半数以上が災害時の避難行動に「自信がない」「災害時の避難に関する意識・実態調査」を実 施
避難行動の実効性向上と、誰もが安心して避難できる環境整備の重要性が明らかに
日本赤十字社(本社:東京都港区、社長:清家篤、以下「日赤」)は、国内で相次ぐ大規模な地震やそれに伴う津波警報の発表、台風・豪雨などによる風水害の激甚化・頻発化、さらに近年では大規模な林野火災が多数発生するなど、「避難」が必要となる自然災害が全国各地で発生している現状を受け、「災害時の避難に関する意識・実態調査」を実施しました。
近年、気候変動の影響などにより自然災害のリスクが高まる中、災害対策においては、「災害が起きてから対応する」とともに、「災害に備え、被害を最小限に抑える」事前の取り組みも一層強化されています。2026年7月には、防災庁の設置法が可決・成立し、秋には防災庁の設置が見込まれるなど、国としても防災・減災体制の整備・強化が進められています。
このような状況を受け、一人一人が適切なタイミングで避難し、命を守る行動をとれる社会の実現がこれまで以上に重要となる一方、災害発生の可能性を認識しながらも、実際には「様子を見る」「誤った判断」など、避難行動の遅れ、行動に移せないケースが課題となっています。
日赤は、全国に広がるネットワークを活かし、各地で発生する災害において、救護班を派遣し避難所での診療、こころのケア、救援物資の配布など、被災者に寄り添った支援活動を行うとともに、日頃から防災・減災に関する普及啓発活動(講習や赤十字防災セミナーなど)を継続的に実施しています。
そこでこのたび、災害時の避難に対する意識や実際の備え、避難の判断や行動する際の課題、さらには避難所に求める環境や支援ニーズを把握することで、今後の防災・減災に関する普及啓発活動などの取り組みの充実に役立てることを目的として、本調査を実施しました。なお、調査は「令和8年熊本地震」の発生前に実施したものであり、今回の地震を受けた回答ではありません。
【主な調査結果】
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災害を理由とした「避難経験はない」人が72%以上、「避難所へ避難したことがある」人はわずか8.5%。
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避難行動について、「あまり自信がない」「できない」が半数以上、女性は男性より20ポイント以上多い結果に。
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避難を開始する判断基準やタイミングとして、半数近くが国や自治体等による「公的情報」を重視。
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避難を開始するタイミング1位は、「気象庁や自治体など、公的機関が避難を呼びかけたとき」である一方、避難をためらう要因では、「避難のタイミングが分からない」が1位に。「避難中の移動環境への不安」や「避難先の環境に対する不安」も課題。
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避難所の環境に対して、「安心できる」と回答した人はすべての項目で4分の1未満。
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避難所で特に重要だと思うものは、「トイレ・入浴環境の提供」が1位、「プライバシー確保」が2位。現在行っている避難準備を問う質問において、10代の回答では、「ハザードマップの確認」「避難先の確認」に次いで「モバイルバッテリー」が3番目に多い結果に。
調査結果
1. 避難行動をとったことがない人が72%以上、避難所への避難経験は10%未満に留まる
災害を理由とした避難行動の経験について聞いたところ、「避難経験はない」人が全体の72.3%を占める結果となりました。また、これまでに何らかの避難行動をとったことがある人の中でも、「避難所へ避難した」経験がある人は、全体のわずか8.5%に留まっています。
多くの人が実際の避難経験を持たないことから、平時から避難の流れや避難先など、災害時の避難について具体的にイメージできるよう備えておくことの重要性がうかがえます。

2. 半数以上が避難行動に「自信がない」、女性は男性より20ポイント以上高い結果に
災害時に自ら必要な情報を収集し、避難行動をとることができると思うか尋ねたところ、「あまり自信がない」「できないと思う」と答えた人が53.2%と半数以上を占める結果となりました。性別で見ると、「自信がない・できない」と回答した男性は43.2%だったのに対し、女性は63.4%にのぼり、20ポイント以上高い結果となっており、女性の方が男性よりも避難行動について自信を持てていない現状が明らかになりました。

