リスクを減らして安全な予防を目指す。低アレルゲン化した鶏卵の早期摂取が乳児の卵アレルギーを“安全に”予防する可能性を示唆
11月12日(土)~13日(日)開催の日本小児アレルギー学会で発表
キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下キユーピー)は、藤田医科大学ばんたね病院(病院長:堀口 明彦)の小児科医師、近藤 康人教授と共同で、卵アレルギーの予防に関する研究に2017年から取り組んでいます。今回、低アレルゲン化した鶏卵粉末を用いることで、“安全に”卵アレルギーを予防する可能性が示されました。この研究成果について、2022年11月12日(土)~13日(日)に開催された「第59回 日本小児アレルギー学会 学術大会※1」にて発表を行いました。
※1 「第59回 日本小児アレルギー学会 学術大会」http://jspaci59.umin.jp/index.html
乳児の卵アレルギー予防に、早期摂取の動き。課題は「安全性」
これまで、乳児の卵アレルギーを予防するために、生後7~8カ月以降から卵を摂取することが推奨されてきましたが、厚生労働省が公表している「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」では、「5~6カ月」へと変更になり、海外でも卵の早期摂取の動きが広がっています。ただ、早期摂取で重篤なアレルギー症状を発症する有害事象も見受けられることから、より「安全な予防」が求められています。そこで、「加熱全卵粉末※2」と比較して、オボムコイドを減量した「低アレルゲン化鶏卵粉末」※3でも同様の予防効果が期待できないか、経口負荷試験を行いました。
※2 加熱全卵粉末は、卵アレルギーの予防効果は高いとされているが、アレルゲンであるオボムコイドを含むため、重いアレルギー症状を引き起こすケースがある。
※3 オボムコイドを減量した「低アレルゲン化鶏卵粉末」:卵アレルギーを引き起こすアレルゲンとして、卵に含まれるタンパク質が挙げられるが、その一部(オボムコイド)は熱に強く、加熱しても変性しないため、鶏卵を加熱したのちにオボムコイドを水で洗い流す処理を施した。
卵アレルギーの発症率が高い、アトピー性皮膚炎の乳児を対象に検証。「低アレルゲン化鶏卵粉末」で、安全な予防の可能性を示唆
一般的に、アトピー性皮膚炎の乳児は、卵アレルギーの発症率が高い※4とされています。そこで、生後3~4カ月でアトピー性皮膚炎と診断された乳児19名を対象に試験を行いました。無作為に、「加熱全卵粉末摂取群」(10名)と、「低アレルゲン化鶏卵粉末摂取群」(9名)の2群に分け、生後6カ月から二重盲検※5下でそれぞれ摂取を開始しました(全卵0.2g相当)。生後9カ月で摂取量を増量し(全卵1.1g相当)、生後12カ月時点で全卵30gに相当する量を摂取させ、卵アレルギーの発症率を比較しました。その結果、卵アレルギーを発症した乳児は、「加熱全卵粉末摂取群」で1例、「低アレルゲン化鶏卵粉末摂取群」で2例となり、鶏卵未摂取の発症率38%※6と比較しても低く抑えられていることが分かります(グラフ1参照)。また、アレルギーを引き起こす抗体とされる「IgE抗体」の値についても、2群間で大きな差異は確認できませんでした(グラフ2参照)。さらに、両群共に有害事象が発生しなかったことを考慮すると、低アレルゲン化した鶏卵を用いれば、安全に卵アレルギーの発症を予防できる可能性が示されました。今後は、症例数を増やして、さらなる検討を進めていきます。
※4 出典:Venter Cら, Allergy,63:354-359 (2008)
※5 二重盲検試験。医師・患者共に、処置群と対象群の区別ができない状態で行う試験のこと。
※6 鶏卵を摂取していないアトピー性皮膚炎の乳児が、生後12カ月時点で卵アレルギーを発症する割合は38%に上る。出典:夏目らLancet Jan 21, 389 : 276-286 (2017)
https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(16)31418-0.pdf
国内の鶏卵使用量は最多。だからこそ取り組むべき卵アレルギーの研究
キユーピーは、1990年頃から卵アレルギーの研究に取り組み始め、「食物経口負荷試験」「経口免疫療法」「予防」、それぞれの取り組みについて関係機関と連動し、試験ごとに適した卵加工品を試作・提供しています。本年4月からは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による産学連携プログラム「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に参画し、アレルギー低減卵の実現に向けて始動※7しました。一方で、卵アレルギーの人でも食べられるプラントベースフードの「HOBOTAMA(ほぼたま)」を開発するなど(2021年に発売)、さまざまな試みを行っています。
キユーピーグループは、国内の鶏卵生産量の約10%を取り扱う食品メーカーです。鶏卵を国内で最も多く使用し、鶏卵に精通する企業だからこそ取り組むべき課題と考え、上記のような卵アレルギーにまつわるさまざまな研究・開発を進めてきました。また、私たちは、2030年にどうありたいかをまとめた「キユーピーグループ2030ビジョン」を策定しています。その一つに、「子どもの笑顔のサポーター」を掲げ、未来を創る子どもの心と体の健康を応援することを明文化しています。「食」の面から子どもたちを笑顔に導けるよう、今後もさまざまな研究を進めていきます。
※7 キユーピーアヲハタニュースリリース 2022 No.35 参照
https://www.kewpie.com/newsrelease/2022/2513/
我々は以前、アトピー性皮膚炎を有する10カ月の乳児に低アレルゲン化処理された卵の離乳食製品を与え、安全に食べられることを報告しました。そこで今回、この低アレルゲン化処理された卵製品でも加熱卵と同様に発症予防ができるのかパイロットスタディーで検証しました。
