「みんなで決めるから、凡庸になる」DAO設計士が語った、地域コミュニティが死ぬ本当の理由

DAO設計士・澤海渡さんが説く「地形(ルール)」と「神話」のつくり方

株式会社あるやうむ

NFTによる地方創生を推進する株式会社あるやうむ(本社:札幌市、代表取締役:畠中博晶)の地域おこし協力隊DAOソリューションを活用し、移住された地域おこし協力隊の皆さんにDAOマネ勉強会を実施。

2026年8月12日の講師は、DAO設計士の澤海渡さん。冒頭、澤さんは受講者にこう告げました。「DAOは『トップがいないフラットな組織』だと検索すれば出てきます。でも、あの内容は全く意味がないと思っています」。

トップは要らない、みんなで投票して決める——このイメージこそが地域のDAOを動かなくしている元凶だ、という指摘。語られたのは、「DAOをつくることは、国をつくることである」という設計論でした。

DAOマネ勉強会とは

地域おこし協力隊は、自治体ごとにミッションや環境が大きく異なり、「正解のない仕事」とも言われます。一方で、全国各地の現場には、数字では測れない実践知・失敗知・人との関わり方といった、再現性のある学びが数多く存在しています。

株式会社あるやうむでは、「協力隊員一人ひとりの経験を、個人の中だけで終わらせず、横断的な学びに変えること」を目的に、勉強会を実施しています。

現場で成果を出している実践者自身が語ることで、これから着任する協力隊員や、現在活動中で壁に直面している協力隊員にとって、より実践的で現実に即した学びの場をつくっています。

今回のテーマ

「みんなで決めるから凡庸になる。ローカルDAOを救う『地形(ルール)』と『神話』の創り方」

協力隊のミッションとして「地域のDAOを立ち上げ、参加者を集める」ことが課された隊員は少なくありません。ところが現場では、話し合ってばかりで何も決まらない、誰も責任を取らない単発イベントで終わる。といった壁が繰り返し現れます。

澤さんは複数地域でDAOの立ち上げを設計してきた実践者。「うまくいかないのは、熱意でも人数でもなく、設計の順番が間違っているから」という立場から、その順番を組み立て直す方法が語られました。

講師が手がける「KIBOTCHA」災害時に1万人が暮らす国

澤さんが現在メインで携わるのが、宮城県東松島市・野蒜地区のスマートエコビレッジ構想「KIBOTCHA」。

きっかけは能登半島地震。避難所の実態が東日本大震災当時から何もアップデートされていない。「これは変えないといけない」。そこから、災害時に約1万人を受け入れ、飲み水・食料・エネルギーが揃った「避難所暮らしではない」環境をつくる構想が生まれます。

なかでも時間を割いたのが、独自ポイントの設計思想です。1万人分の暮らしは日本円では続かず、ボランティアでは人数が足りない。お金でもダメ、無償でもダメ。そこで着目したのが「余り物」でした。規格外の野菜、小ぶりで売れない牡蠣、稼働していない空き部屋。KIBOTCHAポイントは、こうしたもともと捨てていたものとだけ交換できる通貨です。経営側は実質的にダメージなくインセンティブを払え、公共事業が進むほど交換物が増えるため、やればやるほど通貨の価値が上がる循環が生まれます。

発足からわずか1年で、住民証NFTの購入者は1,000人超、移住者10名超、二拠点居住者約50名、進出企業は約5件。同じモデルは「IZU DAO」「さんりくDAO」へと広がっています。

本編①:DAOづくりは、国づくりである

ここから本題へ。まず並べられたのは、多くのDAOがつまずく固定観念です。

  • DAOはフラットだから、全部投票で決める

  • トップがいないのだから、リーダーもいない

  • フラットなのだから、堅苦しいルールは要らない

  • とりあえずポイントを発行して配ってみる

「基本的に、全部ダメです」。澤さんは言い切ります。

既存のコミュニティやオンラインサロンとDAOを分ける差分は、「国として機能しているか」の一点。国には次の4つがあります。

  • 憲法(コンセプト)……こういう国にしたい、という根本

  • 公共事業(ロードマップ)……国であれば鉄道を走らせる、といった計画

  • 国会(意思決定の仕組み)……どんな国にも「決め方の決め方」がある

  • 行政(役割と権限)……誰が何を執行するのか

ポイント発行も、通貨政策として捉え直せば分かりやすくなります。「日本も大きなDAOで、日本円というトークンが流通している」。交換できるものが増えない限り、無駄にインフレするだけです。

