「TERRADA ART AWARD 2023」、ファイナリストへ授与する審査員賞が決定
1月10日より「ファイナリスト展」として寺田倉庫G3-6Fで作品を発表
ファイナリスト5組の作品は、2024年1月10日(水)~1月28日(日)の期間に当社イベントスペースで開催する「TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展」にて発表されます。2023年9月に決定したファイナリストは、エントリーした展示プランをもとに、平面作品・立体・サウンド・インスタレーション・映像・パフォーマンスなど多岐に渡る作品を制作してきました。会場となる倉庫をリノベーションした当社イベントスペース「G3-6F」では、5組のアーティストが作り上げた新作を含む作品群が一堂に会する展示をご覧いただけます。
「TERRADA ART AWARD 2023」は、新進アーティストの支援を目的とした現代アートアウォードです。2022年11月から約2カ月という期間にもかかわらず、国内外から1,025組の応募がありました。世界を舞台に活躍するアーティストの輩出を念頭に、国際的な視点と現代アートに関する深い見識を持つ方々を審査員に招き、ポートフォリオによる一次審査、展示プランによる最終審査の結果、5組のファイナリストが選出されました。ファイナリストにはそれぞれ、「TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展」での作品発表の機会をはじめ、副賞として本アウォードの協賛パートナーであるMHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社より「ルイナール ブラン・ド・ブラン」が贈呈されるとともに、当社が運営する画材ラボ「PIGMENT TOKYO」の商品10万円分、当社美術品保管サービスの2年間無料利用などが提供されました。当社はTERRADA ART AWARDを通して、アーティストが活躍できる社会を紡ぐとともに、これからのアート業界を牽引する可能性を秘めたファイナリストが、自身の、そして日本のアートシーンの前例を超え、世界に羽ばたき、その存在意義を確立できるまでのキャリアを全力で支援いたします。
【審査員賞について】
金島隆弘賞:冨安由真
「視点」という、美術において極めて原理的で、今までにも多くの作家が取り組んでいる命題に敢えて挑んだ冨安の本作は、今の時代を生きる本人ならではの作業と、その日常がコラージュされた、極めて奇妙で不安定な空間となっている。
その視点の「シフト」を作品の鑑賞行為に組み込み、空間が丁寧に描かれた平面作品や、空間を仕切る素材などを巧みに組み合わせながら、倉庫という無機質でサイトスペシフィックな作品の制作が難しい環境で展開した本作は、作品の鑑賞行為やその視点を揺さぶるだけでなく、そもそも作品とは一体何者であるか、改めて考えさせられる。
そしてこれから何に視点を合わせ、自身の作品として展開していくのか、冨安の眼差しが気になって仕方がない。(金島隆弘/金沢美術工芸大学 准教授)
この度は金島隆弘賞を頂きまして、大変光栄に思います。今回のプランは、かねてからやってみたいと温めていたアイディアを、寺田倉庫の無機質な倉庫空間に沿うような形でアップデートし落とし込んだものになります。実現にコストが掛かるプランですが、TERRADA ART AWARDの賞金として制作資金を提供していただけることから、実現が可能となりました。改めて感謝申し上げます。
プランが通り、実現できる喜びがある一方で、今回の作品は制作期間に戦争や震災などの世界情勢が重なったことで、私自身は制作をするということや芸術というもの自体への意味を自問自答する日々となり、制作に非常に苦しみました。今後もそういった問いはずっと続くと思いますが、それでも見ること・考えることを続けていきたいです。
最後に、審査員の皆さまやTERRADA ART AWARDスタッフの皆さま、そして制作チームの皆さまをはじめとして制作にご協力くださった皆さまに改めて御礼申し上げます。(冨安由真)
神谷幸江賞:原田裕規
ハワイの日系移民についてこの数年リサーチを進めてきた原田さんは、2023年夏に起きたマウイ島ラハイナの惨事に先立って地球温暖化や移民・難民という現代の緊急的な課題について真摯に目を向ける知覚をすでに備えていたと言える。
他者の声に注意深く耳を傾け、土地の歴史・物語に触れ、それらを複合的に学び、新たな視覚言語で発信していく理解と表現のプロセスは、現世と彼岸をつなげる能の手法に触発されているようにもうかがえる。
時空を超え、個の存在と社会、他者と私をつなげる複雑かつ複層的な要素を、デジタルテクノロジーを介してポートレート、語り、字幕を一画面の上に重ね合わせ編み込んでいく。こうして形を成す探求のキックオフに際し、これからの展開の可能性を期待したい。(神谷幸江/美術評論家、キュレーター)
