競争や勝ち負けではなく、子供の成長のための中学受験を。教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏と、「知窓学舎」塾長・矢萩邦彦氏による中学受験を控えた親子の必読書。『超中学受験論』が本日発売!
株式会社⼆⾒書房は『超中学受験論 偏差値 学歴 競争社会を超えた「成長と充実」へ』(著:矢萩邦彦/おおたとしまさ)を2025年6⽉4⽇(水)に発売いたします。

「グローバル化」「AI時代」が盛んに叫ばれる昨今。激動・激変の時代においてわが子にどんな能力が身につけさせればいいのか。そんな親の不安を反映するかのように、過熱しているのが中学受験。
その親としては「いい学校を出て、いい会社に就職する」ためのチケットが中学受験という心理があるのかもしれない。だが、はたしてそれが本当に子どもが望む幸せなのだろうか。そして、中学受験に失敗した子どもは、幸せになれないのだろうか――
中学受験のエキスパートである二人の著者が中学受験をめぐるさまざまな問題、教育の問題、そして社会の問題までを語り尽くす。中学受験に少しでも関心がある保護者、必読の一冊。
■はじめに
「ひき返したほうがいいような気がするのです。何もかもむだじゃないでしょうか」
「一歩進むごとにわたしの心の憂いが大きくなってゆくのです。もう望みはありません」
「苦しくて苦しくて。だめです、もう進めません」
そう言って、愛馬アルタクスは「憂いの沼」に沈んでいってしまいました。虚無と戦う勇者アトレイユとの過酷な旅の途中でした。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』(訳:上田真而子・佐藤真理子)の有名な場面です。映画「ネバー・エンディング・ストーリー」の原作といえばおわかりいただけるでしょう。
中学受験という大冒険の途中で、まったく同じ状況に陥っている親子も多いのではないでしょうか。まさに「中学受験沼」です。いま、中学受験沼はますます黒く、深く、重くなっています。辺りには濃いもやまで立ちこめています。僕たちは、それぞれの立場で唇を噛みしめながら、その様子をじっと見守ってきました。
残念ながら、沼がどんどん邪悪になっていくのを止める手立ては、僕たちにはありません。しかも、大変申し訳ないのですが、本書を読んでも、お子さんの偏差値が上がったりやる気がみなぎったりはしません。でももっと大切なことを、僕たちは語り合いました。憂いに囚われずに、親子そろって「沼」を「超」えていく術です。
申し遅れました。「僕たち」の一人は、矢萩邦彦さん。大手中学受験塾に長く勤めたのち、現在では自身で「知窓学舎」という教室を構えています。そして私は、子ども好きな、しがない物書きです。二人は、立場もキャラも考え方も全然違います。でも結局同じ方法論にたどりつきました。読者の皆さんも、私たちの対話に加わるつもりで本書を読み進めてみてください。一筋縄な本ではありません。脱線したり、話が飛んだり、回り道したりします。中学受験という過酷な大冒険だって、一本道ではありませんから。
沼に沈みきってしまう直前に、愛馬アルタクスは勇者アトレイユに言います。
「ご主人さまはおひかりを持っておいでですから、それが守ってくれるのです」
読者の皆さんにも「おひかり」があります。それをたしかめる旅に、さあ、出発です。
おおたとしまさ
■目次
はじめに
序章 中学受験に失敗はない。そして敗者もいない
親の適切な寄り添いがあれば中学受験は一生の財産になる
歳の子どもに偏った価値観が刷り込まれる危険性
「成長」と「充実」が二大キーワード
「競争」「詰め込み」「強制」を極力排除する
「正解のない問い」を投げかける意味
「リテラシー」の意味を考えてみる
ルポライター・おおたとしまさ、教育者・矢萩邦彦の違い
本気で向き合っている大人と接することが何よりの学びとなる
中学受験の負の側面
第1章 「学力」と「身長」って、何が違う?
「今の世の中って、そもそも良い世の中ですか」
「正解依存症」というループ
学力が低くて、何が問題ですか?
