電通総研と同志社大学、「第8回世界価値観調査 日本版」の結果を発表

株式会社電通総研

株式会社電通総研(本社:東京都港区、代表取締役社長:岩本 浩久、以下「電通総研」)と学校法人同志社 同志社大学(所在地:京都府京都市、学長:小原 克博、以下「同志社大学」)の社会学部メディア学科 メディア・社会心理学研究分野の池田研究室(教授:池田 謙一)は、「第8回世界価値観調査」の日本調査(2024年7~8月実査)に参画し、人々の意識の変化について時系列比較などの分析を行いました。

「世界価値観調査」は1981年に開始され、現在およそ120ヵ国・地域の研究機関が参加している国際的な調査です。「第8回世界価値観調査」の日本における調査・分析が諸外国・地域に先行して完了したため、2024年12月19日(木)、その結果を公表します。

「第8回世界価値観調査 日本版」結果の概要は、以下のとおりです。

「第8回世界価値観調査 日本版」 概要

調査時期           2024年7月19日~8月2日

調査対象           全国の18~79歳男女 1,272名(有効回収数)

調査項目           政治観、経済観、労働観、教育観、家族観など約70問228項目(世界同一の調査票で実施)

調査会社           日本リサーチセンター

電通総研は第2回目調査(1990年)から本プロジェクトに参画し、今日に至るまで日本における調査と分析を行っています。第6回目調査(2010年)以降は、同志社大学社会学部メディア学科 教授の池田 謙一氏と協働して調査と分析にあたっています。

「第8回世界価値観調査 日本版」について

調査実施機関:日本リサーチセンター

■ 「第8回世界価値観調査 日本版」まとめ

 

1.自分の「人生を自由に動かせる」意識をもつ人が増加

2.「仕事」の重要度が低下する一方、「余暇時間」が存在感を増す

3.「経済成長と雇用」重視が増え、「環境保護」重視とほぼ同スコア

4.日本の「文化・芸術」は良い方向へ、「経済競争力」「国際的な政治力」は悪い方向へ向かっているとの認識

5.生き生きと自己実現できる社会が期待される中、社会変革の必要性を求める兆しも

6.世界との関わり方について、アジア・ヨーロッパとの関係強化を重視する人が多数

7.過半数が科学技術によって「世界はより良くなっている」と捉える一方、悪影響への懸念が増加

 

 

■ 「第8回世界価値観調査 日本版」 結果 ※日本における時系列変化

1.自分の「人生を自由に動かせる」意識をもつ人が増加

自分の人生を自由に動かせる程度について10段階で尋ねた質問では、「自由になる(6~10)」が68.9%(前回比10.5ポイント増)、「自由にならない(1~5)」が28.7%(前回比9.4ポイント減)となりました。1990年からの比較で「自由になる」が最も高くなり、「自由にならない」が最も低くなっています。

1.自分の「人生を自由に動かせる」意識をもつ人が増加

2.「仕事」の重要度が低下する一方、「余暇時間」が存在感を増す

「家族」「友人・知人」「余暇時間」「仕事」について、あなたの生活に重要かを尋ねた質問で「非常に重要」と「やや重要」と回答した割合の合計の変化を見ました。これまでも減少傾向が見られていた「仕事」は78.5%(前回比1.5ポイント減)となり、1990年以降で最も低くなりました。その一方で「余暇時間」が91.6%(前回比1.3ポイント増)となり、1990年以降で最も高くなりました。

2.「仕事」の重要度が低下する一方、「余暇時間」が存在感を増す

3.「経済成長と雇用」重視が増え、「環境保護」重視とほぼ同スコア

環境保護と経済成長・雇用のどちらを優先すべきかを尋ねた質問では、「たとえ経済成長率が低下して失業がある程度増えても、環境保護が優先されるべき」31.4%(前回比2.2ポイント減)、「環境がある程度悪化しても、経済成長と雇用の創出が最優先されるべきだ」31.8%(前回比8.7ポイント増)となりました。