症例数は少ないですが、結果は、低アレルゲン化処理した卵製品でも、加熱全卵と同様に鶏卵アレルギーの発症を予防できる可能性が示唆されました。
乳児の卵アレルギー予防に、早期摂取の動き。課題は「安全性」
これまで、乳児の卵アレルギーを予防するために、生後7~8カ月以降から卵を摂取することが推奨されてきましたが、厚生労働省が公表している「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」では、「5~6カ月」へと変更になり、海外でも卵の早期摂取の動きが広がっています。ただ、早期摂取で重篤なアレルギー症状を発症する有害事象も見受けられることから、より「安全な予防」が求められています。そこで、「加熱全卵粉末※2」と比較して、オボムコイドを減量した「低アレルゲン化鶏卵粉末」※3でも同様の予防効果が期待できないか、経口負荷試験を行いました。
※2 加熱全卵粉末は、卵アレルギーの予防効果は高いとされているが、アレルゲンであるオボムコイドを含むため、重いアレルギー症状を引き起こすケースがある。
※3 オボムコイドを減量した「低アレルゲン化鶏卵粉末」:卵アレルギーを引き起こすアレルゲンとして、卵に含まれるタンパク質が挙げられるが、その一部(オボムコイド)は熱に強く、加熱しても変性しないため、鶏卵を加熱したのちにオボムコイドを水で洗い流す処理を施した。
卵アレルギーの発症率が高い、アトピー性皮膚炎の乳児を対象に検証。「低アレルゲン化鶏卵粉末」で、安全な予防の可能性を示唆
一般的に、アトピー性皮膚炎の乳児は、卵アレルギーの発症率が高い※4とされています。そこで、生後3~4カ月でアトピー性皮膚炎と診断された乳児19名を対象に試験を行いました。無作為に、「加熱全卵粉末摂取群」(10名)と、「低アレルゲン化鶏卵粉末摂取群」(9名)の2群に分け、生後6カ月から二重盲検※5下でそれぞれ摂取を開始しました(全卵0.2g相当)。生後9カ月で摂取量を増量し(全卵1.1g相当)、生後12カ月時点で全卵30gに相当する量を摂取させ、卵アレルギーの発症率を比較しました。その結果、卵アレルギーを発症した乳児は、「加熱全卵粉末摂取群」で1例、「低アレルゲン化鶏卵粉末摂取群」で2例となり、鶏卵未摂取の発症率38%※6と比較しても低く抑えられていることが分かります(グラフ1参照)。また、アレルギーを引き起こす抗体とされる「IgE抗体」の値についても、2群間で大きな差異は確認できませんでした(グラフ2参照)。さらに、両群共に有害事象が発生しなかったことを考慮すると、低アレルゲン化した鶏卵を用いれば、安全に卵アレルギーの発症を予防できる可能性が示されました。今後は、症例数を増やして、さらなる検討を進めていきます。
※4 出典:Venter Cら, Allergy,63:354-359 (2008)
※5 二重盲検試験。医師・患者共に、処置群と対象群の区別ができない状態で行う試験のこと。
※6 鶏卵を摂取していないアトピー性皮膚炎の乳児が、生後12カ月時点で卵アレルギーを発症する割合は38%に上る。出典:夏目らLancet Jan 21, 389 : 276-286 (2017)
https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(16)31418-0.pdf
国内の鶏卵使用量は最多。だからこそ取り組むべき卵アレルギーの研究
キユーピーは、1990年頃から卵アレルギーの研究に取り組み始め、「食物経口負荷試験」「経口免疫療法」「予防」、それぞれの取り組みについて関係機関と連動し、試験ごとに適した卵加工品を試作・提供しています。本年4月からは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による産学連携プログラム「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に参画し、アレルギー低減卵の実現に向けて始動※7しました。一方で、卵アレルギーの人でも食べられるプラントベースフードの「HOBOTAMA(ほぼたま)」を開発するなど(2021年に発売)、さまざまな試みを行っています。
キユーピーグループは、国内の鶏卵生産量の約10%を取り扱う食品メーカーです。鶏卵を国内で最も多く使用し、鶏卵に精通する企業だからこそ取り組むべき課題と考え、上記のような卵アレルギーにまつわるさまざまな研究・開発を進めてきました。また、私たちは、2030年にどうありたいかをまとめた「キユーピーグループ2030ビジョン」を策定しています。その一つに、「子どもの笑顔のサポーター」を掲げ、未来を創る子どもの心と体の健康を応援することを明文化しています。「食」の面から子どもたちを笑顔に導けるよう、今後もさまざまな研究を進めていきます。
※7 キユーピーアヲハタニュースリリース 2022 No.35 参照
https://www.kewpie.com/newsrelease/2022/2513/
- 共同研究者・近藤 康人先生からメッセージ
卵アレルギーの発症予防として生後6カ月から少量のゆで卵を導入することが有用であることが報告されました。しかし、皮膚に湿疹があった乳児においては、卵アレルギーを発症している可能性があり注意が必要です。鶏卵を安全に摂取できるかどうか医師に相談の上、少しずつ食べ始めるのが良いと考えます。
我々は以前、アトピー性皮膚炎を有する10カ月の乳児に低アレルゲン化処理された卵の離乳食製品を与え、安全に食べられることを報告しました。そこで今回、この低アレルゲン化処理された卵製品でも加熱卵と同様に発症予防ができるのかパイロットスタディーで検証しました。
症例数は少ないですが、結果は、低アレルゲン化処理した卵製品でも、加熱全卵と同様に鶏卵アレルギーの発症を予防できる可能性が示唆されました。
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