世界一の日本語性能を持つ企業向け大規模言語モデル「Takane」を提供開始

セキュアなプライベート環境で高度なカスタマイズを実現し生成AI利活用を促進

富士通株式会社

当社は、Cohere Inc.(注1)(以下 Cohere)と共同開発したプライベート環境で使用可能な企業向け大規模言語モデル(以下 LLM)「Takane」(高嶺:タカネ)をAIサービス「Fujitsu Kozuchi(Generative AI)」に組み込み、クロスインダストリーで社会課題を解決する事業モデル「Fujitsu Uvance(https://activate.fujitsu/ja/uvance)」のオファリングであるオールインワンオペレーションプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS(以下 DI PaaS)」を通じて、2024年9月30日よりグローバルに提供します。

「Takane」は、日本語言語理解ベンチマークJGLUEにおいて世界最高記録(注2)を達成しており、セキュアなプライベート環境で利用できる点が特徴です。「Takane」を、大規模な文章の参照を可能にする「ナレッジグラフ拡張RAG」や、法規制や企業ルールに準拠した出力が可能な「生成AI監査技術」などから成る「エンタープライズ生成AIフレームワーク」とあわせて提供することで、業務に特化したLLMを実現し、お客様の業務変革を支援します。


当社は、「Takane」を「Fujitsu Kozuchi」の「Generative AI」のLLMのラインナップに追加することで、お客様に最適な生成AIを全方位で提供していきます。さらに、お客様が意識せずに生成AIによるビジネス変革の恩恵を受けられるというBeyond Chatという概念に基づき、コンサルティングサービス「Uvance Wayfinders」や「Fujitsu Uvance」のオファリングとともにトータルに提供することで、お客様ビジネスの生産性と創造性の拡張、および社会課題の解決に貢献していきます。


背景

世界ではマーケティングや顧客対応など様々な分野で生成AIの業務活用が進んでいます。しかし、クラウドサービスで提供される大規模な汎用LLMは、金融や安全保障分野など、外部にデータを出せない業務領域や、法規制や業界ルールへの準拠が求められる業務においては、活用が難しい状況です。さらに、日本語は文字種の混在や主語の省略、敬語表現など、特有の難しさがあり、汎用LLMの出力精度には課題があります。そのため、言葉の間違いが大きな問題や損害を及ぼす可能性のある行政や金融、医療、法曹などの分野では、日本語能力に優れた業務特化型のLLMが求められています。


【Takaneの特長】

1. 日本語能力

「Takane」は、CohereのLLM「Command R+」をベースに、当社が日本語特化LLMの開発で培った豊富な知見と、Cohereの業務特化型LLMの開発ノウハウを組み合わせて開発した、グローバルで当社が独占的に提供できるモデルです。日本語強化のための追加学習とファインチューニングを行い、日本語言語理解ベンチマークであるJGLUEで自然言語推論のベンチマークであるJNLI、機械読解タスクのベンチマークであるJSQuAD、Nejumi LLMリーダーボード3においては意味理解、構文解析において他社を凌駕する性能を達成しています(注3)。また、「Command R+」の多言語対応(10言語に対応)や、ビジネスプロセスを自動化する機能を継承しています。


表:JGLUE(注4)のスコア一覧


Takane

Command R+

GPT-4

GPT-4o

Sonnet 3.5

JSTS (Pearson)(注5)

0.93

0.88

0.91

0.89

0.90

JCoLA (Bal. acc.)(注6)

0.84

0.71

0.65

0.82

0.66

JNLI (Bal. acc.)(注7)

0.94

0.77

0.83

0.84

0.90

JCommonsenseQA (Exact Mach)(注8)

0.98

0.96

0.95

0.98

0.97

JSQuAD (Accuracy)(注9)