前回は環境保護を優先すべきと回答した人、わからない・無回答が多かったのですが、今回は、環境保護と経済成長・雇用のどちらを優先すべきかについての意見がほぼ同じ割合になっています。また、1995年からこの質問が継続されている中で「環境がある程度悪化しても、経済成長と雇用の創出が最優先されるべきだ」は最も高くなりました。

3.「経済成長と雇用」重視が増え、「環境保護」重視とほぼ同スコア

4.日本の「文化・芸術」は良い方向へ、「経済競争力」「国際的な政治力」は悪い方向へ向かっているとの認識

日本が「良い」方向に向かっているものとして最も多く挙げられていたのは「文化・芸術」44.5%(前回比0.7ポイント増)、次いで「科学技術の水準」35.6%(前回比8.2ポイント減)でした。

前回の調査(2019年)ではこれらは同率一位でしたが、「文化・芸術」が前回同様のスコアを維持しているのに対し、「科学技術の水準」は前々回(2010年)から前回にかけて維持していた4割台からの減少が目立ちます。また、前回3割を超えていた「教育水準」「国内の治安」のいずれも微減し、3割を切りました。

4.日本の「文化・芸術」は良い方向へ、「経済競争力」「国際的な政治力」は悪い方向へ向かっているとの認識

その一方で、日本が「悪い」方向に向かっているものとして4割以上の人が挙げていたものは「経済競争力」56.4%(前回比26.1ポイント増)、「国際的な政治力」49.8%(前回比9.7ポイント増)、「自然環境」47.3%(前回比4.1ポイント増)、「雇用・労働状況」45.0%(前回比5.3ポイント増)、「社会道徳・倫理観」42.2%(前回と変化なし)、「国内の治安」41.1%(前回比4.4ポイント増)でした。

多くの分野において、悪い方向に向かっていると回答した人が前回と比べて増えていますが、「雇用・労働状況」は前々回のような群を抜いたスコアほどではありませんでした。

日本が悪い方向に向かっているもの

次に、「良い」方向の数値から「悪い」方向の数値を差し引きしたグラフでは、プラスは「良い」方向が高く、マイナスは「悪い」方向が高いものとなります。「良い」方向が高いのは「文化・芸術」「科学技術の水準」の2分野のみとなりましたが、うち「科学技術の水準」では前回と比較して落ち込みが見られました。多くの分野で「悪い」方向に向かっていると回答される中、特に「経済競争力」「国際的な政治力」では前回より差が大きくなりました。

日本が向かっている方向(「良い方向」ー「悪い方向」)

5.生き生きと自己実現できる社会が期待される中、社会変革の必要性を求める兆しも

日本の社会に望まれることとして、「日本では、一人ひとりが、生き生きと自己実現できる社会を築く必要がある」ことについて、「そう思う」と83.6%(前回比3.9ポイント増)が回答し、前回より微増しています。

5.生き生きと自己実現できる社会が期待される中、社会変革の必要性を求める兆しも

また、日本の社会に対して「今は、大きな社会変革が必要な時期だ」という考えに「そう思う」と43.6%(前回比14.9ポイント増)が回答しました。半数には及びませんが、社会変革の必要性を求めている変化の兆しを見ることができます。

21世紀の日本・日本人のあり方ー大きな社会変革が必要

6.世界との関わり方について、アジア・ヨーロッパとの関係強化を重視する人が多数

日本が世界の国・地域とどのように関わって役割を果たすべきかについて、方向性として4つを示し、それぞれについて「そう思う」と回答した人の割合を比較しました。

多い順に、日本は、「広くアジアの国々と交流を深め、頼りがいのある国になるべきだ」69.7%(前回比1.0ポイント増)、「ヨーロッパの国々と連携して、国際的な協力関係を推進すべきだ」65.0%(前回比較なし)、「グローバルサウスの国々との交流を深めて、国際的な課題解決に貢献すべきだ」57.6%(前回比較なし)、「アメリカとの関係を強化して、確固たる安定を築くべき」47.6%(前回比15.9ポイント増)となりました。

