【武蔵野大学・株式会社市萬】脱炭素化の共同研究賃貸不動産物件のCO₂排出量削減効果の可視化

賃貸不動産の原状回復(ビニールクロスの張り替え)における脱炭素化を実証

学校法人武蔵野大学

武蔵野大学(東京都江東区、学長:小西 聖子)工学部サステナビリティ学科の磯部 孝行准教授と株式会社市萬(東京都世田谷区、代表取締役:西島 昭)は、5月21日に脱炭素化社会の実現に向けた共同研究「賃貸不動産の原状回復における脱炭素化の研究“ビニールクロス編”」の研究成果を発表しました。

本研究では、賃貸不動産物件の入退居時に大量に発生するビニールクロスの張り替えによるCO₂排出量の数値化、張り替え減などの対策によるCO₂排出量の削減効果を検証するものです。削減効果を数値化することで、不動産業界における環境対策への取り組みの推進を目的としています。

【研究の背景】

2050年カーボンニュートラルに向けた中間目標として、家庭部門は2030年までにCO₂排出量66%削減に向けて早急な対応が求められています。新築のマンションや戸建住宅などは、最新の省エネ設備などの導入により環境対策が進む一方、日本の住宅の40%以上は2000年以前に建てられた、築20年以上の“築古物件”であり(※1)、それらの物件に対しても同様に環境対策に取り組むことが喫緊の課題となっています。

本研究では、賃貸不動産の入退居時に大量発生するビニールクロスの張り替えによるCO₂排出量を数値化し、削減方法とその効果を検証しました。

※1 国土交通省 令和6年度住宅経済関連データ「建築年代別の住宅ストック総数」

https://www.mlit.go.jp/common/001081905.pdf

【研究概要】

対象物件を選定し、クロスの張り替え回数や張り替え部位の削減を検討しました。図面情報に基づき壁紙の概算量を数値化し、すべて張り替えた場合と、張り替えの削減対策をとった場合のCO₂排出量を比較し、環境負荷の低減効果の検証をおこないました。

■対象物件1993年築RC造5階建、3DK、専有面積51.40m2入居期間:2020年11月~2024年10月

【研究方法】

1. BIM (Building Information Model※2)に基づく壁紙量の推計

2. 貼替計画の住戸に関する図面情報に基づき、BIMモデルを作成、壁紙の概算量を集計

3. 壁紙張り替えの最適化(環境負荷)の検証

4. 壁紙の張り替えについて、全面張り替え、部分張り替えのシナリオを整理し、壁紙張り替えの環境評価ツール(試作版)により、環境負荷の低減効果を検証

※2 BIM (Building Information Model): 建物の設計、施工、維持管理など、建築物のライフサイクル全体を通じて、建物に関する情報を統合的に管理する手法

【研究成果】

賃貸住宅は居住者が変わることで壁紙や畳などの内装材の更新、設備など更新されます。分譲住宅と比較すると居住者が頻繁に変わることから、資材の更新頻度も高いことが想定されます。そこで、株式会社市萬と共同で、まずは賃貸住宅で更新される壁紙に着目し、壁紙の張り替えに特化した評価ツールを開発しました。(図1)

図1 壁紙張り替えの評価ツールへの入力と評価結果例

本評価ツールを用いて、2024年12月~2025年1月の期間において実際の壁紙張り替えの工事現場の調査(図2)を行い、全面張り替えから部分張り替えにすることで壁紙の更新に係るCO₂排出量が18.4kg-CO₂削減でき、25%削減されるとの評価結果が得られました。さらに、この検証結果より1m2クロスの張替を抑えることで0.412kg-CO₂/m2が判明いたしました。

賃貸住宅では居住者の変更に伴い、壁紙以外の資材も更新されます。今後は、他の更新資材も含め、評価ツールの拡充を検討していく計画です。

図2 壁紙の張り替え工事の実測調査
図3 評価ツールを用いた壁紙張り替えの評価結果

【共同研究者】

■武蔵野大学 工学部サステナビリティ学科 准教授 磯部 孝行

2015年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程修了。2016年より武蔵野大学工学部環境システム学科に着任。2023年より武蔵野大学工学部サステナビリティ学科に着任。建材のリサイクルと建物のライフサイクル(建設、運用、廃棄)に係る環境を捉え、環境評価システムなどを中心に研究に従事している。日本建築学会の地球環境委員会内、LCA小委員会において、2023年3月まで主査として活動。現在は同委員会の幹事として活動している。

■株式会社 市萬

「私たちの関わるすべての不動産を優良資産に」という事業目的のもと、賃貸不動産管理、不動産売買仲介、底地管理、不動産有効活用コンサルティング、相続対策コンサルティングの5つの専門領域を通じ、不動産保有者の資産優良化をワンストップで実現する会社です。不動産が抱える多様な問題を解決し、優良化する取り組みを通じて、不動産保有者様だけでなく、地域の皆様が、世代を超えて安心して暮らせる地域社会を実現します。

※本リリースに関する取り組みは、以下のSDGs目標に貢献しています。

目標3:すべての人に健康と福祉を

目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

目標11:住み続けられるまちづくりを

目標12:つくる責任つかう責任

目標13:気候変動に具体的な対策を

目標15:陸の豊かさも守ろう

【武蔵野大学について】

武蔵野大学有明キャンパス

1924年に仏教精神を根幹とした人格教育を理想に掲げ、武蔵野女子学院を設立。武蔵野女子大学を前身とし、2003年に武蔵野大学に名称変更。2004年の男女共学化以降、大学改革を推進し13学部21学科、13大学院研究科、通信教育部など学生数13,000人超の総合大学に発展。2019年に国内私立大学初のデータサイエンス学部を開設。2021年に国内初のアントレプレナーシップ学部を開設し、「AI活用」「SDGs」を必修科目とした全学共通基礎課程「武蔵野INITIAL」をスタートさせる。2023年には国内初のサステナビリティ学科を開設。2024年には創立100周年を迎え、世界初のウェルビーイング学部を開設した。2050年の未来に向けてクリエイティブな人材を育成するため、大学改革を進めている。

武蔵野大学HP:https://www.musashino-u.ac.jp/

【関連リンク】

■ 武蔵野大学 工学部サステナビリティ学科:https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/human_sciences/human_sciences/

■株式会社 市萬:https://ichiman.co.jp/

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会社概要

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URL
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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都江東区有明三丁目3番3号
電話番号
-
代表者名
西本 照真
上場
-
資本金
-
設立
1924年04月