【ノーベル平和賞受賞 ドミトリー・ムラトフ氏】「編集部には非業の死を遂げた同僚6人の遺影が飾られていた…。」同氏を密着取材した衝撃のルポルタージュ『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』
ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞)」の編集長、ドミトリー・ムラノフ氏のノーベル平和賞受賞を受け、『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(新潮社刊)で同紙とムラトフ氏を密着取材した福田ますみ氏がコメントを寄せました。
「ノーバヤ・ガゼータ」はロシアで政権の暗部を暴き続ける唯一の独立系新聞です。ドミトリー・ムラトフ氏(59)は1993年の創刊に関わった中心人物で、95年からほぼ一貫して編集長を務めてきました。今回のノーベル平和賞受賞はプーチン政権がメディア統制を強める中、「言論の自由」のために戦ってきた姿勢が評価されてのものです。
『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(新潮社刊)は同紙とムラトフ氏を密着取材した衝撃のルポルタージュ。このたび、著者の福田ますみさんがコメントを寄せました。
(『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(新潮社刊)は、現在電子書籍版を各ネット書店にて販売中です。)
■福田ますみ氏のコメント
「ノーバヤ・ガゼータ」がノーベル平和賞の有力候補として検討されているようだという話は、数年前にも聞きました。
今回、個人として受賞したムラトフ氏は「私に与えられたものではなく、犠牲になった同僚たちに与えられた賞だ」と述べていましたが、仲間たちと文字通り命がけの活動をしてきた同氏にとってそれが偽らざる気持ちなのだと思います。なぜ、個人として賞が送られたのか、と。
わたしが彼らを取材したのは10年以上も前のことになりますが、編集部には非業の死を遂げた同僚6人の遺影が飾られ、彼らが見下ろすスペースで編集会議が行われていました。
創刊メンバーの一人がわたしに言った言葉をいまも覚えています。「創刊時、ムラトフは、政治の記事は紙面の一番最後でいいと言っていた。彼はロシアの普通の人々の喜びや悲しみを生き生きと伝えるような記事を中心に据えたかった。しかし残念ながらその後のロシアの政情や社会状況が、そうした理想の新聞づくりを許さなかった。でも、ムラトフはいつか、政治のニュースが小さな扱いで済む日が来ることを待ち望んでいる」。
ムラトフ氏は現実的な理想家。それは今も変わっていないはずです。
■書籍『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』とは
白昼堂々行われる射殺、ハンマーでの撲殺、そして毒殺。ロシアでジャーナリストの不審死が相次いでいる。彼らはメディアが政権に牛耳られる国の中で、権力批判を繰り広げる急先鋒だった──。偽りの民主主義国家内部で何が起きているのか?不偏不党の姿勢を貫こうとする新聞社「ノーバヤ・ガゼータ」に密着した衝撃のルポ。
≪目次≫
第1章 悲劇の新聞
第2章 奇妙なチェチェン人
第3章 告発の代償
第4章 殉教者たち
第5章 夢想家たちの新聞経営
第6章 犯罪専門記者の憂鬱
第7章 断末魔のテレビジャーナリズム
第8章 ベスラン学校占拠事件の地獄絵図
第9章 だれが子供たちを殺したか
■著者紹介:福田ますみ
1956(昭和31)年横浜市生れ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行なっている。『でっちあげ』で第六回新潮ドキュメント賞を受賞。他の著書に『スターリン家族の肖像』『暗殺国家ロシア』『モンスターマザー』などがある。
■書籍データ
【タイトル】暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う(新潮社)
【著者名】福田ますみ
【発売日】2016年9月2日
【造本】電子書籍
【本体定価】715円(税込)
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/ebook/E029011/
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