このたびは神谷幸江賞を受賞させていただき、大変光栄に思います。まずは本作で僕と一緒にシャドーイングをしてくれた日系アメリカ人の皆様(タイラー君、リーンさん、ラリーさん)に受賞の報告をしたいです。本作プランは数年前より温めていたものでしたが、実際に取り組んでみると、作品を実現するために70名以上の方々の力が必要になることがわかりました。過去最大規模の制作の中で、苦しい局面も多々ありましたが、現代という時代性を反映した「新しい自画像」が立ち上がったように自負しています。それと同時に、自身が立ち上げたい表現の実現にはこれほど多くの人々が関わらざるを得ないんだということも改めて実感し、責任を感じました。次のステージに進む上で最大級の経験を積ませてくださった寺田倉庫の皆様、そして審査員の皆様に心から感謝しています。そして最後に、日系二世のラリーさんによる台本の「ピジン英語訳」を紹介させてください。
やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす/Go stay go Pakiki all da time ! Eh…no give up ‘til you pau !(直訳:いつだって抵抗する! ああ、最後まで諦めない!)(原田裕規)
寺瀬由紀賞:やんツー
やんツーの作品には、手作業の痕跡はない。テクノロジーを駆使し、無人で機械的に事前プログラミングされた作品は一見無機質で、その先に冷静沈着な理系作家を想像させる。しかし個別の作品の根底に流れる信念は、誤解を恐れずにいえば、誰よりもナイーブで泥臭く、極めて人間らしい。資本主義に呑み込まれるアート。消費されていくアート。愛でられずひたすら倉庫に保管されるアート。美術そのものがもつ空虚さをシニカルなユーモアで斬っていく。美術をやる意義、意味、意図。
でも、そんなテーマの作品を制作する彼が、こうやって高額賞金の出る倉庫会社主催のど真ん中アートアウォードにチャレンジしてみたりする。この矛盾との絶妙な混在こそが、やんツーという作家の醍醐味だと思う。みんな、理想とリアルの境界線で必死に闘っている。彼もそう。私もそうだ。この素晴らしき才能に、審査員の中で最もアートマーケットに近い立場で美術に関わっている寺瀬由紀賞をお渡しすることで、もっともっと迷わせて、更に良い作品を制作してもらいたい。期待しています。(寺瀬由紀/アートインテリジェンスグローバル ファウンディング・パートナー)
最終審査のプラン提出〆切日が6月末日で、自分の個展のオープニングを4日後に控え、何もかも間に合っておらず絶望の中、設営中のギャラリーの中で暑さにうなだれながら半ば苦し紛れにせめて形だけでもと、たった2枚のPDFにプランをまとめ提出したのを覚えています。満足のいく資料を出せず、当然落選するだろうと思っていたので、ファイナリスト選出通知を受けた時は本当に信じられないという思いでした。結果的に、このような素晴らしい展覧会の機会に恵まれ、関係者の方々には連日朝から晩まで続く設営にお付き合いいただき、とても感謝しています、ありがとうございました。そして、賜りました寺瀬由紀賞ですが、今回、美術の制度の中でも、特に美術館や倉庫、アートマーケットの文脈にアプローチした作品プランだったので、マーケットのど真ん中にいる寺瀬さんが評価してくれたら面白いなという目論見が元々ありました。なので、この審査員賞も本当に嬉しく、今後の作家活動の糧になっていくと思います。(やんツー)
真鍋大度賞:村上慧
村上の作品では現実世界の些細な出来事から始まり、それがどのようにして創造的なハルシネーションを経て物語へと変貌し、さらにその物語が演劇表現を経て仮想空間での創造的な展開へと進化していくのか、というプロセスに強く惹かれました。
日常の風景に独特な方法で変化を加えることによって見慣れた世界に対する新しい視点と発見を提供し、日常の美や問題を再発見させてくれます。
この貴重な機会を最大限に利用していただきたいと思います。引き続き自由な発想と創造的な精神で挑戦的な作品を生み出してください。楽しみにしています。(真鍋大度/ライゾマティクス ファウンダー、アーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ)
これまで試したことのない、自分にも新しい作品を実作する素晴らしい機会を提供してくれたTERRADA ART AWARDと、賞に選んでくださった真鍋大度さん、そしてなにより演出ですばらしい仕事をしてくださった村社祐太朗さん、長期間の制作に並走してくれた本間大悟さんと増田義基さん、そのほか、文字数の関係で一人一人のお名前を挙げることができないのが心苦しいのですが、本作品の制作を助けてくれた総勢23名の皆さんにこの場を借りてお礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
制作にあたり、現実とはなにかということを考えてきましたが、そんなすべてが馬鹿馬鹿しくなってしまうような「現実」の理不尽さのなかで、この光栄なる受賞を心から喜ぶことを阻害してくるような、パレスチナの情勢や能登半島地震にまつわる為政者の不手際など、社会状況が腹立たしい限りですが、今後もこの賞に恥じないよう自分にできることを淡々と続けていきます。(村上慧)
鷲田めるろ賞:金光男
カヌーは以前から金がモチーフとしてきたものである。カヌーは、韓国と日本の間という金のアイデンティティと関わり、「間」を象徴するものであろう。これまでは実物のカヌーの中を蝋で満たすような作品であったのに対し、今回はカヌー自体を蝋でつくり、全体が溶けて輪郭も変化する計画である。そのことによって、カヌーの脆弱性がより明確になり、作品の強度が増すはずだ。この点が、今回の新作に期待を寄せた理由の一つである。さらに、蝋という素材は、単に溶ける素材として選ばれているだけでなく、一緒に展示される平面作品の素材でもある。そのことが立体と平面を統合し、展示物同士の関連性を高めている。この点が、金の展示構成を高く評価したもう一つの理由である。(鷲田めるろ/十和田市現代美術館 館長、東京藝術大学 准教授)