12歳での中学受験の怖ろしさ
グロテスクなSNS
「いいね」は麻薬でしかない
スーザン・ソンタグが提示した「行動で伝える」手法
第2章 「リベラル・アーツ」の重要性
体験格差をお金で解決することの無意味さ
地域社会の消失が子どもの放課後体験を奪う
東洋的リベラル・アーツ孔子と――荘子の考え
子どもの心に響く授業
「無料塾」の本質は何か
ゲームや遊びから何を学ぶか
「成長のためのリスク」という認識はもはや通用しない
第3章 塾選びも学校選びも基準は同じ
親の情報リテラシーの重要性
重要なのは指導スキルではなく、非言語的な影響力
学習体験が子どもの人生に及ぼす影響
真贋はパンフレットからではわからない
第一志望校に合格できなくても、人生の奥義が学べる
中高時代の思い出
失敗は大きな糧となる
教科書とは英知がフリーズドライされたもの
教科書の行間に潜むドラマに気づくこと
授業の良し悪しはテストで良い点数を取らせることじゃない
学校選びとは自分たちを知ること
広島学院のスーパー用務員さんの美しさ……
プラトンによって救われる
主体的であることは何よりも重要
個性や特性を発揮できれば、必ずニッチはある
私学は美学である
第4章 中学受験の理想と現実
中学受験のやり方を間違えたら元も子もない
「置かれた場所で咲きましょう」というメンタル
本当の恐怖を味わうという経験をすることが中学受験
大手塾の構造的な問題
生徒全員と対話する授業
「中学受験の価格破壊」とブラックな現場
「違和感」が軽視される風潮
中学受験の本来あるべき姿
中学受験は親がイニシアティブを握っている
麻布→上智は落ちこぼれ?
大量消費社会の勝者になるための手段として教育が使われる
生徒のやる気はクラスに伝染する
豊かな青春時代を謳歌できる中高一貫校
世界的にも稀な日本の「高校受験」のシステム
第5章 親が願う幸せ、子どもにとっての本当の幸せ
学歴や偏差値で評価されない人生がある
親の自己不全がもたらす子どもの不幸
「自分は生きている」「自分は幸せなんだ」という確固たる実感
「これからの時代を生きる子どもに必要な能力」論争について
なぜ、中学受験の道を選んだのか?
好きなことに没頭して磨かれた感性は必ず生かせる
選択したものを正解にしようとするマインド
親が子どもの自己像を歪めてしまう
中学受験直前期、親として何ができるか?
子どもの幸せを決めるのは親ではない
ピュアな小学生のマインドはいい方向に変えることができる
フェアな父親でありたい
数十年経っても消えない傷
凝り固まった親の信念を変えることは難しい
自身の経験でしか判断できない了見の狭さ
中学受験の勉強は、それ自体にさほど意味はない
親が成長することで気づくことがたくさんある
幸せになる能力は誰もが持っている
親の不安が子どもに全部投影される
終章 なぜ、中学受験をするのか
大合格者ランキングが意味すること
「別に東大じゃなくてもいいんじゃね?」という価値観の多様化
「東大合格者数ランキング」のつくられ方
「学力」「人格」「収入」がセットで語られることの危うさ
中学受験過熱の諸悪の根源
思春期の子どもたちは洗脳されやすい存在
「教育格差」をめぐる議論の気持ち悪さ
家庭における合意形成は重要
高校受験の負の側面
多感な時期、思春期、反抗期を存分に謳歌できる6年間の一貫教育
偏差値的な尺度で生徒が集められる社会制度の問題点
「中学受験」と「探究」について考える
学校との出会いを通して「自分を知る」ことが学校選び
おわりに
■著者情報
おおたとしまさ
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートでの雑誌編集を経て独立後、数々の育児誌・教育誌の企画・編集に係わる。現在は、幼児教育から中学受験、思春期教育、ジェンダー教育、教育虐待、不登校、教育格差問題まで多岐にわたるテーマで現場取材および執筆活動を行っている。テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『勇者たちの中学受験』『ルポ塾歴社会』など90冊以上。
矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)
知窓学舎 塾長/多摩大学大学院 客員教授/株式会社スタディオアフタモード 代表取締役CEO/教養の未来研究所 所長/文部科学省マイスター・ハイスクール伴走事業 スーパーバイザー/LIXIL住宅研究所「アイフルホーム」スーパーバイザー/一般社団法人リベラルコンサルティング協議会 理事/常翔学園中学校・高等学校STEAM特任講師/ラーンネット・エッジ「自由への教養」カリキュラムマネージャー/Yahoo!ニュース エキスパートオーサー・公式コメンテーター。
1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積み、ひとつの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験と多様な企業へのコンサルティング経験を活かし「すべての学習に教養と哲学を」をコンセプトに「探究×受験」を実践する統合型学習塾『知窓学舎』を運営。大学院ではMBAコース「実践リベラルアーツ論」を担当している。学校・民間を問わず多様な現場で授業・講演・研修・監修顧問などを展開、企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅・教育・キャリア・メディアのトータルデザインに取り組んでいる。著書に『正解のない教室』『子どもが「学びたくなる」育て方』『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本』『先生、この「問題」教えられますか? 教育改革時代の学びの教科書』など。
■書籍概要

超中学受験論 偏差値 学歴 競争社会を超えた「成長と充実」へ
著者:矢萩邦彦 /おおたとしまさ
定価:1,700円+税
判型:四六判
ページ数:304ページ
ISBN:978-4-576-25036-6
発売日:2025年6月4日
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■関連リンク
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