吉野家の朝定食はパン食に比べ脳活動を活性化する ~20代から50代の男性50人対象 朝食摂取比較試験報告~
株式会社吉野家 東北大学ナレッジキャスト株式会社 株式会社NeU
1. 朝食の「質」で脳活動と自律神経活動がどう変わるかを調べるために、20代から50代の男性50人を対象に全8週間のランダム化クロスオーバー試験を行いました。
2. 吉野家の朝定食を摂取した人は、市販のパン食を摂取した人に比べ、認知課題実施時の「脳血流量」が統計的有意に増加し、脳活動が活性化することを確認しました。
3. また、吉野家の朝定食を摂取した人は、朝食摂取前に比べ摂取後に「心拍数」が統計的有意に増加することを確認しました。これは自律神経における交感神経が優位になることを示し、脳を含む身体の臓器の働きが活発になることを示すものです。
概要
株式会社吉野家(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河村泰貴、以下吉野家)は、東北大学100%出資のコンサルティング会社東北大学ナレッジキャスト株式会社および東北大学と株式会社日立ハイテクによる脳科学カンパニー、株式会社NeU(ニュー)と共同で、朝食摂取頻度が高い人ほど「幸せ度」が高いことを明らかにしています。
一方、朝食の「質」が「幸せ度」にどのように影響するかの評価は、食事行動の要因の多さのため容易ではありません。今回の試験では、東北大学の認知脳科学研究の知見を応用した携帯型近赤外光分析装置(NIRS)を用いて、朝食の「質」の差が、「幸せ度」に関係する脳活動と自律神経活動にどのような差を生み出すのかを評価したものです。
今回の試験により、米のご飯を中心に味噌汁、主菜、副菜から成る吉野家の朝定食は、必要な栄養素をバランスよく摂取でき、脳活動を活性化する食事であることが確認できました。
本研究成果は、5月26日(日)に福岡県福岡市で開催された第78回日本栄養・食糧学会大会において発表されました。
試験結果の概要
1.試験実施方法
今回の試験では、朝食摂取習慣のある健康な20代から50代で、日中活動をする右利きの男性50名を吉野家の朝定食3種類を食べる人の群(試験食群)、朝定食の半分程度のたんぱく質量で、熱量が同程度のパン食を食べる人の群(対照食群)の2群に分け、それぞれ全8週間のランダム化クロスオーバー試験を行いました。
ランダム化クロスオーバー試験とは、被験者をそれぞれランダムに選定した試験食群と対照食群に対して、2週間のウォッシュアウト(朝食なし)期間をはさみ、交互に介入試験を行い、介入条件以外の影響を最小化して結果を比較する厳密性の高い試験手順です。
試験および計測項目としては、認知機能試験、NIRSによる脳活動計測、自律神経活動計測、およびアンケートによる主観評価を行いました。
2.主な試験結果
(1)試験食群は対照食群に比べ、認知課題実施時の脳血流量が統計的有意に増加し、 脳活動が活性化することを確認しました。
図表1 試験食群と対照食群との脳血流変化量(RVIP認知課題実施時)の比較
吉野家の朝定食を食べた試験食群は対照食群に比べ、認知課題(RVIP)を実施時の脳血流変化量が統計的有意に増加しました(図表1)。
認知課題を行うことで脳活動が活性化(賦活)すると、脳の前頭葉にある背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の「脳血流」が増加することが知られています。今回の試験でも「試験食群」で認知課題実施中に背外側前頭前野の脳血流が増加していることが確認されています(図表2)。
図表2 RVIP認知課題中の脳活動状態の例(WOTによる解析)
(2) 試験食群は対照食群に比べ、摂取後の「心拍数」が統計的有意に大きくなることを確認しました。
試験食群および対照食群ともに、朝食摂取前に比べ摂取後に「心拍数」が統計的有意に増加することを確認しました。さらに試験食群は対照食群に比べて、心拍数の増加量の差が統計的有意に大きくなったことを確認しました(図表3)。
朝食摂取介入時に心拍数が増加するのは、自律神経における交感神経が優位になることを示し、脳を含む身体の臓器の働きが活発になることを示すものです。
図表3 朝食摂取介入前後の心拍数の変化
試験結果の総括
脳が働くためには、情報処理を司る脳の神経細胞にエネルギーを供給する必要があります。神経細胞は「ブドウ糖のみ」をエネルギー源としています。一方、脳内にはエネルギー源を保存する場所がありません。このため、脳を働かせるには常にブドウ糖の供給が必要です。
一方、朝食を摂っているものの、忙しいためにパン食だけという場合も少なくありません。朝食の主食は「パン」より「米のご飯」が脳活動の観点から優れていることが東北大学加齢医学研究所の研究で明らかになっています。
理由は、パンよりも米のご飯の方が「グリセミック・インデックス(GI)」という数値が低いからです。GI値が低いと血液中の血糖値の変動が少なくなります。血糖値の変動が少ない方が、脳に効率よく栄養が回ることがわかっています。
また、朝食がデンプン質(ブドウ糖)だけでは脳を働かせるのに十分でないことも東北大学の研究で明らかになっています。ブドウ糖が脳の神経細胞で有効に使われるには「補助的な栄養素」が必要なためです。
ビタミンB1(豚肉に多く含まれる)は、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。また、ビタミンB1の分解を防ぎ、吸収をよくするためにアリシン(にんにく、ねぎ、ニラなどに含まれる)の摂取が重要です。さらに、必須アミノ酸であるリジン(納豆、味噌、豆腐など豆類、卵黄に含まれる)もブドウ糖代謝の促進に有効です。
今回の試験により、米のご飯を中心に味噌汁、主菜、副菜から成る吉野家の朝定食は、必要な栄養素をバランスよく摂取でき、脳活動を活性化する食事であることが確認できました。
【株式会社吉野家】
「牛丼」を中心にバラエティ豊かな商品を提供する外食チェーン。1899年(明治32年)創業。
代表者:代表取締役社長 河村 泰貴
本社:東京都中央区日本橋箱崎町36番2号Daiwaリバーゲート18階
事業内容:
日常食の担い手である吉野家は、安心健康で豊かな食事を提供することは重要な社会価値と考え、栄養機能分野を研究しているプロフェッショナルを外部から招聘し、「食べることで健康を目指す」機能性表示食品や特定保健用食品の開発に取り組むなど、調査実施を通して健康に関するエビデンスの蓄積および社会実装を続けています。
企業HP:https://www.yoshinoya.com/
【東北大学ナレッジキャスト株式会社】
指定国立大学法人東北大学100%出資による株式会社。
代表者:代表取締役社長 荒井 秀和
本社:宮城県仙台市青葉区片平二丁目1-1
東京事務所:東京都中央区日本橋室町三丁目2番1号 日本橋室町三井タワー7階
事業内容:
東北大学の独創的な研究成果、研究者の深い洞察力や広範な知見と、新たな事業を創り出す企業の革新力を融合し、新たな社会価値の創造に貢献します。
企業HP:https://www.tohoku-kc.co.jp/
【株式会社NeU】
東北大学の認知脳科学の知見と、日立ハイテクの携帯型脳計測技術を軸に17年8月に設立。
代表者:代表取締役 長谷川 清
所在地:東京都千代田区神田司町2-2 新倉ビル
資本金:1億円
事業内容:脳科学の産業応用事業
企業HP:https://neu-brains.co.jp/
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