【新レポート発行】不動産マーケットリサーチレポートVol.306「『働きたい街ランキング』から読み解くオフィスマーケット~働き手の選好と賃料水準の関係性~」
三菱UFJ信託銀行株式会社(東京都千代田区、取締役社長:窪田 博)は、この度不動産マーケットリサーチレポートVol.306「『働きたい街ランキング』から読み解くオフィスマーケット~働き手の選好と賃料水準の関係性~」を発行しました。
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「働きたい街ランキング」の順位と賃料水準の高低は必ずしも一致しない
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投資家にとって、人気の高さよりも需要の質やその持続性を見極めることが重要
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テナント(事業法人)にとって立地選択は、賃料の高低のみならず、どのような人材を惹きつけ、どのような働き方を実現するか、という経営判断になる
「働きたいオフィス・働きたい街ランキングに関する生活者調査」
近年、人材確保や従業員のエンゲージメント向上、人的資本経営等の観点から立地やビルスペックの改善を企図してオフィス移転がなされる傾向が増加しています。これを受け、三菱UFJ信託銀行は、働き手の意向を把握しその傾向を明らかにすることを目的として「働きたいオフィス・働きたい街ランキング2026」を実施しました。

働きたい街ランキングと賃料水準の関係
本稿では、働き手の選好(働きたい街ランキングの順位)と賃料水準の関係性を、投資家及び事業法人を中心とするテナントがどのように解釈したらよいのかを考察しました。

通勤利便性重視エリア
ターミナル駅や背後に住宅街を有する主要駅が多く、回答者は通勤や生活利便性の高さを理由に支持しています。一方、賃料上昇が著しい都心中枢から一定の距離に位置するケースが多く、結果として賃料水準は相対的に抑えられる傾向が見られます。すなわち、働き手にとっての通いやすさを背景に評価が高まる一方で、その評価が必ずしも賃料水準の高さに直結しているわけではない点が特徴です。
ブランド完成エリア
働きたい街としての人気と賃料水準の双方が高いエリアです。交通利便性に加え、オフィス街としての象徴性・伝統性といった要素が複合的評価されています。これらの要素は、一時的な再開発や話題性によるものではなく、長期的に蓄積されてきた特性であると考えられます。
再評価待ちエリア
人気・賃料水準ともに相対的に低位であり、ランキング調査における21位以下の多くが該当します。利用可能路線が限定的であることやオフィス街としての歴史が比較的新しいこと、再開発によりオフィス街としての魅力が更新過程であるエリアと捉えることができます。また、古くからのビルが多いエリアにおいては、更新が限定的である一方で、地元企業を中心とした需要の受け皿としてオフィス街としての機能を維持していると考えられます。
ポテンシャル評価エリア
働きたい街としての評価が必ずしも高くない一方で、賃料水準は高い水準にあります。今回調査では該当エリアがほとんどありませんでしたが、このようなエリアがあるとすれば、再開発やエリアに対する将来的なポテンシャルが織り込まれ、先行して賃料に反映されている可能性があります。
投資家から見た示唆
投資家の視点では、「働きたい街ランキング」は賃料水準や投資効果を直接説明する指標ではありません。しかし、働き手の選好を通じて、当該エリアにおける需要の広がりや評価の持続性を把握する手掛かりとなるのではないでしょうか。
例えば、<通勤利便性重視エリア>は通勤や生活動線など生活に密着しており、支持層が厚く需要の裾野が広くなる傾向があります。そのため、景気や再開発等の一時的な話題性に左右されにくく、大幅な賃料上昇は難しくとも、安定的な需要が期待できるのではないでしょうか。働きやすさが評価されれば、賃料上昇余地も望めるでしょう。
<ブランド完成エリア>は街の雰囲気や利便性、施設の充実といった複合的な理由で評価されています。賃料にはプレミアムを織り込みやすく、高位安定で推移しやすい一方、高水準の賃料負担力を有するテナントは限定的であることには留意が必要です。
<再評価待ちエリア>は、繁華性・集客性のある街、再開発で大型ビルの供給が進む街、古くからの中小ビルが多く更新が緩やかな街が混在します。街として不人気ということではなく、働きたい街としての評価と供給との間に乖離が起きている可能性や、地元企業を中心とした需要の受け皿となっており人気が上がるきっかけが少ない可能性があります。投資にあたっては、テナント属性や建物規模等、需要のボリュームゾーンを見極めた選別や、街としての機能変化や更新が起こり得るかが重要な着眼点となるでしょう。
テナント(事業法人)から見た示唆
テナントにとって、賃料を支払う合理性は、世間的な人気や賃料水準の高低のみでは説明できません。採用競争力や人材定着(従業員満足度、通勤負担等)、自社の事業拠点や取引先との距離・位置関係といった観点も踏まえ、当該エリアが自社にどのような効果・価値をもたらすのかが問われます。
例えば、<通勤利便性重視エリア>は、通勤・生活動線に基づく働き手の支持を背景に、従業員の通勤負担や満足度の観点から説明がしやすく、賃料水準が相対的に抑えられているため、テナント目線ではコスト効率が高い(高コスパ)と言える側面があります。しかし、オフィス立地は経営判断として、事業活動の効率性や対外的な関係も踏まえて決定されるため、コスト効率の高さが企業にとって最適な選択であるとは限りません。その結果、必ずしもオフィス集積が進んでいるわけではないエリアも存在します。
<ブランド完成エリア>は、業務集積や象徴性を背景として、高い専門性を有する人材やキャリア志向の強い人材に対する訴求力を持つと考えられます。
<ポテンシャル評価エリア>においては、オフィス街としての評価よりも商業集積や再開発といった要因が先行している可能性があり、通勤利便性や業務効率といった観点では必ずしも人材戦略や事業戦略に直結するとは言い切れません。しかし、コミュニケーション環境や生産性が向上し、採用力強化や人材定着といった効果が見込まれる場合には、その賃料水準を受容する合理性が生まれるでしょう。
以上のように、「働きたい街ランキング」と賃料水準の関係は単純な比例関係ではなく、人気の理由や需要の質に応じて複合的に形成されています。すなわち、それが通勤・生活上の利便性といった需要に基づくものなのか、象徴性やイメージに基づくものなのかによって賃料への反映のされ方が異なります。このような背景を踏まえると、オフィスは単なるコストではなく、人材戦略や事業戦略を支える基盤としての性格を持つとともに、投資対象としても需要の質や持続性を見極める視点が重要になると考えられるでしょう。
レポート全文はこちらからご覧ください。
https://www.tr.mufg.jp/new_assets/houjin/fudousan/pdf/fr_2026060301.pdf?20260604093114
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