コンタクトレンズ装用時の不快感(CLD)において“洗眼”による改善を確認。「第68回日本コンタクトレンズ学会総会」で発表
1ヶ月の洗眼習慣で「ゴロゴロ感」などの症状が軽減
小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:豊田 賀一)と、鶴見大学(本部:神奈川県横浜市、学長:高田信敬)歯学部眼科学 藤島 浩先生との共同研究にて、コンタクトレンズ装用時の不快感(CLD*¹)に対し、市販洗眼薬などを用いた“洗眼”が有効かつ安全なセルフケアであることを実証しました。本成果は、2026年5月29日から31日開催の第68回日本コンタクトレンズ学会総会で口頭発表しました。
研究成果のポイント
■洗眼習慣によるCLDの改善
1ヶ月の洗眼習慣でコンタクト装用者が抱える「ゴロゴロ感」などの不快感(CLD)が有意に改善することを、対象者の実感と客観的な「涙の乾きにくさ」の両面から実証。洗眼による物理的な洗浄効果とともに、本研究に用いた市販洗眼薬の有効成分等が涙液の安定化に寄与した可能性を示唆。
■ 1ヶ月継続使用でも目に悪影響を与えない、安全性を実証
涙液中のムチン量や眼球結膜の充血、コンタクトレンズへのタンパク質付着に悪影響を与えないことを確認。安全なセルフケアであることを実証。
〈研究背景〉
コンタクトレンズ装用者の半数近くがCLDを経験していると推定されており、世界的な課題として注目されています⁽¹⁾。
この不快感への対処としては目薬が一般的です。しかし、洗眼薬の使用経験者のうち59%⁽²⁾をコンタクトレンズ装用者が占めている実態があり、彼らによる“洗眼”への期待は非常に高いと推測されます。それにもかかわらず、これまで“洗眼”の有用性については十分な知見が得られていませんでした。そこで、“洗眼”がCLDを改善するセルフケアの一助になる可能性を見出すべく、鶴見大学 藤島 浩先生との共同研究を開始しました。本研究では、“洗眼”がCLDに与える影響と、安全性について検証を行いました。
*1 CLD(Contact lens Discomfort)は、CL装用者における主要な問題の一つである。CLDは、「CLと眼環境との適合性の低下により、視覚障害の有無に関わらず、CL装用に関連する一過性あるいは持続性の眼の不快感を特徴とする状態であり、CL装用時間の短縮や装用中止に繋がるもの」と定義される⁽³⁾。
〈研究結果〉
1. コンタクト装用時の「ゴロゴロ感」など気になる不快感(CLD)が有意に改善
ソフトコンタクトレンズ(SCL)を装用し、不快感の判定基準(カットオフ値11点以上)を満たす男女20名を対象に1日2回、1か月間の洗眼を実施し、洗眼開始前、洗眼2週間後、洗眼4週間後に評価を行いました。
その結果、J-CLDEQ-8アンケート*²による自覚症状の評価スコアは、生理食塩水使用群および本研究に用いた市販洗眼薬使用群ともに、洗眼開始前から洗眼4週間後にかけて有意にスコアが改善し (p<0.01)、洗眼がCLDの軽減に対して有用であることが示されました。また、NI-BUT*³では、本研究に用いた市販洗眼薬使用群は生理食塩水使用群よりも有意に長かったことから (p<0.01)、洗眼行為および本研究に用いた市販洗眼薬に配合されている有効成分等が涙液の安定化に寄与した可能性が示唆されました。
*2 J-CLDEQ-8(Japanese version of the 8-item Contact Lens Dry Eye Questionnaire):コンタクトレンズ装用時の眼の不快感に関する自覚症状を評価できるアンケート⁽⁴⁾。
*3 NI-BUT(Non-Invasive Break Up Time)非侵襲的涙液層破壊時間:眼の表面の涙の層が破れるまでの時間のことで、涙の安定性の評価項目。

試験方法:J-CLDEQ-8アンケートを洗眼実施前、洗眼2週間後、4週間後に、対象者自身が記録した。
*:p<0.05、**:p<0.01(vs洗眼前)