そのうえで強調されたのが、権限の置き場所です。

「内閣総理大臣という椅子が偉いのであって、人が偉いわけではない。座る席に権限があるべきで、人にあってはいけない。これがコミュニティとの違いです」

本編②:みんなで決めるから、凡庸になる

講義の核心が、タイトルにもなったこの論点です。方針がないまま全員合意を目指すと、3つの劣化が起きると澤さんは指摘します。

1. 横の顔色を猛烈に伺うようになる

2. 声の大きい人にパワープレイで押し切られ、かえって独裁が濃くなる

3. 誰もが「そうだよね」と言える、当たり障りのない意見しか出なくなる

判断基準がなければ、そこへ大きな声が「こうだよね!」と入るだけで場は流れます。全員参加が、逆説的に独裁を招くという構図。そして3つ目の帰結が、あの「無難なイベントが単発で終わる」現象だといいます。

では、どうするか。答えは明快でした。

「DAOの本質は、決めなくても前に進む組織です」

全員で決めるのではなく、問題が起きたときだけ「それは違うんじゃない?」とストップをかけられる状態を用意しておく。

本編③:コミュニティは、放っておくと「王政」になる

その「違うんじゃない?」は、どうすれば言えるのか。

澤さんの定義では、DAOとは「法の下の平等が敷かれた国」を指します。王政と決定的に違うのは「どんなに偉い人間でも法律には従う」という一点。

既存のコミュニティが内輪揉めしたり広がらなかったりする理由を、澤さんは「王政だから」と断じます。ジャッジ基準がないから、王様が「気に入らないからこの事業はやめ」と言えば終わってしまう。反対しようにも「個人の好き嫌い」の衝突になり、真正面から対立するのは怖い。だから誰も何も言わなくなる。

逆に、基準さえあれば言えます。「王様、法律にはこう書かれています」と指させるからです。

そこで最重要になるのが、「ちょうどいい発言の口実(土台)」を用意することでした。「コンセプトに照らすと違いませんか」——こう言える状態をつくっておけば、DAOマネージャーが逐一ノーを突きつけなくても、メンバー自身が自らを律するようになる

「個人の自己責任で意見を言わせない仕組みづくりが、何よりも大事です」

本編④:見落とされるのは「どのような」──神話という土台

基準として決めるべきものは、3階層に整理されました。

  • ① 結果どうなる?(パーパス。例:関係人口を増やしたい)

  • ② 何をつくる?(例:地域を盛り上げるイベント)

  • ③ どのような?(美学=神話)

①と②は多くの現場がすでに決めています。決定的に抜け落ちるのが③。

澤さんが挙げたのは、「森をつくって豊かに暮らそう」という例です。「いいね」と人が集まる。ところが作り始めると猛烈に揉める。理由は単純で、鬱蒼とした森を目指す人と、ひなたぼっこできる公園を目指す人が同居しているから。

ここで効くのが美学、澤さんの言う「神話」です。「僕らは強さを目指す場所だから、修羅の森をつくるんじゃないか」と先に決めておけば、どちらが正しいかは決まる。

「神話は、それ以上遡れないものです。根拠がないところを、しっかり根拠として最初に決めておく」

この合意が甘いと、「何をつくるかは合意したけど、俺の作りたい森じゃない」というちゃぶ台返しが起こります。

本編⑤:オンラインには「地形」がない

最後の論点は、多様性のつくり方。

地域単位で見れば、そこに生きる生物は他の地域と明確に違います。気温、地形、川の形といった絶対的な制約があるからこそ、それに適応した生態系が生まれるからです。

ところが、オンラインには地形がありません。制約がないから偏りも消え、「どこのコミュニティも大体同じことを言っている」状態に陥ります。

「人間における自然とは、文脈であり、文化であり、歴史であり、環境です。そこに集まった人たちの人柄です」

事例:さんりくDAOのコンセプトは、こうして生まれた

澤さんは実際の設計資料を示しながら、さんりくDAOのコンセプトが導かれるまでを解説しました。

ヒアリングで最初に出たのは「人と外が交わる関係性をつくりたい」といった声。評価は辛口です。「どこの地域も一緒やねん、という話。ゴールを聞くと、どこも同じ言葉が出てきます」

そこで問いを変えると、具体的な記憶が出てきます。古い白黒写真に写る、家族ぐるみでご飯を食べる漁師たち。船ごとの置き場——番屋。答えは、かつての記憶の中に

なぜ、かつては温かな共同体があったのか。掘り下げると、地形が見えてきます。山から強い風が集まる風待ちの地形。風が吹かなければ船は進まず、漁師たちは待つあいだ大酒を飲んでいた。加えて日本最大級の金の産出と豊漁。「一度漁に出れば家が立つ」ほどの富裕の街だったからこそ、大盤振る舞いの文化が根づいたのです。