0.93

0.86

0.84

0.86

0.87

JGLUE Average

0.92

0.84

0.84

0.88

0.86


2. セキュアなプライベート環境

「Takane」はセキュアなプライベート環境で利用可能なLLMです。これにより、事務作業や問い合わせ対応、各種審査業務において顧客の個人情報を扱う金融業界、設計や開発など秘匿性の高いデータを扱う製造業、機密性の高いデータを扱う安全保障分野など、データ漏洩の懸念からLLMの導入が難しい業務でも安心して活用できます。


3. ファインチューニングによる特化型LLM

企業独自のデータを用いてファインチューニングやカスタマイズを行い、お客様の業務に特化したLLMに高度化できます。さらにCohereが有するRAG技術と、当社の「ナレッジグラフ拡張RAG技術」「生成AI監査技術」により、法規制および業界・企業のルールへの準拠が容易になります。これにより、専門用語が多く頻繁に法規制が改正される金融業界などでも、「Takane」を安心して活用できるようになります。


さらに、「Takane」を「Fujitsu Uvance」のオファリングである「DI PaaS」を通じて提供することで、データとAIを融合した業務アプリケーションを創出します。「DI PaaS」は、組織内外に散在する膨大なデータを意味の理解できる形に統合し、部門や業種間で分断されたデータを連携、分析し、これまでにない知見や解決策を導き出し、組織や企業間のデータ利活用を活性化させるクラウドベースのオールインワンオペレーションプラットフォームです。当社は、データとAIの融合により、圧倒的な生産性と創造性を実現し、お客様のビジネス変革を支援していきます。


【当社 執行役員副社長CTO、CPO ヴィヴェック マハジャンのコメント】

昨年度発表した当社のAI戦略の一環として、企業向けのLLM「Takane」を開発しました。プライベート環境の利用に適した本モデルが、セキュアな環境が必須な業種のお客様の生成AI活用に貢献できることを期待しています。今後も企業向けのAI技術開発に注力し、モダナイゼーション、「Fujitsu Uvance」、コンサルティングの3つの成長ドライバーを技術で支えていきます。


【当社 執行役員副社長COO 高橋 美波のコメント】

「Fujitsu Uvance」の提供価値はData×AIがもたらす高度な意思決定を通じて、お客様のビジネスの成長と社会課題の解決を支援していくことです。「DI PaaS」に新たに日本語強化型LLM 「Takane」が追加されたことで、より広範囲のお客様へ最適なLLMを提供できるようになりました。今後も、独自開発だけでなく世界中のさまざまなパートナーと連携して世界最先端のAIを市場に投入し、お客様のビジネス変革をサポートしてまいります。


【Cohere Inc. Co-founder and CEO Aidan Gomezのコメント】

日本語を強化したLLMである「Takane」をグローバル企業に提供できることを大変楽しみにしています。富士通とのパートナーシップを通じて、ビジネス利用に特化して日本語を含む複数の言語を安全かつ高性能に活用できるよう設計されたAIを提供することで、当社にとって極めて重要な日本市場におけるAI導入を加速します。


図:「Takane」の提供スキーム図:「Takane」の提供スキーム


【株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役員 グループ副 CIO 山本 健文 様のコメント】

<みずほ>は、富士通と 2023 年度にシステム開発・保守に生成 AI を活用する共同実証実験を行い、2024 年度からはシステム開発の設計プロセスの一部に「Kozuchi」を適用し品質向上に取り組んでいます。
今回発表された企業向け LLM「Takane」は、ナレッジグラフ拡張 RAG 等を用いることでみずほ内の知識・ノウハウがより効果的に利用可能になると伺っており、大いに期待しております。今後、システム開発・保守プロセスの品質およびレジリエンスの更なる向上に取り組んで参ります。


【三菱電機株式会社 AI戦略プロジェクト プロジェクトマネジャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長 博士(工学) 田中 昭二 様のコメント】

富士通とCohereの戦略的パートナーシップにより開発された「Takane」は、両社の世界トップレベルの技術を融合した日本語対応の生成AIソリューションです。このような世界トップレベルのソリューションが新たな選択肢として加わることにより、国内企業が取り組む生成AI市場に新たな可能性をもたらすと考えています。両社の今後の進展に期待します。