3. 避難判断で重視されるのは「公的機関からの情報」
災害時において信頼する情報源について、「地方自治体」と回答した人が最も多く、避難を判断する際に重視するものとしては「避難指示の発令状況」が最多となりました。そのほか、「国の機関」を信頼するという回答や、「気象警報や津波・火山・地震に関する特別警報などの発表状況」を重視するという回答も上位にあがっており、災害時や避難時には、公的機関による情報を重視する人が半数近くにのぼる結果となりました。
公的機関から発信される正確な情報が、避難行動を支える重要な判断材料となっていることがうかがえます。


4. 「避難指示が出たら避難する」が最多、一方で"避難のタイミングが分からない"ことが最大の壁に
「避難中の移動環境への不安」や「避難先の環境に対する不安」の他、要配慮者への支援も課題
避難を開始するタイミングについて、「気象庁や自治体など、公的機関が避難を呼びかけたとき」と回答した人が最多となった一方で、避難をためらう理由として「避難のタイミングが分からない」と回答する人が最多となりました。避難の呼びかけがあれば行動しようという意識はあるものの、実際にはその適切なタイミングを判断できず、避難をためらってしまう実態がうかがえます。
また、「今いる場所を離れることへの不安」や「避難先の環境に対する不安」、「避難中の移動環境への不安」も上位にあがっており、避難の意思決定だけでなく、避難中・避難先での環境に対する不安も、避難をためらわせる要因となっていることが明らかになりました。
加えて、「要配慮者が家族にいる」、「自身に障がいがある」という声や、「プライバシーや、衛生環境、防犯面が気になる」などを理由に避難をためらう声もあがっており、避難情報の見方や避難開始の目安を平時から理解しておくだけでなく、さまざまな立場や事情を抱える人が安心して避難生活を送ることができるように配慮された避難環境の整備が重要であることが示唆されます。


5. 避難所に「安心できる」と感じる人は4人に1人未満、「やや不安である」もしくは「非常に不安である」と回答した割合はすべての項目で女性が10ポイント以上高い結果に
避難所に関するイメージを聞いたところ、「安心できる」と回答した人はすべての項目で4分の1に満たない結果となりました。中でも「居住性・快適性」に安心を感じる人が最も少ない結果となっています。また、すべての項目において「やや不安である」もしくは「非常に不安である」と回答した割合の合計は、女性が男性よりも10ポイント以上高い結果となりました。
避難所生活においては、衛生環境や設備といった物理的な課題だけでなく、共同生活による心理的負担も、避難をためらわせる大きな要因となっている実態がうかがえます。


6. 水・食料より「プライバシー確保」のニーズが高く、デジタルインフラを重要視する声も
避難所で特に重要だと思うものについては、「トイレ・入浴環境の提供」が1位に。次いで、「プライバシー確保」が2位となり、「水・食料の提供」を上回りました。
現在行っている避難準備としては、飲料水や非常食の備蓄、ハザードマップの確認が上位にランクインしています。なお、全体では「モバイルバッテリー」が7位となったのに対し、10代の回答においては、「ハザードマップの確認」「避難先の確認」に次いで3番目に多く、飲料水や非常食の備蓄を上回る結果となりました。
こうした結果から、避難所では物資の確保だけでなくプライバシーへの配慮が求められているほか、特に若年層においては、災害時でも外部とのつながりを維持できる情報インフラの整備などに一定のニーズがあることがうかがえます。


