2025年経済的に困難な状況にある世帯への中高入学に関するアンケート調査:卒業と入学準備に「生活費を削る」6割超、「借入で工面」も約3割借入金額・返済期間が前年比増、
「授業料無償化」だけでは支援足りない実状明らかに
子ども支援専門の国際 NGO公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:井田純一郎、本部:東京都千代田区、以下セーブ・ザ・チルドレン)は、経済的な困難や生活上の困難がある世帯を対象に、中学・高校の入学に関わる費用の一部を支給する「子ども給付金~新入学サポート2025~」を行っています。この度、2025年1月に受け付けた同事業にて、2025年4月に中学校や高校等に進学予定の子どものいる世帯の「2025年経済的に困難な状況にある世帯への中高入学に関するアンケート調査」を実施しました。
現在、国内で子どもの貧困が社会問題となり、また物価高騰も続いています。経済的困窮に加え、障害や疾病、家庭内暴力、在留資格が不安定など、生活上特定の困難がある子育て世帯の生活状況や、卒業・新入学にかかる保護者の経済的負担感などを把握することが重要であると考え、本年も調査を実施しました。
有効回答数は、期間中に申請のあったうち回答が確認できた全国47 都道府県の2,135 人(保護者または親族、教員、支援団体などの支援者が回答)です。
今回、セーブ・ザ・チルドレンが実施した調査で、経済的に困難な状況にある世帯において、卒業・新入学にかかる費用が家計に大きな負担を及ぼしていることが浮き彫りになりました。
2024年に実施した調査と比較しても、借入金額や返済期間が新高1の子を持つ世帯で特に増加傾向にあり、「高校授業料無償化」の政策だけでは支援が足りない実状が明らかとなっています。
■主な調査結果
➢卒業・新入学準備に関し費用の捻出が難しい費目について、前年比最も増加したのは「パソコン・タブレット代」で、新中1では21.1%(前年比4ポイント増)、新高1では56.3%(前年比9ポイント増)。
➢卒業・新入学準備のために「他の生活費を削る」と回答した保護者は、約6割(新中1:63.5%、新高1:59.9%)。
そのうち、「親自身の食事量を減らしている」と回答したのは、71.3%となり、前年比約7ポイント増加。
➢約3人に1人の保護者が、卒業・新入学準備のために「借入」。
家族・親族・友人・知人からの借入やクレジットカードによるキャッシング、銀行・消費者金融などからのカードローンを利用。同割合は、新中1のいる世帯よりも、新高1のいる世帯の方がより高い結果に。
➢卒業・新入学準備にかかる費用を借入などで捻出する世帯は、新高1で「11万円以上」の借入を約6割(58.3%)がしていて、「1年以上」の返済期間にしている世帯が約6割(59.7%)。
昨年と比較し、借入金額は約5ポイント増加、返済期間も約9ポイント増加。
調査結果報告書はこちら: https://bit.ly/4ik9TEG
中高での私費負担軽減や高校入学準備金の創設を国・自治体に提言
調査結果を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、困難な状況にある子どもの“学ぶ権利”を保障するため、【1】学用品の選択制の導入、価格の見直しや公費による購入、早期の必要金額開示 【2】特に高校入学時のパソコン・タブレット代の国・自治体による助成の拡大 【3】貸与の導入新入学に関わる既存制度の拡充 【4】高校入学前の準備金の創設、の4点を国や関係省庁、自治体に対し提言していきます。
<主な調査結果>




本調査結果を受けての国や関係省庁、自治体への提言について
1. 学用品の選択制の導入、価格の見直しや公費による購入、早期の必要金額開示
制服代、運動着代など、指定品以外の選択を可能とすることや、価格が適正かどうかの見直しや値下げが求められる。就学援助制度や高校生等奨学給付金の援助額の範囲内に収めるなど、世帯の負担が生じないような具体的な金額の検討が必要だ。並行して、公費で購入し共用化できる教材の検討・導入など私費負担を減らす実効的な対応を求めたい。また、自治体や学校のwebサイトなどで必要な学用品額をできる限り早期に周知することは、今すぐにでもできる対応だ。
2. 特に高校入学時のパソコン・タブレット代の国・自治体による助成の拡大、貸与の導入
中学校はGIGAスクール構想で、1人1台の端末が無償提供されているが、高校入学時の端末購入に関する助成の有無は自治体や学校によって異なる高額なパソコン・タブレット端末の購入は経済的に困難な世帯にとって大きな負担である。国や自治体に助成の拡大や端末貸与の導入を早急に求めたい。セーブ・ザ・チルドレンのこれまでの調査から、新中1についても、付属アクセサリーの負担軽減や通信環境の整備も必要である※。
※「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 ~新入学サポート2024~」利用者アンケート調査結果(2024年7月)https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=4499
3. 新入学に関わる既存制度の拡充
中学校については、就学援助制度の入学準備金の増額やさらなる早期支給を求める。高校については昼食費や通学費などへの補助を訴える声も寄せられた。高校生等奨学給付金の増額など、実態に応じた支給金額の見直しが求められる。このほか、中学入学時については社会福祉協議会の母子父子寡婦福祉資金や生活福祉資金の貸付対象外であることへの疑問も寄せられており、中学入学時も対象とする制度改善が必要である。
4. 高校入学前の準備金の創設
高校入学にあたっては義務教育にある就学援助制度の入学前支給にあたる支援はなく、経済的に困難な世帯では新入学に必要な費用の捻出が重くのしかかる。2025年2月現在、高校生等奨学給付金については中間層への対象拡大が国会で議論されている。それ自体は歓迎すべきだが、今回の調査結果からも、高校入学前の段階で給付を迅速に行うことが当事者から強く求められている。具体的な給付額や時期・方法については、文部科学省が実施している『子供の学習費調査』やセーブ・ザ・チルドレンなど民間団体の調査を参考にしながら、当事者の実態に即して検討すべきである。
「2025年経済的に困難な状況にある世帯への中高入学に関するアンケート調査」概要
【調査対象】 「子ども給付金 ~新入学サポート2025~」申請者
(2025年4月に中学校や高校等に進学予定の子どものいる世帯、対象条件あり)
【調査方法】 申請時にオンラインフォームへの回答
(オンラインでの申請が難しい世帯については一部郵送で受付) (最終的な人数は変動の可能性有)
【実施期間】 2025年1月9日~1月24日
【有効回答数】 2,135人(きょうだいでの申請の場合は、それぞれで回答)
アンケートについては、保護者または支援者(親族、教員、支援団体など)が回答
セーブ・ザ・チルドレンの子ども支援事業「子ども給付金 ~新入学サポート~」について

特定の生活上の困難があり、かつ経済的にお困りの世帯で、当団体が定める申請条件を満たす世帯を対象に、中学・高校の入学に関わる費用の一部を支援しています(子ども1人につき、中学入学時 3万円、高校入学時に 5万円を給付)。返還の必要はありません。
東北地域で就学支援のため2016年に開始し、2022年からは対象地域を全国へ拡大。
これまでに、のべ、5,211人が同給付金を利用しています。
【16-21年】2,606人 ※岩手県山田町・宮古市、宮城県石巻市の東北地域
【22年】631人(574世帯) 【23年】979人(882世帯) 【24年】995人(899世帯)
※対象条件に基づき審査を行った上、給付金を提供(25年3月中旬から順次給付開始)
【詳細URL】 https://www.savechildren.or.jp/lp/kodomosupport2025/ (※申請条件ほか詳細)
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