それが津波で停止し、番屋も流されて受け皿が減少。一方で人柄は残っています。懐に入ればものすごく熱いが、一見すると冷たい人見知り——要はシャイ。つまり「シャイな人間同士が関わるための"言い訳の場所"が失われたこと」が問題。その象徴が番屋です。

導かれたコンセプトは、「まち全体を、少しおせっかいで温かい"番屋"のようにしていく」。

「『温かな家族をつくりましょう』で止めていたら、どんな家族なのかはバラバラのままです。ぶっきらぼうで、ガサツだけれど、富があるからみんな集まってハッピー。そこまで具体的に合意することが大事です」

質疑応答:現場の切実な問いに、一つずつ

メンバーはどう集めたのか(そうたさん/徳島県つるぎ町)

KIBOTCHAはクラウドファンディングで約1,300万円を調達し約800名が参加、その後NFT販売経由で約200名が加わりました。ただし澤さんは、これが特殊事例だと率直に認めます。著名な発信力を持つ複数の人物が「建国の父」として集まり、そのコミュニティが同じ旗の下に合流したからだ、と。

再現性が高いのはIZU DAOのほうです。地域のキーマン3名——ミニコミュニティを持つ人、海外からの訪問者のハブになっている人、地元の名家——が合意したことで、外国人も地元民も移住者も集まる基盤が初手からできました。

「コミュニティのハブをどれだけ押さえ、その人たちが最初に集まって合意するか。それで初期の"国民数"が決まります」

つるぎ町が「世界農業遺産の持続」を掲げている件への指摘も鋭いものでした。「世界農業遺産は、"どのような"ではなく"何を"に近い」。その固有性を掘り起こして「こういう性格の世界農業遺産を持っているのが我々です」と合意するところまで掘り下げる必要がある、と。


「Discordで500人」というKPIと、本質論のギャップ(ぴょんさん/鳥取県伯耆町)

最も切実な相談が、ぴょんさんから出ました。2026年6月に着任し、ミッションは「地域の魅力発信」。ところが「魅力」の中身が定義されていない。「山がきれいですね、椎茸おいしいですね——それじゃ違うでしょう、と思って」

さらに「Discordで500人」というKPI。町にはLINEを持たない人が半分ほどいて、電話とFAXと紙媒体が現役の地域です。「これはデジタルの問題ではない」

澤さんは、まず前提を崩します。「僕はDAOとは国づくりだと言いました。国づくりの要素に、Discordという項目は1ミリもなかったはずです」——KIBOTCHAですらLINEオープンチャットが主戦場。「Slackでもチャットワークでもいい。もはや回覧板でもいいと思っています」

そのうえで参照されたのが、途上国支援で使われるメタファシリテーションの考え方です。現地の人に「困っていることは?」と聞くと、ほぼ必ず「井戸が欲しい」と返ってくる。ところが実際に掘っても、使われるとは限りません。

「井戸は魔法のツールに見えるから、井戸と言っているだけ。同じように、DAOも魔法のツールに見えるからDAOと言っているだけで、本当の課題は違うところにある確率が極めて高い」

だから澤さんなら、DAOとは全く関係なく、普通に行政課題を紐解くところから始めるといいます。短期のKPIは割り切って満たしながら、本質的なコミュニティづくりを並行して回すという二正面作戦が示されました。


数字よりも、現場に来てくれる人(たくみさん)

たくみさんの町は人口約1,400人。5年前まで光回線がなく、住民の多くはインターネットを必要としない生活を送っています。だからDiscordではなく、まず知ってもらうドブ板営業に振り切りました。

「数字よりも、そこに関わって現場に来てくれる人のほうが強い。それが自分の実感です」

澤さんが指摘したのは、順序の逆転でした。「何でもDAOをやろうとしてはいけない。『DAOをやるんだ』と言うから、投票しよう、という話になってしまう」。まず何を守りたいのかがあり、ツールの話はその後です。

もう一つ、「DAOにおいて最も大事」と語られたのが協力の3段階です。

  • 協力1.0……手を組んでマンモスを倒し、分配する。全員がプレイヤー

  • 協力2.0……NPOと支援者のような、プレイヤーとサポーターの関係。限界は、共感しない限り応援されないこと

  • 協力3.0(=DAO)……全員の目的が違う。それぞれ別の目的に向かうが、あるプロセスが達成されれば両方が近づくので手を組める。理念に共感していなくても協力が成立する

例に挙がったのは、ワンピースの麦わらの一味。ゾロは世界一の剣豪、サンジはオールブルー、ルフィは海賊王。旗はバラバラでも、同じ船に乗ったほうが全員にとって得になる。

