従業員のワクチン接種状況、企業の66.7%が把握
業績にマイナスの影響を見込む企業は6割台に低下
新型コロナウイルスワクチンの接種拡大などによって、経済活動は徐々に正常化に向け期待感が生まれつつある。一方で、2021年7月12日に東京都への4度目の緊急事態宣言が発出されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いている。さらに、8月に入ると新規感染者数の国内最多を更新し、引き続き企業活動や国民の消費マインド回復への障壁となることが予想される。
そこで、帝国データバンクは、新型コロナウイルス感染症に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年7月調査とともに行った。
そこで、帝国データバンクは、新型コロナウイルス感染症に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2021年7月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
※本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
業績にマイナスを見込む企業は、69.3%と2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台に
新型コロナウイルス感染症により自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計)と見込む企業は69.3%(前月比2.6ポイント減)となり、最初の緊急事態宣言発出前の2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台となった。特に、「今後マイナスの影響がある」は5.3%と、調査開始以降で最も低くなった。
一方で、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)は5.6%(同横ばい)、「影響はない」(20.1%)は約2割で最も高くなった。
企業の3社に2社が希望者のワクチン接種状況を把握
新型コロナウイルスワクチンに関して、接種を希望する従業員の状況を自社で把握しているか尋ねたところ、『把握している』(「希望者はほとんど接種した」「希望者はある程度接種した」「希望者もあまり接種していない」の合計)は66.7%となり、3社に2社が希望者の接種状況について把握している結果となった。内訳は、「希望者はほとんど接種した」が6.4%、「希望者はある程度接種した」が25.6%、「希望者もあまり接種していない」が34.7%となった。とりわけ、「希望者はほとんど接種した」では、「5人以下」と「1,000人超」の企業で1割を超えていた。他方、任意接種などのため「把握していない」は28.8%だった。ワクチンの接種状況を『把握している』企業を規模別にみると、「大企業」が60.3%、「中小企業」が68.0%となり、そのうち「小規模企業」が73.5%となった。特に「小規模企業」では「大企業」を13.2ポイント上回っており、企業規模によって把握状況に差異がみられた。
政府には正確な情報発信や柔軟な対応が求められる
本調査の結果、新型コロナウイルス感染症により業績にマイナスの影響があると見込む企業は2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台となった。ワクチン接種の拡大に対する期待感から徐々にマイナスの影響を見込む企業は低下している。
また、ワクチンの接種状況に関して、企業の3社に2社が希望者の接種状況を把握していることが明らかとなった。特に「小規模企業」では7割超が把握している。接種に関しては積極的な推進をしている企業がある一方で、慎重姿勢をみせる企業もあり、各社の考え方はさまざまな様子がうかがえた。
ワクチン接種の拡大による経済活動の正常化に期待がかかる一方で、変異株などによる新規感染者数の急増は企業活動を行う上で、再び懸念事項になりつつある。引き続き出口を探るような社会情勢となるなか、政府には正確な情報発信や柔軟な対応が求められると同時に、企業や個人は感染対策を行いながら新型コロナウイルスとの共存の可能性を探る意識が肝要となろう。
- 新型コロナウイルス感染症による自社の業績への影響、『マイナスの影響がある』と見込む企業は69.3%(前月比2.6ポイント減)となり、1年5カ月ぶりに6割台となった。一方で、『プラスの影響がある』は5.6%(同横ばい)となった
- 『マイナスの影響がある』を業種別にみると、「飲食店」が90.9%で最も高くなった。次いで、「医薬品・日用雑貨品小売」(90.0%)、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(89.9%)、「旅館・ホテル」(87.8%)、「出版・印刷」(84.5%)が続く
- 『プラスの影響がある』は「飲食料品小売」と「教育サービス」がともに16.7%で最高となっている。以下、「各種商品小売」(15.9%)、「娯楽サービス」(14.7%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(12.5%)が上位に並んだ
