衰えたエラスチン線維と「EMILIN-1」の関係性を解明
―新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に応用―
本研究成果は、10月6日と7日に開催された第82回日本皮膚科学会東部支部学術大会(於:北海道旭川市)で口頭発表し、今後新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に応用していきます。
<研究成果>
【加齢により衰えたエラスチン線維の「EMILIN-1」が減少することを発見】
エラスチン線維には、オキシタラン線維とエラウニン線維の二つの線維があり(図1)、それらを構成するタンパク質として、フィブリリン(3)やトロポエラスチン(4)などが知られています。「EMILIN-1」はこの二つのタンパク質の間に存在し、皮膚の老化との関連についてはまだ解明されていませんでした。そこで、加齢の兆候が表れやすいまぶたの皮膚(5)を用いて「EMILIN-1」量の加齢による変化を確認しました。確認方法は、10~20代の若齢層と70~80代の老齢層のまぶたの皮膚から線維芽細胞(6)を取り出し、「EMILIN-1」のほかにフィブリリンとトロポエラスチンの発現量を比較しました。
その結果、老齢層由来の細胞は、若齢層由来の細胞と比較してフィブリリンは増加していましたが、フィブリリン同士をつないで線維化を助ける「EMILIN-1」が半減し、タンパク質の構成バランスが乱れていることが分かりました(図2)。研究の結果、加齢によってエラスチン線維が衰える原因の一つに、その線維化を助ける「EMILIN-1」が減少していることを発見しました。エラスチン線維は、皮膚の弾力性に重要な関係があり、その線維化を助ける「EMILIN-1」が減少することが、シワやたるみの原因の一つになることが考えられます。
図1 皮膚中のエラスチン線維
図2 まぶたによる皮膚由来線維芽細胞のタンパク質発現量 (※若齢細胞の発現量を1とした場合の比率)
【酸化ストレスで衰えたエラスチン線維の「EMILIN-1」も減少していることを発見】
次に、加齢だけでなく酸化ストレスで衰えたエラスチン線維の「EMILIN-1」発現量の変化を確認しました。線維芽細胞に酸化ストレスの刺激として、過酸化水素による活性酸素処理と紫外線A波(以下UVAと表記)を照射しました。その結果「EMILIN-1」の発現量は、活性酸素の刺激によって約4割(図3)、またUVAの刺激によっても約2割低下することが分かりました(図4)。
図3 活性酸素で刺激した細胞の「EMILIN-1」発現量(※コントロール細胞の「EMILIN-1」量を1とした場合の比率)
図4 UVAで刺激した細胞の「EMILIN-1」発現量(※コントロール細胞の「EMILIN-1」量を1とした場合の比率)
【減少した「EMILIN-1」を増加する成分の探索に成功】
こうした結果から、「EMILIN-1」の増加が皮膚の弾力性を維持してシワやたるみの改善につながるのではないかと考えました。そこで、減少した「EMILIN-1」を増加する成分の探索をした結果、オクラの種子から抽出したエキスと糖を混合した原料「マイオキシノール」が「EMILIN-1」の発現量を増やす効果を持っていることを発見しました(図5)。
図5 「EMILIN-1」産生に及ぼすマイオキシノールの影響
<本研究成果の今後>
一連の研究から、「EMILIN-1」の発現量を増やすことがエラスチン線維の衰えを防ぐアンチエイジングに重要であることが分かり、本研究成果を製品開発に応用しました。今後もさらに研究を進め、エラスチン線維の質に着目して新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品の開発に努めてまいります。
【用語解説】
(1)エラスチン線維:弾力線維とも呼ばれ、コラーゲン線維を支える役割がある
(2)EMILIN-1(elastinn microfibrillar interface protein 1)
:エラスチン線維を構成するフィブリリンとトロポエラスチンの間に存在するタンパク質
(3)フィブリリン:エラスチン線維の主要な構成タンパク質
(4)トロポエラスチン:エラスチン線維を強固にするため、骨格を守るためにコーティングされるタンパク質で、オキシタラン線維には存在しないと言われている
(5)まぶたの皮膚:共同研究先の北里大学より倫理的手続きを得て提供されたものを使用
(6)線維芽細胞:真皮に存在する細胞で、コラーゲン線維やエラスチン線維などを産生する細胞
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