「DAOの本質は、全員が乗りたい船をつくれるかどうかです」

行政のKPIについても、担当者にとっては「町が良くなること」より自分の立場が守られることが本当の目的かもしれない、と指摘。どこを動かせば目的がすり替わるのかを見極める——そこまで踏み込んだ助言でした。

講師紹介

澤 海渡(さわ かいと)さん

DAO設計士

DAO構想・世界観設計を専門に、RULEMAKERS DAO、共創DAO、NEO88DAO、DAO大学、Re:Asset DAOの立ち上げに参画。学生時代の3,000人へのコーチング経験を活かして探究教材を全国出版した経歴を持つ。現在は、平常時には体験型防災教育エンターテインメント施設として機能し、緊急時には1万人規模を受け入れる避難所となる「KIBOTCHA」にジョイン。家族でトークンハイブリッド生活を送りながら、DAOネイティブとして「スマートエコビレッジ構想」の実現に向けて挑戦している。

現在の主な肩書/活動内容

  • DAO設計士
    DAOのコンセプトからトークン設計まで、DAOが機能するOSをデザインする

  • 貴凛庁株式会社 DAO事業部 統括
    KIBOTCHAスマートエコビレッジDAOのノウハウを移転できるよう、研修・コンサル事業を推進する

  • 株式会社ネバーランド 取締役
    鎌倉を中心に、子どもたちが自ら稼ぎ好きなことで生きることができる「ネバーランドDAO」を監修

  • anima DAO 事業推進
    人、動物、自然が調和する「ワンヘルス社会」の社会実装をDAOを通して推進する

  • RULE MAKERS DAO 理事
    「民主主義2.0の実現」を目指し、ルールメイキングの民主化をDAOを通して実現できるよう推進する

講師としてのコメント

「DAOは『トップ不在で、全員がフラット』『何でもみんなで投票して決める』と勘違いされがちですが、みんなで決めるからこそ凡庸になり、コミュニティは死んでしまいます。DAOの本質は『決めなくても前に進む組織』であり、属人的な支配をなくして『席』に権限を持たせることが重要です。皆さんの地域が持つ『どうしようもない偏り(文脈・歴史)』から逃げず、それを独自の『神話(コンセプト)』として定義し、そこから『ルール(地形)』を引いてください。全員の合意を求めるのではなく、その強烈な偏りに共鳴する人が摩擦なく躍動できる生態系を創りましょう」

関連リンク

KIBOTCHA 公式HP:https://kibotcha.com/

DAO体感ツアー:https://kibotcha.com/training/dao-tour/

※KIBOTCHAは実際に現地を訪れて体験でき、NFTの購入も可能。

今後の展望

株式会社あるやうむでは、今後も派遣協力隊員同士の知見を共有する勉強会を継続し、各地域で生まれた実践を横断的に活かすことで、地域全体の価値向上につなげていく予定です。

各地域のDAOに参加しませんか?

お住まいの地域や興味のある地域のDAOにぜひご参加ください!

▼ DAOへの参加リンクはこちら|どなたでも気軽に参加できます。

https://lit.link/alywamu-dao

株式会社あるやうむについて

DAOやNFTによる地方創生を推進するため、全国の自治体向けにふるさと納税NFT/観光NFT/地域おこし協力隊DAOソリューションを提供する札幌発のスタートアップ。

地域の魅力をのせたNFTをふるさと納税の返礼品とすることや、地域でDAOを運営することを通じて、新たな財源を創出すると共に、シティプロモーションや関係人口の創出に繋げます。

社名「あるやうむ」はアラビア語で今日を意味する言葉。今日、いますぐチャレンジをしたい自治体・地域の皆様にNFTという先端技術を提供し、応援され続ける地域づくりを支援します。

株式会社あるやうむ 会社情報

会社名  :株式会社あるやうむ

代表者  :畠中 博晶

所在地  :札幌市北区北38条西6丁目2番23 カトラン麻生302号室

設立   :2020年11月18日

資本金  :1億6449万円(準備金含む)

事業内容 :NFTを活用した地方創生コンサルティング・開発

URL :https://alyawmu.com/

Twitter :https://twitter.com/alyawmu/

Voicy : https://voicy.jp/channel/3545

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政治・官公庁・地方自治体
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会社概要

株式会社あるやうむ

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URL
https://alyawmu.com/
業種
情報通信
本社所在地
北海道札幌市北区北38条西6丁目 2番23 カトラン麻生 302号室
電話番号
-
代表者名
畠中博晶
上場
未上場
資本金
1兆6449億円
設立
2020年11月