【慶應義塾】ペプチド模倣高分子による新規抗体精製法の開発
-抗体医薬品の課題であった精製コストの削減につながる成果-
慶應義塾大学大学院理工学研究科の出浦浩一(修士課程1年)、同大学理工学部の蛭田勇樹准教授、および同大学薬学部の森脇康博専任講師らの研究グループは、プロテインAの抗体結合領域を模倣した合成高分子を高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の表面に修飾し、pH依存的な抗体医薬品の保持・溶出挙動を評価しました。その結果、本充填剤がプロテインAを修飾したカラム充填剤と同様に、中性pHで抗体を保持・酸性pHで抗体を溶出することを明らかにし、低コストかつ安定性の高い抗体精製手法として応用可能であることを見出しました。
抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患に対する画期的な治療薬として近年ますます需要が高まっています。抗体の精製コストは、抗体医薬品の総製造コストの6割程度を占めており、低コスト化が急務となっています。また、従来の精製法に用いられているプロテインAカラムには、低い安定性、高コストといった欠点を抱えています。また、低いpH条件での溶出は抗体活性の損失を引き起こす可能性が懸念されています。本研究では、タンパク質と比較して安価で安定性の高い合成高分子によってプロテインAの機能を模倣し、従来の精製法と同様の操作で抗体精製に応用しました。プロテインAの抗体結合領域(Z34C)のアミノ酸配列および、抗体との結合に重要なアミノ酸であるヒスチジンの機能を模倣し、プロテインAカラムと同様にpH依存的な抗体の保持・溶出挙動を合成高分子に付与しました。さらに、穏やかな溶出条件(pH 5)の下、ハイブリドーマ細胞培養上清から80%を超える回収率で抗体を精製することに成功しました。加えて、100回連続の精製や半年間の使用後も再現性の高い回収率を維持しており、再利用性や耐久性を有することが確認されました。以上の結果から、従来法に比べて安価で耐久性が高く、活性を維持したまま抗体精製を実現できる可能性が示されました。この技術は、市場規模の拡大を続ける抗体医薬品分野において、製造コスト削減に大きく寄与することが期待されます。
本研究の成果は、2024年11月26日に、アメリカ化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載されました。
▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/1/23/250123-2.pdf
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像