【デロイト トーマツ コンサルティング 合同会社 Chief Growth Officer(戦略・イノベーション・アライアンス統括) テクノロジー・メディア・通信 アジアパシフィックリーダー 執行役員 首藤 佑樹 様のコメント】

生成AIは多くの企業・官公庁でPoCフェーズを終え、これから製品・サービスや業務プロセスに本格適用される変革フェーズへと入っていきます。その際に重要となるのがセキュアな環境で自社のデータを安心して連携・活用できるLLMです。特に、日本語能力を強化した「Takane」は日本企業・官公庁の変革を加速させる可能性を秘めています。デロイトトーマツは富士通とともに、生成AIの持つ可能性を解き放ち、日本の経済・社会の発展に貢献してまいります。


【RUTILEA, Inc. 代表取締役社長 矢野 貴文 様のコメント】

当社は「AIを簡単に。」をミッションに、全ての業務プロセスにAIが導入された社会実現を目指し、精度の高いAIサービス提供に取り組んでいます。昨今は中央省庁・地方自治体や自動車業界、製薬業界、電力調達最適化等の特定業界に特化したバーティカルAI事業展開の他、2024年、福島県双葉郡大熊町にGPUデータセンターを整備し、AI開発プラットフォーム事業をスタートします。「Takane」は日本の各バーティカル事業におけるAI活用を飛躍的に推進する可能性を秘めています。その開発や利活用において、貢献できる日を心待ちにしています。


【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


【注釈】

注1

Cohere Inc.:
本社 カナダ オンタリオ州トロント、アメリカ カリフォルニア州サンフランシスコ、Co-founder and CEO Aidan Gomez


注2

日本語言語理解ベンチマークであるJGLUEにおいて世界最高記録:
JGLUEにおいて、クラウドサービスで提供される大規模な汎用LLMを含む他社のLLMの結果を凌駕。なお、JNLIとJCoLAについては正解データ(Ground Truth)に不確かさがあったため、複数人のアノテーターにより正解データを修正して測定した参考値(2024年9月富士通とCohereによる測定)。


注3

他社を凌駕する性能:
LLMモデルの日本語能力を評価するNejumi LLMリーダーボード3において意味理解のカテゴリで0.862、構文解析のカテゴリで0.773と最高性能を記録(2024年9月富士通とCohereによる測定)。


注4

JGLUE:
GLUE(General Language Understanding Evaluation)の日本語版(栗原 健太郎、河原 大輔、柴田 知秀、「JGLUE:日本語言語理解ベンチマーク」、言語処理学会第28回年次大会、2022年


注5

JSTS:
文章のペアの意味的な類似度を推定するタスク


注6

JCoLA:
日本語の容認性を判断するタスク


注7

JNLI:
前提文と仮説文の文章のペアに対して、前提文が仮説文に対してもつ推論関係を認識する自然言語推論タスク


注8

JCommonsenseQA:
常識推論能力の評価タスク


注9

JSQuAD:
文書を読み、それに関する質問に対して答える機械読解タスク


【関連リンク】

・富士通とCohere、企業向け生成AIの提供に向けた戦略的パートナーシップを締結し、共同開発を開始(2024年7月16日プレスリリース)

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/07/16.html

・世界初の技術で企業ニーズに対応した特化型生成AIを自動生成!エンタープライズ生成AIフレームワークを提供(2024年6月4日プレスリリース)

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/06/4.html

・Fujitsu Uvance

https://activate.fujitsu/ja/uvance

・Fujitsu Data Intelligence PaaS

https://www.fujitsu.com/jp/innovation/data-driven/capabilities/

・Fujitsu Kozuchi

https://www.fujitsu.com/jp/services/kozuchi/


【当社のSDGsへの貢献について】


2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs本件が貢献を目指す主なSDGs


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会社概要

富士通株式会社

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URL
https://global.fujitsu/ja-jp
業種
情報通信
本社所在地
神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
電話番号
-
代表者名
時田 隆仁
上場
東証プライム
資本金
-
設立
1935年06月