【イベントレポート】医療×AIの最前線と社会実装のリアル
- 技術・制度・人財で読み解く構造転換 -
世界30ヵ国で企業のイノベーションと成長を加速させるデジタルエンジニアリングコンサルティングを展開するAKKODiSの日本法人で、現場変革の力とデジタル技術により企業の生産性向上とAIトランスフォーメーションの実現を支援するAKKODiSコンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎 健一郎、「以下、AKKODiS」)は、2026年7月7日に「医療×AIの最前線と社会実装のリアル ― 技術・制度・人財で読み解く構造転換 ―」を開催しました。
生成AIをはじめとするAI技術の進展により、医療分野においても診断支援や創薬、手術支援ロボット、医療データ活用など、多様な領域でAIの活用が広がりつつあります。一方で、技術の進歩だけでは医療現場への普及は進まず、制度設計や責任の所在、人財育成、データ活用のあり方など、社会実装に向けたさまざまな課題が存在しています。
セミナーの冒頭では、AKKODiS People Development本部キャリア開発推進部 マスターインストラクターであり、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)の実装技術ロードマップ委員を務める谷本 琢磨(工学博士)が、AI時代におけるデータセンターの構造的変化について解説しました。AI技術そのものだけでは医療は変わらず、制度、ガバナンス、人財育成、医療現場との協働を含めた社会実装が重要であることを提示し、その後の講演・パネルディスカッションの共通テーマを示しました。

その後、株式会社Preferred Networksの松下 卓人氏、水野 和恵氏、神戸大学医学部附属病院の植木 秀登氏が講演を行いました。イベントの最後には、登壇者によるパネルティスカッションを行い、「医療現場で本当に求められているAIとは何か」をテーマに、産学双方の立場から活発な議論が行われました。
本レポートでは、当日の講演やパネルディスカッションの内容を振り返りながら、医療AIの現在地と今後の可能性について紹介します。
■Preferred Networksが示すAI活用の最前線
松下 卓人氏、水野 和恵氏(株式会社Preferred Networks)

株式会社Preferred Networks(以下、PFN)の松下氏、水野氏が登壇し、同社が取り組む医療・ライフサイエンス分野におけるAI活用事例が紹介されました。PFNは、AI半導体、計算基盤、生成AI基盤モデル、AIプロダクト・ソリューションという4つのレイヤーを一貫して自社開発し、日本発のAI企業として幅広い業界での研究開発を推進しています。創薬分野におけるAI活用では、自社開発のAI技術と計算基盤を用いた事例を紹介。通常、新薬開発には10年以上の期間と莫大な研究開発費用が必要ですが、AIを活用することで候補物質の探索や薬効予測の効率化が期待されています。PFNでは分子設計や予測モデルの研究を進め、創薬プロセスの高度化に取り組んでいます。
さらに、AIとロボティクスを組み合わせた実験自動化にも取り組んでおり、実験結果を踏まえて次の条件を自律的に決定する研究環境の構築を進めています。医療現場では、肺がん検診の画像解析支援や医療特化型LLM、疾患予測モデルの研究などを紹介し、診断精度向上や医療従事者の負荷軽減への期待もされています。
また、PFNは技術開発だけでなく、AIガバナンスにも注力しており、政府のAI戦略や国際的な取り組みに関しても積極的に貢献しています。医療分野ではAIの精度だけでなく、「安全に利用できるか」「社会的に受容されるか」が重要な論点となります。そのためPFNでは透明性、リスク管理、インテグリティを柱とする独自のAIガバナンス体制を構築しています。
講演では、開発段階からリスク評価を行う仕組みや、専門委員会によるレビュー体制について紹介されました。また、バイアスや誤回答の抑制、個人情報保護、利用目的の明確化などにも継続的に取り組んでいると説明。AIは社会課題解決の強力な手段である一方で、不適切な運用は新たなリスクを生み出します。だからこそ、技術革新と同時にガバナンスを整備し、利用者や社会から信頼されるAIの実現が重要であるとの考えが共有されました。また、技術だけではなく、社会から信頼されるAIをどう実現するかという視点は、医療AIの社会実装を考える上でも重要な論点として共有されました。

■医療現場から見るAI活用の可能性
植木 秀登氏(神戸大学医学部附属病院 泌尿器科 助教)