6.世界との関わり方について、アジア・ヨーロッパとの関係強化を重視する人が多数

7.過半数が科学技術によって「世界はより良くなっている」と捉える一方、悪影響への懸念が増加

科学技術によって良い変化が起きているか悪い変化が起きているかの程度を10段階で尋ねたところ、「科学技術によって、世界はより良くなっている(6~10)」と回答したのは64.8%(前回比4.4ポイント減)で、「科学技術によって、世界はより悪くなっている(1~5)」と回答したのは30.3%(前回比10.2ポイント増)でした。

7.過半数が科学技術によって「世界はより良くなっている」と捉える一方、悪影響への懸念が増加

主な考察

2019年実施の前回調査からの5年間には、人びとの生活様式や価値観を大きく変える出来事がありました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って、移動、対人コミュニケーション、食事、労働、就学、ケア、娯楽など、生活における様々な場面で制限がかかり、併せて負担の偏りが可視化されました。日常生活において、感染症予防にまつわる制限が解除された現在、その反動として、自分の「人生を自由に動かせる」意識をもつ人が増加した可能性があります。はたしてこれは一過性の反動なのか、この後に続く潮流なのか、今後の動向にも注視したいと思います。

生活においては、1995年を境に「仕事」を重要と考える人が続落する一方で、「余暇時間」を重要と考える人が増えています。今回の調査では「仕事」と「余暇時間」の優先順位の変化が如実に現れました。働き方改革に関する法律の整備、DX推進による労働環境の変化などを受けて、「仕事」と「余暇時間」に関する日本人の意識は今後もこのトレンドが続くように思われます。

今回の調査では、「雇用・労働状況」が「悪い」方向に向かっていると考えている人が多いことが明らかとなりましたが、リーマンショックの影響が続いていた2010年には及ばず、今後も、様々な社会情勢の影響を受けて変化するものと思われます。

また、今回の調査では、日本の「科学技術の水準」の低下が懸念されていることがうかがえました。ここ数年で世界的に注目されたAIやロボットなどの技術の多くは海外で開発されており、日本発の技術が後れを取っていると考えられていることが推測されます。さらに、「経済競争力」「国際的な政治力」も「悪い」方向に向かっていると考えられており、日本の国際的な競争力や存在感の低下が懸念されています。そのような中で、日本の社会変革を望む兆しも見られており、今後、社会変革に繋がるムーブメントが生まれてくるのか、それとも、ただ望むだけで何も変えようとしないのか、日本に住む人びとの意識と行動の変化を引き続き追いかけていきます。

 

<ご参考資料>

・電通総研 クオリティ・オブ・ソサエティセンター https://www.dentsusoken.com/thinktank

2024年10月17日

電通総研、「クオリティ・オブ・ソサエティ指標2024」の調査結果を発表

https://www.dentsusoken.com/news/release/2024/1017.html

2024年6月26日

電通総研、「電通総研コンパスvol.13 これからの防災を考えるための意識調査」結果を発表

https://www.dentsusoken.com/news/release/2024/0626.html

■電通総研について https://www.dentsusoken.com

電通総研は、「HUMANOLOGY for the future~人とテクノロジーで、その先をつくる。~」という企業ビジョンの下、「システムインテグレーション」「コンサルティング」「シンクタンク」という3つの機能の連携により、企業・官庁・自治体や生活者を含めた「社会」全体と真摯に向き合い、課題の提言からテクノロジーによる解決までの循環を生み出し、より良い社会への進化を支援・実装することを目指しています。

テクノロジーや業界、企業、地域の枠を超えた「X Innovation(クロスイノベーション)」を推進し、これからも人とテクノロジーの力で未来を切り拓き、新しい価値を創出し続けます。

* 2024年1月1日、電通国際情報サービス(ISID)は、電通総研へ社名を変更しました。

* 本リリースに記載された会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。

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会社概要

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業種
情報通信
本社所在地
東京都港区港南2−17−1
電話番号
03-6713-6100
代表者名
岩本 浩久
上場
東証プライム
資本金
81億8050万円
設立
1975年12月