この度、鷲田めるろ賞をいただき大変光栄に存じます。
ジャンク状態のアメリカ製のカヌーをレストアし、家族と水面を漕ぎ出した事が自身のアイデンティティと向き合うきっかけとなりました。2021年の個展の際に、実物のカヌーに蝋を満たした作品を発表すると同時に、蝋でできたカヌーの作品構想もしていました。この構想はなかなか実現するのが難しく、10年以内に発表できればと思っていましたが、今回TERRADA ART AWARDでファイナリストに選出されたことで制作し発表することができました。この作品を通して何が変わるかはまだ分かりかねますが、小さな小さな波紋が平和と希望に繋がる事を願います。
最後に、タイトなスケジュールの中、この作品は決して一人の力では実現できませんでした。日常を支えてくれた家族と知恵や力を貸してくれた佐々木 麦帆氏、藤村 祥馬氏、山田 結子氏、森山 泰地氏、須賀 悠介氏、羽田野 皓紳氏、茂木 淳史氏、Artifact、鬣 恒太郎氏、鈴木 達也氏、志村 直人氏、LEESAYA氏、乃村 拓郎氏に心から感謝の意を申し上げます。(金光男)
※ファイナリストのプロフィール・展示内容は、こちらをご覧ください
https://www.terradaartaward.com/ja/finalist
【TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展 開催概要】
展覧会名:TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展
会期:2024年1月10日(水)~2024年1月28日(日)
※会期中無休
会場:寺田倉庫 G3-6F(〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号)
開館時間:11:00~18:00(最終入館 17:30)
入場料:無料 ※予約不要
【TERRADA ART AWARD 2023 開催概要】 https://www.terradaartaward.com
名称:TERRADA ART AWARD 2023
対象活動:現代アート全般(絵画等の平面、写真、立体(オブジェクト)、テキスタイル、映像、デジタル・メディアアート、パフォーマンスなど身体表現、音または音楽など全ての媒体を含む)
支援内容:ファイナリスト5組に各300万円
※TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展のための新作制作・展示の費用を含む
副賞:「ルイナール ブラン・ド・ブラン」、「PIGMENT TOKYO」の商品10万円分、寺田倉庫の美術品保管サービスの2年間無料利用
主催:寺田倉庫株式会社
協賛:日本航空株式会社、MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社
運営協力:藤原羽田合同会社
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
【TERRADA ART AWARD 2023 審査員】(敬称略・五十音順)
最終審査員:金島隆弘(金沢美術工芸大学 准教授)、神谷幸江(美術評論家、キュレーター)、寺瀬由紀(アートインテリジェンスグローバル ファウンディング・パートナー)、真鍋大度(ライゾマティクス ファウンダー、アーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ)、鷲田めるろ(十和田市現代美術館 館長、東京藝術大学 准教授)
一次審査員:池城良(アーティスト、ミュージシャン、研究者、香港城市大学クリエイティブメディア学部 助教授)、大巻伸嗣(美術作家)、木村絵理子(キュレーター、弘前れんが倉庫美術館副館長兼学芸統括)、高橋龍太郎(精神科医、現代アートコレクター)、竹久侑(キュレーター、水戸芸術館現代美術センター 芸術監督)、椿玲子(森美術館キュレーター)
【TERRADA ART AWARD 2025について】
次回「TERRADA ART AWARD 2025」の詳細につきましては、本年中の発表を予定しています。
詳細につきましては今後の発表をお待ちください。
【寺田倉庫について】
社 名:寺田倉庫株式会社(Warehouse TERRADA)
代表者:代表取締役社長 寺田航平
所在地:〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10
設 立:1950年10月
U R L:https://www.terrada.co.jp
【TERRADA ART AWARDに関するお問い合わせ先】
寺田倉庫 TERRADA ART AWARD事務局 E-MAIL:award@terrada.co.jp
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像