後半のセッションでは、神戸大学医学部附属病院の植木氏が登壇し、医師としての立場から医療AIの可能性について講演しました。
植木氏は泌尿器科医として日々診療に従事する一方、AIを活用した手術評価や教育支援の研究にも取り組んでいます。講演では、自身がAI研究に取り組むようになった背景とともに、医療現場が抱える構造的な課題について紹介されました。
医療現場では、従来の手術教育が「See one, Do one, Teach one(見て学び、実践し、教える)」という経験則に依存しており、技術の習得や評価が主観的になりやすいことを指摘。さらに、医師不足や働き方改革の影響により、熟練医から若手医師への技術継承が難しくなっている現状を説明し、客観的なデータに基づく教育・評価の重要性を訴求しました。さらに、AIによる客観評価は、若手医師育成だけではなく、医療の質の均質化にもつながる可能性が示されました。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが、ロボット支援手術によるデータ活用です。ロボット手術では、術中のアームやカメラの動き、フットペダルの操作状況などが詳細なログとして記録されます。植木氏は、このデータを活用することで、これまで可視化が難しかった手術技術の分析が可能になると説明しました。
また、手術分野ではロボット支援手術の普及が進む中で、AIによる技能評価や術式解析などの研究も進展しています。手術の映像データを学習したAIが手術の進行段階を高精度で判別できることや、医師の操作ログを分析することで熟練医と非熟練医の違いを客観的に評価できることで、将来的には個々の医師に最適化された教育やトレーニングへの応用も期待されると述べました。
一方で、医療AIの社会実装には、データ利用の制約や専門人財の不足、責任所在の明確化、個人情報保護など多くの課題が存在します。「医師とエンジニアが継続的に協働する重要性」を強調。医療AIの可能性を現実の価値へと変えるためには、多様な専門家が協働しながら社会実装を進めていくことが不可欠であるとの考えから、神戸大学で取り組んでいる、医師×エンジニア×企業・データ基盤による取り組みについて共有されました。

■パネルディスカッション
医療AIの社会実装に必要な「技術・制度・人財」について議論

イベント後半のパネルディスカッションでは、PFNの登壇者と神戸大学医学部附属病院の植木氏が、医療AIの社会実装に向けた現在地と今後の展望について議論しました。
議論ではまず、AIと医療従事者の役割について意見が交わされました。登壇者からは、AIは医師を代替する存在ではなく、診断や治療に必要な情報を整理し、意思決定を支援するパートナーとして活用されるべきであるとの認識が共有されました。医療現場では日々膨大な情報が扱われており、AIによる情報検索やデータ分析の高度化によって、医療従事者が本来注力すべき診療や患者対応により多くの時間を割ける可能性が示されました。
また、日本発のAI開発の意義についても議論が交わされました。医療分野では各国の制度や言語、診療プロセスに応じた対応が求められるため、日本の医療現場に根差したAIの開発が重要であるとの見解が示されました。加えて、国内の医療機関や研究機関と連携しながら質の高い医療データを活用することで、研究開発や診療支援のさらなる発展が期待できると語られました。
一方で、AIの普及には技術面だけでなく、信頼性やガバナンスの確立も不可欠です。特に生成AIは大きな可能性を持つ一方で、誤情報やバイアスへの対策が求められます。登壇者らは、リスク管理や透明性の確保、継続的な検証体制の重要性を指摘し、「AIを信頼する」のではなく、「AIを適切に管理しながら活用する」という考え方の必要性を強調しました。
さらに、人財育成も重要なテーマとして挙げられました。医療課題を理解するエンジニアと、デジタル技術を理解する医療従事者の双方が求められるなか、異なる専門性を持つ人財が継続的に対話しながら協働することが、社会実装の加速につながるとの認識が共有されました。
医療AIの未来に向けて
ディスカッションの最後には、医療AIの未来について、それぞれの立場から展望が示されました。
登壇者からは、AI技術そのものの進展だけでなく、制度整備や人財育成、産学連携など、多方面からの取り組みが今後の成否を左右するとの認識が共有されました。
また、AIはあくまでも目的ではなく、医療現場や患者が抱える課題を解決するための手段であることが改めて強調されました。医療従事者の負担軽減、診療の質向上、研究開発の加速など、AIによって実現できる価値は大きく、その可能性を社会実装へとつなげていくためには、多様なステークホルダーが連携していくことが重要であるとのメッセージで締めくくられました。


AKKODiSコンサルティング株式会社について
Akkodisは、テクノロジーを駆使してプロセスや製品の開発、運用、最適化のあり方を再定義し、組織のイノベーションと成長を加速させるグローバルなデジタルエンジニアリングコンサルティング企業です。AI、データ、クラウド、エッジ、ソフトウェアエンジニアリングにおける深い専門知識を持ち、業界最高水準のテクノロジーコンサルティングを提供しています。強力でスケーラブルなデリバリーモデルと高度な専門人財を通じて、戦略策定・コンサルティングから実装に至るまでのエンドツーエンドのソリューションを提供しています。Akkodis Intelligenceへのコミットメントのもと、テクノロジーの加速度的なインパクトと人間の知性・協働力を融合させ、ビジネス変革を推進します。
Adecco Groupの一員としてスイスに本社を置くAkkodisは、世界30か国以上に40,000人のテックコンサルタントとデジタル分野の専門家を擁し、Consulting、Solutions、Academyのサービスを提供しています。世界の主要産業における豊富な実績をもつAkkodisは、企業の複雑な課題を解決し、サスティナブルな成長と社会的価値の実現を支援します。
日本法人のAKKODiSコンサルティング株式会社は、「日本企業を、世界企業へ、現場変革から。」をビジョンに掲げ、6,000名を超える現場に精通したテックコンサルタントのチームが、顧客組織の現場と融合<フュージョン>する独自のアプローチにより、組織内部から変革を促進し、AIトランスフォーメーションを通じた飛躍的な生産性向上と世界スケールの事業をお客様と共に創出します。
【AKKODiSウェブサイト】 https://www.akkodis.co.jp/
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