世界初、5G-Advanced基地局用GaN増幅器モジュールの性能実証に成功
小型モジュール化と高効率化により、5G-Advanced基地局の設置性向上と省エネに貢献

三菱電機株式会社は、第5世代移動通信システム(5G)の強化と第6世代移動通信システム(6G)へのスムーズな移行を担う5G-Advanced基地局の実現に向けて、世界最高(※1)の電力効率(※2)を有する7GHz帯GaN(※3)増幅器モジュールを世界で初めて(※1)開発し、5G-Advancedで使用される通信信号を用いた本モジュールの性能実証に成功しました。
5Gの発展版となる5G-Advancedは、超高速大容量・超低遅延・多数同時接続が特長で、2023年に規格化され、2025年から段階的に導入が開始されます。5G-Advanced基地局は、多数同時接続を実現するために、複数のアンテナを協調動作させて任意の方向に電波のビームを形成しますが、その際、周波数で決まる波長の長さに応じてアンテナを配置することで、ビームの方向の精度を高めます。現在4Gや5Gで主流となっている周波数帯に比べて高い周波数帯(6.425~7.125GHz)を使用する5G-Advancedは波長が短いため、各アンテナの配置間隔が狭くなり、各アンテナと対をなして裏面に実装される各増幅器モジュールの配置間隔もまた狭くなるため、小型なモジュールの実現が課題となっています。さらに、増幅器は特に発熱による電力損失が大きく、低消費電力化による省エネも求められています。
当社は今回、これらの課題を解決するために、独自の整合回路技術と当社製高性能GaNトランジスタの採用により、世界最高の電力効率を実現した7GHz帯GaN増幅器モジュールを開発し、5G-Advancedで使用される通信信号を用いた本モジュールの性能実証に成功しました。本モジュールは12.0 mm×8.0mm(開発試作品の外形サイズ)と小型で、各部品の高密度実装が可能となるため、5G-Advanced基地局の設置性向上に寄与します。今後、実用化に向けた研究開発を進めることで、5G-Advanced基地局の実現に貢献します。
なお、本開発成果の詳細は、国際会議「IEEE IMS(※4) 2025」(6月15日~20日、於:米国・カリフォルニア州サンフランシスコ)で発表します。また、同会議の展示会場にて動態デモ(※5)を実施します。
■開発の特長
1.独自の整合回路技術により世界初の7GHz帯GaN増幅器モジュールを開発し、5G-Advanced基地局の設置性向上に貢献
・GaNトランジスタの寄生成分(※6)を整合回路の一部として利用する独自技術の適用により、
寄生成分による電力効率の劣化を抑制し、世界で初めて7GHz帯GaN増幅器モジュールを開発
・12.0mm×8.0mm(開発試作品の外形サイズ)の小型な7GHz帯GaN増幅器モジュールを実現し、高密度実装が必要となる5G-Advanced基地局の設置性向上に貢献

2.当社製高性能GaNトランジスタの採用により世界最高の電力効率を実現し、5G-Advanced基地局の省エネに貢献
・業界トップクラス(※1)の当社製高効率GaNトランジスタを増幅器モジュールに採用。さらに独自の整合回路技術により整合回路の低損失化を実現
・GaNトランジスタと整合回路の高性能化により、5G-Advancedで求められる水準(※7)を上回る世界最高の電力効率41%を実現し、5G-Advanced基地局の省エネに貢献
■5G-Advancedで使用される通信信号を用いたモジュールの性能評価結果

周波数 |
電力効率/電力付加効率 (※8) |
出力電力 |
電力利得 |
ACLR (※9) |
6.8~7.1GHz |
41%/35% |
37dBm |
25dB |
-50dBc |
■今後の予定・将来展望
今回開発した7GHz帯GaN増幅器モジュールの2025年以降の実用化に向けて研究開発を進め、5G-Advanced基地局の実現に貢献します。
■三菱電機グループについて
私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie®」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2024年度の連結売上高は5 兆5,217 億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。
(※1) 2025年6月12日現在、当社調べ
(※2) 消費電力に対する出力電力の割合。電力効率が上がると消費電力が低下
(※3) Gallium Nitride:窒化ガリウム
(※4) International Microwave Symposium:IEEE国際マイクロ波シンポジウム
(※5) Wupatec社(ウパテック)と共同で実施
(※6) GaNトランジスタの内部や物理的な構造に起因する回路図上には見えない意図しない成分で、周波数が高くなると影響が大きくなる。通常、抵抗成分が増大すると、電力効率は劣化する
(※7) 発熱を考慮しても高密度実装可能な電力効率
(※8) 消費電力に対する出力電力から入力電力を引いた電力の割合
(※9) Adjacent Channel Leakage Ratio:隣接チャネル漏洩電力比。高品質な通信を実現する基準値が-50dBc
■お問い合わせ先
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html
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