海外展開は6割超が前向きも、国内市場への依存が強い傾向。今後3年間では新規展開と既存市場の深耕の両面で前向きな動きが広がる兆し。「2025年度 経営者の成長投資アンケート(グローバル)」結果を発表
日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部などを対象に実施した「2025年度 経営者の成長投資アンケート(グローバル)」の結果を発表します。
1.調査結果サマリー
(1)海外事業を展開している、あるいは今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超える結果に。実際に「展開している」と回答した企業は43.2%、「現在は展開していないが、今後取り組みを検討中」と回答した企業は18.3%となり、前向きな姿勢がうかがえます。
(2)海外事業を展開している企業において、売上高全体に占める海外事業の売上高比率は「10%未満」と回答した企業が60.3%と最多。売上構成のうえでは依然として国内市場への依存が強く、海外事業は補完的な位置づけにとどまっている企業が多いことが明らかとなりました。
(3)2025年度および今後3年間における海外進出・拡大に関する方針は、「海外進出や拡大の予定なし」と回答した企業が、2025年度は44.4%、今後3年間では40.2%となりました。一方で、「既存海外市場での事業拡大」とした企業は2025年度で32.5%、今後3年間でも33.1%と、安定した推移を見せており、海外進出に対する企業の意識は一様ではないものの、今後の3年間においては新規展開と既存市場の深耕の両面で、前向きな動きが徐々に広がる兆しがうかがえます。
2.各データ詳細
(1)海外事業を展開している、今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超える結果に。

海外事業を展開している、あるいは今後取り組む意向を持つ企業は全体の6割を超えており、一定の広がりを見せています。実際に「展開している」と回答した企業は43.2%、「現在は展開していないが、今後取り組みを検討中」と回答した企業は18.3%となり、前向きな姿勢がうかがえます。一方で、「今後も取り組む予定はない」とする企業は38.5%存在しており、海外展開に対する関心や取り組み状況には企業間で開きがあるのが現状です。
(2)半数以上が、海外事業推進のための具体的な施策は「現地パートナー(販売代理店含む)との業務提携」と回答!現地ネットワークの活用を図っている。

海外事業を展開する企業は、その推進にあたり多様な手法を組み合わせています。なかでも、最も多く挙げられた取り組みは「現地パートナー(販売代理店含む)との業務提携」(56.2%)であり、半数以上が現地ネットワークの活用を図っていることが分かります。前年度(50.3%)からも増加しており、信頼できるパートナーとの連携が海外市場での展開を加速させる鍵と認識されていることがうかがえます。次いで「現地法人設立(生産拠点含む)」(49.3%)となり、こちらも前年(37.9%)から大幅に増加となりました。販売拠点や製造拠点の現地化により、事業基盤を強化する動きが加速しており、サプライチェーンの再構築や、現地ニーズへの迅速な対応を目的とした「拠点の自前化」が進行している状況がうかがえます。
(3)海外事業の業績見通しは約4割が「増収増益」と回答。

海外事業の業績見通しについて、「増収増益」と回答した企業は39.7%と最も多く、前年度(40.6%)とほぼ同水準にとどまりました。企業の約4割が成長を維持すると見込んでおり、一定の堅調さがうかがえます。一方、「横ばい」と回答した企業は34.2%と前年(26.1%)から8.1ポイント上昇し、業績は横ばい傾向が強まっています。「減収減益」は11.0%、「減収増益」は4.1%であり、大幅な業績悪化を見込む企業は一部にとどまる結果となりました。また、「増収減益」は1.4%にとどまり、前年の9.4%から大きく減少となりました。
(4)約7割が、円安によるプラスの影響は「為替差異による利益増加(円)」と回答。

円安によるプラスの影響として最も多く挙げられたのは、「為替差異による利益増加(円)」であり、69.0%に達しました。前年(51.0%)から大きく上昇しており、会計上の為替差益が企業収益に寄与している状況がうかがえます。次いで「輸出量増加に伴う売上増加」(48.3%)、「為替差異による海外販売価格(現地通貨)の低下と売上増加」(27.6%)が続き、いずれも円安による価格競争力の向上を通じて、売上増加につながっています。一方で、「海外現地での新規顧客・販路拡大」(13.8%)や「インバウンド増加による売上増加」(3.4%)は前年より大きく減少しており、円安による短期的な利益押し上げに一服感がうかがえます。構造的な需要の拡大にはつながっていないのが実態です。
(5)8割以上が、円安によるマイナスの影響は「原材料/燃料費高騰によるコスト増加」と回答。

