げ、蓄積されたゲノムデータを活用し研究活動を積極的に行っています。
企業サイト:https://genequest.jp/
【株式会社ユーグレナについて】
2005 年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。微細藻類ユーグレナ・クロレラなどを活用した機能性食品、化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究、2018年からジーンクエストと協業し遺伝子解析サービスを含む「ユーグレナ・マイへルス」を展開しています。また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大。2012 年 12 月東証マザーズに上場。2014 年 12 月に東証一部市場変更。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp
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