- 新型コロナウイルスワクチンの接種を希望する自社従業員の接種状況に関して、『把握している』は66.7%となり、3社に2社が希望者の接種状況について把握している。他方、任意接種などのため「把握していない」は28.8%だった
※本調査の詳細なデータは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
業績にマイナスを見込む企業は、69.3%と2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台に
新型コロナウイルス感染症により自社の業績にどのような影響があるか尋ねたところ、『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計)と見込む企業は69.3%(前月比2.6ポイント減)となり、最初の緊急事態宣言発出前の2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台となった。特に、「今後マイナスの影響がある」は5.3%と、調査開始以降で最も低くなった。
一方で、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)は5.6%(同横ばい)、「影響はない」(20.1%)は約2割で最も高くなった。
業種別にみると、『マイナスの影響がある』と見込む企業は、「飲食店」が90.9%で最も高くなった。次いで、「医薬品・日用雑貨品小売」(90.0%)、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(89.9%)、「旅館・ホテル」(87.8%)、「出版・印刷」(84.5%)が続く。他方、『プラスの影響がある』と見込む企業は、「飲食料品小売」と「教育サービス」がともに16.7%で最高となっている。以下、「各種商品小売」(15.9%)、「娯楽サービス」(14.7%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(12.5%)が上位に並んだ。企業からは「売り上げが低迷している。非接触のモバイルオーダーシステムやセルフレジなどを導入しており、支援金の拡充を望む。また、申請ハードルの低い助成金を期待する」(中華・東洋料理店、広島県)といった声があがっている。また、「年内中にワクチン接種が進み、景気が回復することを期待する」(一般土木建築工事、静岡県)や「ワクチン接種の進展により業績は回復していくと思われる」(各種機械・同部分品製造修理、大阪府)というように、業種や地域に問わず徐々に明るい声も聞こえている。
企業の3社に2社が希望者のワクチン接種状況を把握
新型コロナウイルスワクチンに関して、接種を希望する従業員の状況を自社で把握しているか尋ねたところ、『把握している』(「希望者はほとんど接種した」「希望者はある程度接種した」「希望者もあまり接種していない」の合計)は66.7%となり、3社に2社が希望者の接種状況について把握している結果となった。内訳は、「希望者はほとんど接種した」が6.4%、「希望者はある程度接種した」が25.6%、「希望者もあまり接種していない」が34.7%となった。とりわけ、「希望者はほとんど接種した」では、「5人以下」と「1,000人超」の企業で1割を超えていた。他方、任意接種などのため「把握していない」は28.8%だった。ワクチンの接種状況を『把握している』企業を規模別にみると、「大企業」が60.3%、「中小企業」が68.0%となり、そのうち「小規模企業」が73.5%となった。特に「小規模企業」では「大企業」を13.2ポイント上回っており、企業規模によって把握状況に差異がみられた。
企業からは、「朝礼などで積極的にワクチン接種を受けるよう啓蒙している」(工業用プラスチック製品加工、茨城県)、「ワクチン接種者は有休などを取得するので、現状では把握している」(一般貨物自動車運送、愛知県)などといった声があがっている。一方で、「基礎疾患や持病のある人に対し、ワクチンがどの程度有効なのか、また接種しない方が良いのか、もう少しわかりやすく説明してほしい」(金属加工機部品製造、埼玉県)といった意見もあがっている。また、「ワクチンの職場接種を検討していたが受付が停止されたため計画が頓挫した」(ビルメンテナンス、沖縄県)といった声もあった。
政府には正確な情報発信や柔軟な対応が求められる
本調査の結果、新型コロナウイルス感染症により業績にマイナスの影響があると見込む企業は2020年2月以来1年5カ月ぶりに6割台となった。ワクチン接種の拡大に対する期待感から徐々にマイナスの影響を見込む企業は低下している。
また、ワクチンの接種状況に関して、企業の3社に2社が希望者の接種状況を把握していることが明らかとなった。特に「小規模企業」では7割超が把握している。接種に関しては積極的な推進をしている企業がある一方で、慎重姿勢をみせる企業もあり、各社の考え方はさまざまな様子がうかがえた。
ワクチン接種の拡大による経済活動の正常化に期待がかかる一方で、変異株などによる新規感染者数の急増は企業活動を行う上で、再び懸念事項になりつつある。引き続き出口を探るような社会情勢となるなか、政府には正確な情報発信や柔軟な対応が求められると同時に、企業や個人は感染対策を行いながら新型コロナウイルスとの共存の可能性を探る意識が肝要となろう。
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