円安によるマイナスの影響として最も多かったのは、「原材料/燃料費高騰によるコスト増加」(82.6%)となりました。次いで、「コスト増加分を価格転嫁できないことによる減益」(43.5%)、「価格転嫁による売上減」(34.8%)と続き、仕入コストの上昇が企業の利益を圧迫していることが分かります。円安が収益性に与える負の影響が、コスト構造へのダメージとして表れる結果となりました。特に輸入依存度の高い製品や原材料を扱う企業にとっては深刻な課題です。その一方で、「海外拠点運営の難航(維持コストの利益圧迫)」(8.7%)、「予定していた海外進出・拡大の停滞」(4.3%)、「外国人人材の流出・採用難」(4.3%)は前年から大きく減少しており、円安による人材・運営面での混乱には沈静化の兆しが見てとれます。
(6)売上高全体に占める海外事業の売上高比率は「10%未満」との回答が6割以上に。売上構成のうえでは依然として国内市場への依存が強い。

海外事業を展開している企業において、売上高全体に占める海外事業の売上高比率を尋ねると、「10%未満」と回答した企業が60.3%と最多となりました。売上構成のうえでは依然として国内市場への依存が強く、海外事業は補完的な位置づけにとどまっている企業が多いことが明らかとなりました。
一方、「10~30%」の企業は23.3%となり、一定の収益貢献が見られる層として位置づけられます。海外事業が本格化し始めている段階であり、拠点展開や取引国の拡大など、今後の成長の起点となり得るフェーズにあると推察されます。また、「31~50%」と回答した企業は4.1%にとどまり、海外売上比率が全体の半分近くに達している企業はごくわずかとなりました。この層は、国内外の市場環境に応じて柔軟にポートフォリオを組み替えることが求められる立ち位置にあります。
(7)優先して取り組むべきテーマは「グローバル人材(事業推進者)の確保」が半数以上と最多!

海外事業戦略を検討・推進する上で優先的に取り組むべきテーマは、「グローバル人材(事業推進者)の確保」(52.1%)が最多に。前年(60.2%)からやや減少したものの、引き続き最重要課題として位置づけられています。次いで、「現地パートナー・アライアンス先の開拓」(46.6%)となり、現地での営業・調達・流通などにおいて外部パートナーとの連携を深める必要性は、海外事業の現実的な推進手段として認識されていることがうかがえます。
一方で、2024年度には上位を占めていた「各国の規制や法制度、商慣習への対応」(2024年度52.8%)や「グローバル市場の理解」(2024年度52.2%)が、2025年度にはそれぞれ34.2%、23.3%へと大きく減少しました。制度理解や市場リサーチといった前提作業がある程度進んだ企業が増えたものの、これは実行段階へシフトしていることが背景にあると考えられます。また、「グローバル市場での認知度の向上」(21.9%)、「地政学的リスクに対応するサプライチェーン/物流網の構築」(11.0%)、「事業・組織のローカライズ」(11.0%)といった項目も、前年から大きく低下。テーマの優先順位が“環境整備”から“パートナーの確保”へと変化している様子がうかがえます。
(8)4割以上が「海外進出や拡大の予定なし」と回答。海外進出・拡大に関する方針は二極化の傾向。