調査結果まとめ
今回の調査では、多くの人が実際の避難経験を持たず、災害時に自ら情報を収集し、適切な避難行動をとることに半数以上が不安を感じている実態が明らかになりました。また、避難の必要性は理解していても、「避難のタイミングが分からない」「避難所の環境に不安がある」といった理由から、実際の避難行動をためらう人が少なくないこともうかがえます。一方で、避難の判断や行動のきっかけとしては、自治体や気象庁など公的機関からの情報が強く信頼されており、正確で分かりやすい情報発信が避難行動を後押しする重要な役割を担っていることも示されました。
また、避難所の環境や支援について「安心できる」と回答した割合はすべての項目で4人に1人未満に留まり、「不安である」と回答した割合は、すべての項目で女性が男性を10ポイント以上上回る結果となりました。避難所では、生活環境の整備や物資の提供に加え、プライバシーの確保や情報通信環境の整備など、さまざまな立場や事情を抱える人が安心して避難生活を送るための環境づくりが求められていることが明らかになりました。
2026年7月には、防災庁設置法の施行に伴い、災害対策基本法の基本理念に「被災者の良好な生活環境の確保」が追加されるなど、避難生活における環境整備の重要性が社会的にも高まっています。今回の調査結果からも、こうした避難生活の環境整備は、避難後の生活の質だけでなく、避難するかどうかという意思決定にも影響を与える要素の一つであることが推察されます。
<調査概要>
調査名 災害時の避難に関する意識・実態調査
調査対象 全国に居住する男女1440人 ※10~60代以上の男女各720人
調査方法 ネットリサーチ
調査機関 株式会社ネオマーケティング(調査委託)
調査期間 2026年7月
※本調査は「令和8年熊本地震」の発生前に実施したものであり、今回の地震を受けた回答ではありません。
※その他詳細なデータについては、日本赤十字社広報室にお問い合わせください。
※本調査を引用する場合は、「2026年日本赤十字社調べ」もしくは「日本赤十字社『災害時の避難に関する意識・実態調査(2026年)』」とご記載ください。
日赤の取り組み
日赤は、災害時の救護活動に加え、平時から防災・減災に関する普及啓発活動を全国で展開しています。とっさの手当や日常生活での事故防止など、健康安全に関する知識や技術を学ぶ講習の実施をはじめ、自治体や学校、企業などと連携した防災教育の取り組みなどを通じて、地域の共助力と一人一人の自助力の向上を支えています。
■ 赤十字防災セミナー新規カリキュラム 「大雨・台風の避難スイッチ」
日赤では、数々の災害で活動してきた教訓を踏まえ、「赤十字防災セミナー」を全国で開催しています。2026年4月には、防災セミナー新規カリキュラム 「大雨・台風の避難スイッチ」を開発しました。日頃からの準備の大切さを理解し、“判断の迷いや先送り”を減らすことで、いざという時、早めに避難の準備を始める「避難スイッチ」を入れ、自ら命を守る行動につなげられることを目指すとともに、セミナーの受講で終わることなく、自治体などの防災施策や地域の取り組みへの橋渡しとなることも併せて狙います。随時実施しておりますので、ご取材を希望される場合はご連絡ください。
参考リリース: https://www.jrc.or.jp/press/2026/0522_053363.html

■「令和8年熊本地震」の活動状況
日赤は、発災直後から医療救護活動を開始し、現在はこころのケア活動も行っています。
また、タオルケットや安眠セットといった救援物資を配布するなど、被災された方々のいのちと健康を守るための活動を続けています。今後も、全国の支部・施設の職員、そして多くの赤十字ボランティアが一丸となり、赤十字の総力を挙げて被災地のニーズに応じた活動を行ってまいります。
災害救護速報を随時更新しております。
日赤Webサイト: https://www.jrc.or.jp/domestic_rescue/2026kumamotoearthquake.html

【担当者のコメント】日本赤十字社 事業局 救護・福祉部 防災業務課 山地 智仁

今回の調査結果から、災害時に命を守るためには、避難所や避難情報を「いざという時に知る」のではなく、平時から避難の判断基準や避難先、避難生活について理解し、自分ごととして備えておくことが重要です。
防災は特別なことではありません。暮らしの延長線上にある小さな行動の積み重ねであり、隣近所と顔をあわせ、会話を交わすことも、災害時に支えあう基盤となる大切な一歩です。日赤で行う防災セミナーはその入り口です。
防災が「もしも」の話ではなく、日常の習慣として根付いていくよう、社会全体の行動変容を後押しする役割を、自治体や関係機関と共に果たし続けていきたいと考えています。
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