試験方法: CL装用時の状態でNI-BUTを測定し、洗眼実施前、洗眼2週間後、4週間後の眼の涙液層の安定性を評価した。
#:p<0.05、##:p<0.01(vs群間)
2. 1ヶ月の継続洗眼における瞳のバリアやレンズの状態に悪影響を与えない安全性を確認
涙液ムチン量 (MUC5AC)*⁴、眼球結膜充血*⁵、ソフトコンタクトレンズ(SCL)表面に付着したタンパク質*⁶について評価したところ、生理食塩水使用群および本研究に用いた市販洗眼薬使用群ともに洗眼開始前から洗眼4週間後にかけて有意な差がないことを確認しました。このように、涙液ムチン量や眼球結膜充血、ソフトコンタクトレンズへのタンパク質付着量に悪影響が見られなかったことから、洗眼はソフトコンタクトレンズ装用に対して安全である可能性が示されました。
*4 MUC5AC:涙液中に存在する糖タンパク質で、涙液の安定化、ウイルスや細菌などが眼の組織に侵入するのを防ぐ働きがある。
*5眼球結膜充血:白目にある細い血管が拡張して血液量が増えることで生じる白目周辺部分の赤みのこと。
*6 SCL表面に付着したタンパク質:CLを装着すると涙液中などに存在するタンパク質がCL表面に付着する。CLの汚れの原因の1つ。

試験方法:シルメル試験紙を用いて両眼から回収した涙液を涙液ムチン測定キット (コスモバイオ株式会社) を用いて、涙液中のMUC5ACを算出した。

試験方法:細隙灯顕微鏡を用いて撮影した結膜の写真を、結膜充血解析ソフト (Hyperemia Helper Tool) を用いて結膜の血管占有率を算出した⁽⁵⁾,⁽⁶⁾,⁽⁷⁾。

試験方法:対象者のSCLを回収し、TaKaRa BCA Protein Assay Kit (タカラバイオ株式会社) を用いてSCLに付着したタンパク質量を算出した。
〈まとめ〉
本研究により、洗眼はソフトコンタクトレンズ装用の目に対して安全であることが確認され、CLDへの有効なセルフケアの一つとなる可能性が示されました。今後は、CLDに悩む生活者のみなさまへ洗眼習慣を提案し、コンタクトレンズを装用する全ての時間がより快適なものとなるよう、貢献に努めてまいります。
【研究成果の発表先】
本研究成果は、「第68回日本コンタクトレンズ学会総会」(2026年5月29日~31日、東京)にて口頭発表しました。
タイトル:洗眼のコンタクトレンズ装用時不快感に及ぼす影響
発表者名:伊藤健悟⁽¹⁾、中川雅啓⁽¹⁾、アラストアリレザ⁽¹⁾、加藤将城⁽¹⁾、中嶋安弓⁽¹⁾、藤島浩⁽²⁾
(1)小林製薬株式会社 (2)鶴見大学
〈参考文献〉
(1) Fernández-Jimenez E,Diz-Arias,E, Peral,A. Improving ocular surface comfort in contact lens wearers. Cont Lens Anterior Eye 2022;45:101544
(2) マクロミル株式会社 2025年12月実施調査/20-50代男女/N=2594
(3) Dumbleton K, Caffery B, Dogru M, Hickson-Curran S et al : The TFOS International Workshop on contact Lens discomfort : Report of the subcommittee on epidemiology. Invest Ophthalmol Vis Sci 54 : TFOS20-36, 2013.
(4) Koh S, Chalmers R, Kabata D, et al. Translation and validation of the 8-item Contact Lens Dry Eye Questionnaire (CLDEQ-8) among Japanese soft contact lens wearers : The J-CLDEQ-8. Cont Lens Anterior Eye 42 : 533-539, 2019.
(5) 角 玉木, 米田 剛, 福島敦樹ほか : 眼球結膜充血解析ソフトの臨床的有用性, 日眼会誌, 116 : 366, 2012.
(6) 福島敦樹 : 【アレルギー性眼疾患の最新知見】アレルギー性結膜炎検査法の最新知見. アレルギーの臨床32 : 215-220, 2012.
(7) 三村 達也, 深川 和己, 深山 杏里, 山本 めぐみ, 内尾 英一, 高 良太, 溝田 淳, 藤島 浩, 眼アレルギー症状に対する洗眼の有効性, 眼科, 61巻 :
12号, 2019.
〈関連情報〉
小林製薬株式会社コーポレートサイト https://www.kobayashi.co.jp/
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