2025年度および今後3年間における海外進出・拡大に関する方針を全体で見ると、企業のスタンスには二極化の傾向が見られます。まず、「海外進出や拡大の予定なし」と回答した企業は、2025年度において44.4%、今後3年間では40.2%にのぼり、依然として約4割の企業が消極的な姿勢を示しています。
一方で、海外事業の展開や強化に前向きな動きを示す企業も着実に存在しています。「既存海外市場での事業拡大」とした企業は2025年度で32.5%、今後3年間でも33.1%と、安定した推移を見せており、すでに進出している地域でのプレゼンス向上や取引拡大を志向する傾向が続いています。「新規海外市場への進出」との回答も2025年度は26.0%、今後3年間では34.3%に上昇しており、新たな成長機会を求める企業の意向がうかがえます。海外進出に対する企業の意識は一様ではないものの、今後の3年間においては新規展開と既存市場の深耕の両面で、前向きな動きが徐々に広がる兆しがうかがえます。
3.総括・提言
(1)「選択と集中」による資源配分の最適化
特に中堅・中規模企業においては、限られた人材・資金を分散するのではなく、自社の強みと外部環境を照らし合わせた上で、優先すべき国・地域や事業領域を明確にし、そこに集中投資する姿勢が求められます。これにより、競争優位性を確立し、効率的な資源配分を実現することが可能となります。
(2)「中長期視点」での事業モデルの構築
為替変動などの外部要因に依存せず、現地市場での価値提供、ブランド構築、サプライチェーン強化を通じて、持続的に利益を生む構造を目指すことが求められます。短期的な成果にとらわれず、中長期的な視点で事業モデルを構築することで、海外事業の安定性と成長性を確保できます。
(3)経営計画の策定
選択と集中の方針や中長期的な事業モデルの構築を、具体的な経営計画に落とし込むことが重要です。市場調査や競合分析を基に、目標設定、予算配分、リスク管理を明確化し、経営陣が一貫性を持って意思決定を行える仕組みを整備する必要があります。また、計画の進捗を定期的にモニタリングし、柔軟に修正を加える体制を構築することが求められます。
(4)経営計画を着実に実行するためのアクションプランの作成
経営計画を実行に移すためには、具体的なアクションプランを策定し、現場レベルでの実行可能性を確保することが重要です。例えば、現地パートナーとの連携強化、専任人材の配置、海外拠点における意思決定プロセスの整備など、実務レベルでの具体的な施策を明確化する必要があります。さらに、実行段階での課題を迅速に解決するためのPDCAサイクルを徹底することが求められます。
(5)「グローバル人材」の育成
海外事業の中核を担う即戦力の採用を進めることも重要ですが、既存社員の育成も重要視する必要があります。現地事情を理解し、多文化環境でのマネジメントが可能な人材を計画的に育てていくことが、企業のグローバル展開力を左右します。特に中堅・中規模企業では、外部機関の活用と内製化を組み合わせた柔軟な人材開発戦略が求められます。これにより、組織全体でのグローバル対応力を強化することが可能となります。
〈総括・提言 執筆者プロフィール〉

株式会社タナベコンサルティング 常務取締役 村上 幸一
ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験後、当社に入社。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを数多く手掛けている。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導し、絶大な信頼を得ている。中小企業診断士。

株式会社タナベコンサルティング グローバルコンサルティング
マネジャー 御舩 浩次郎
国内大手IT企業にて様々なエンタープライズ向けのアカウントおよびソリューションセールスを担当。国際部門では米国グループ会社へ出向し、現地日系企業のITインフラのサポート・改善に従事。帰国後、米国スタートアップの日本拠点立ち上げに参画し、マーケティング・新規顧客開拓を実施。当社入社後は、コンサルティングサービスの海外展開に向け、グループ各社との連携・社内プロジェクトの推進に係る全体総括を担当。
4.関連リンク
・「2025年度 経営者の成長投資アンケート(グローバル)」資料ダウンロードページ
URL:https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/document/detail73.html
5.調査概要
[調査対象] 全国の企業経営者、役員、経営幹部など
[調査期間] 2025年3月3日~2025年3月31日
[調査エリア]全国
[有効回答数]計169件
※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
タナベコンサルティンググループ(TCG)について
TCGは、1957年創業の東証プライム市場に上場する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、未来の社会に向けた貢献価値として「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを掲げております。ピースマインドとの資本業務提携により、グループ8社、約900名のプロフェッショナル人材を有する経営コンサルティンググループとなります。国内外の中堅企業を中心とした大企業から中規模企業のトップマネジメント(経営者層)を主要顧客とし、創業以来17,000社以上の支援実績を有しております。
トップマネジメントアプローチで経営戦略の策定からプロフェッショナルDXサービスによる経営オペレーションの実装・実行まで、経営の上流から下流までを一気通貫で支援する唯一無二の経営コンサルティングモデル「チームコンサルティング」を国内地域密着のみならず、グローバルへと展開しております。

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