分断が進む現代に大きな問いを投げかける傑作エンターテイメント巨篇。葉真中顕『灼熱』9月24日発売決定!
戦後のブラジルで日本移民を二分した「勝ち負け抗争」の真実。
2012年、介護現場の厳しさを描いた『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー、『絶叫』では一人の女性の壮絶な半生を通じて現代社会の闇を抉り出し、『コクーン』ではカルト教団の起こした事件を、『Blue』では平成元年に生まれた無戸籍の男の生涯を通じて平成という時代が孕んだ社会問題を描き出すなど、社会派ミステリーの旗手として注目を集める作家、葉真中顕さん。
『絶叫』『コクーン』はそれぞれ吉川英治新人賞の候補となり、また2019年、アイヌ出身の特高刑事を主人公とした『凍てつく太陽』で大藪春彦賞、日本推理作家協会賞をW受賞するなど、業界でいま、最も活躍が期待される作家のひとりでもあります。
そんな葉真中さんが5年をかけ取り組んだ渾身の大作『灼熱』を9月24日、新潮社より刊行します。
『絶叫』『コクーン』はそれぞれ吉川英治新人賞の候補となり、また2019年、アイヌ出身の特高刑事を主人公とした『凍てつく太陽』で大藪春彦賞、日本推理作家協会賞をW受賞するなど、業界でいま、最も活躍が期待される作家のひとりでもあります。
そんな葉真中さんが5年をかけ取り組んだ渾身の大作『灼熱』を9月24日、新潮社より刊行します。
- いまなぜ、「勝ち負け抗争」を描いたか
今、なぜこの事件を描こうと思ったのか。葉真中さんは次のように語ります。
「我々人間は、一言でいえば『信じたいものを信じてしまう』生き物です。
戦後、日本の正確な情報の入手が難しかったブラジルの日本移民の間では、第二次世界大戦に日本が“勝った”というフェイクニュースが駆け巡りました。戦局もよいと伝えられていたため、およそ9割の人がそれを信じたと言われています。対して、少数ながら敗戦を認識した層もありました。両者は激しく対立し、やがて23人もの死者、多数の負傷者を出す大抗争に発展してしまいました。
背景には、もちろん当時の情報伝達の問題があります。現代であれば、正しい情報が世界中に素早く伝達され、間違った情報もすぐに訂正されるでしょう。
ただ一方で、今も当時と変わらない問題は起こっていると感じます。世界中で分断と格差が拡大し、コロナについてフェイクニュースが行き交っている。どんなに情報化した社会であっても、です。
それは、誰にとっても決して他人事ではないはず。とくに、自分自身に『自明なもの』としてインストールされてしまっている見方や価値観を疑うには、多大なコストがかかります。私自身、その問題に向き合いながら、自分なりの誠実さをもって、このテーマに挑戦したいと思いました」
- そもそも『勝ち負け抗争』に興味をもったきっかけは、当事者の声でした。
ところが、いろいろな巡り合わせが重なり、2017年、腹を括って取り組んでみようと覚悟しました。その後、多くの資料を読み込み、ブラジルにも直接取材に行くことができました。
執筆中、トランプ前大統領の支持者が米連邦議会議事堂を襲撃する事件が起こった時は、現代でも、思想の分断や信じるものの違いが実際に血が流れるような抗争に繋がってしまうのだと呆然とするような思いでした。コロナ禍において日本でも、ワクチンを打つべきか打たざるべきか等、様々なニュースが飛び交っている今、この本を出版することになったことに、非常に大きな意味を感じています」
- 『灼熱』あらすじ
祖国の戦争が伝えられる中、村一番の農家・南雲家が育てるハッカは敵性産業だという噂が出回り、夜襲を受ける。トキオたちは村を出ていくが、実は襲撃したのは、「御国のため」の正義を掲げる、勇ら村の者たちだった。新たに村のリーダーとなった瀬良(せら)に目をかけられた勇は、村で存在感を発揮する。
そんな中、終戦の報がもたらされる。サンパウロにいるトキオには「日本が敗けた」、弥栄村にいる勇たちには「日本が勝った」という報せが……。両者は激しく対立し、ついには事件が勃発する――。
- 著者紹介:葉真中 顕(ハマナカ アキ)
■書籍概要
タイトル:灼熱
著者名:葉真中 顕
判型:四六判(672ページ)
定価:2,860円(税込)
発売日:2021年9月24日
ISBN:978-410-354241-4
URL:https://www.shinchosha.co.jp/book/354241/
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