【提言】人口減少時代の地域レジリエンス

政策シミュレーションから見える、小規模自治体が「賢く縮む」ための必要条件

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(代表取締役 社長執行役員:籔田健二、以下MRI)は、人口減少下でも将来にわたって暮らしと機能を持続できるようにする、すなわち「地域レジリエンス」を高めるためには、「賢く縮む」という考え方が必要であると考えています。そこで、人口減少が進む実在の10自治体を対象に、この考え方を具体化した複数の居住政策オプションをシミュレーションし、行政コスト、生活利便性、生活安全性などの観点から、その効果と将来世代への影響を比較しました。その結果を踏まえ、「賢く縮む」を実現するために必要な4つの条件を提言として取りまとめました。

1. 背景

人口減少・高齢化が進む地域では、税収や担い手の減少によって、今後、行政・生活サービスをこれまでと同じ範囲、同じ方法で提供し続けることが難しくなります。加えて、道路、上下水道、公共施設などのインフラも老朽化するため、維持管理・更新作業の頻度が増すことも予想されます。このため、特に小規模自治体では、地域の将来を人口減少のなりゆきに委ねるのではなく、限られた人員や財源をどこに投入し、どのインフラやサービスを維持し、何を見直すのかという選択に平時から向き合っていくことが求められます。

MRIでは、こうした問題意識のもと、人口減少の現実を前提に、暮らしとサービスを持続可能な形へと見直していく「賢く縮む[1]」という考え方に着目し、人口減少下における地域レジリエンスのあり方を検討しました。

2. 本提言の概要

研究では、この「賢く縮む」方向性を具体的な政策に落とし込むため、人口5万人未満の実在する10市町を対象に、複数の居住政策オプションについて数値シミュレーションを行いました。その結果、いずれの政策オプションにも効果と負担の両面があり、すべての評価軸で優位となる「万能解」は存在しないことが明らかになりました。

一方で、どのような小規模自治体にとっても、「賢く縮む」ために共通して求められる条件があることも明らかになりました。具体的には以下の4つです。

① コンパクト化の発想から、面的サービスの優先提供エリアを定めるという発想へ

  • 人口や施設をどこに集中させるかではなく、道路・水道、ごみ収集、公共交通などの面的サービスを将来どの範囲まで優先的に維持するのかを明確にする「居住推奨エリア」を設定する。

  • 居住推奨エリア外に住むことも選択肢とし、分散型インフラ[2]やICT[3]、オンデマンドサービス[4]などを活用した「自立分散居住」の支援策を組み合わせる。

 図表1:立地適正化と本提言における居住推奨エリアの考え方の比較

*1 出所:国土交通省、立地適正化計画の手引き【基本編】、2025

*2 出所:国土交通省、立地適正化計画の取組状況に関する全国的傾向 アウトプット指標(作成市町村数)について、p.4 https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/content/001766045.pdf (閲覧日:2026年7月20日)

三菱総合研究所作成

 

② 土地利用の線引きから、住民の住み替え支援へと政策の軸足を移す

  • 過疎エリアに暮らす一部の住民が、人生の節目に合わせて転居し、地域全体の居住エリアを段階的に縮小することで、住民の生活の安全性や利便性を高めながら地域全体の持続可能性を高めることができる。

  • 行政は土地利用のゾーニングや居住誘導にとどまらず、住民一人ひとりの将来の住まい方に長期的に伴走する「住まいの計画」へと軸足を移す。

 図表2:過疎エリアからの段階的な転居 

三菱総合研究所作成

③ 過疎化する前から、地区単位の土地管理方針と体制を準備する

  • 居住者がいなくなった土地への一筆ごとの事後対応に終始するのではなく、過疎化・無住化が進む前から、地区単位で将来の土地管理方針を定める。

  • 土地所有者や地域とのつながりが残っているうちに、利活用、粗放管理、自然への還元などの方針を共有し、その管理を担う体制をあらかじめ準備する。

 図表3:過疎エリアの土地管理方針のイメージ 

三菱総合研究所作成

④ 将来世代への影響の考慮を、行政の意思決定プロセスに義務づける

  • 現在の住民にとって合理的な判断が、30~40年後の地域を担う世代にとっても望ましいとは限らない。将来世代への負担の先送りを防ぐため、政策が将来の地域や住民に与える影響を可視化し、現在の意思決定の中で必ず考慮する仕組みを設ける。

  • 将来世代への配慮を努力目標にとどめず、政策評価や政策設計・選択などの行政プロセスに組み込み、長期的な視点から継続的に検証・見直しを行う。

3. 今後の予定

MRIは今後、政策シミュレーションの精緻化に加え、無住化が進む土地の管理、技術・人材・広域連携によるサービス供給力の補完、100年先を見据えた「地域レジリエンス経営」の理論化を進めます。政策提言、コンサルティング、ソリューション提供を通じて、自治体や地域住民が人口減少に向き合い、持続可能な地域を将来に残すための選択と行動を支援します。

レポート全文:

人口減少時代の地域レジリエンス [2.4MB]

https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/policy/r17jk4000000h7e2-att/nr20260924pec.pdf

[1] 出所:OECD, Shrinking Smartly and Sustainably: Strategies for Action,2025, p.17. https://www.oecd.org/en/publications/shrinking-smartly-and-sustainably_f91693e3-en.html (閲覧日:2026年9月16日)

[2] 太陽光発電・蓄電池や小規模な給排水設備、浄化槽など。

[3] オンライン診療システム、遠隔見守りシステムなど。

[4] オンデマンドバス、タクシー配車アプリなど。

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会社概要

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URL
https://www.mri.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都千代田区永田町2-10-3
電話番号
03-5157-2111
代表者名
籔田 健二
上場
東証プライム
資本金
63億3624万円
設立
1970年05月