路面状況で変化する操舵抵抗に強い車両の経路追従制御法を開発

(ポイント)
〇 ハンドルを切る際に路面から受ける抵抗(操舵トルク抵抗)の変化を想定した自動走行の経路追従制御法を構築
〇 想定と実際のずれを自動で補正する「モデル誤差抑制補償器(MEC)」により、経路からのずれを90%以上低減
〇 農業機械など路面環境が大きく変化する車両の自動走行への応用に期待
(概要説明)
熊本大学大学院先端科学研究部の岡島寛教授らの研究グループは、路面状況で変化する操舵トルク抵抗の影響を受けにくい頑健(ロバスト)な車両の経路追従制御法を開発しました。本研究は、同大大学院自然科学教育部博士前期課程の岩井廉太朗氏、同大大学院修了生の日笠夏樹氏との共同研究です。
本研究成果は、オープンアクセス誌「IEEE Access」に掲載されました。
[取り組みの内容]
従来の多くの手法では、「ハンドルを切った分だけ前輪が即座に向きを変える」と仮定しており、ハンドルを切る際に路面から受ける抵抗(操舵トルク抵抗)は考慮されていませんでした。本研究では、操舵の指令を出してから実際に前輪が切れるまでの遅れと、路面の抵抗で前輪が戻される効果を数式モデルに組み込み、この抵抗の大きさは路面ごとに異なり事前には分からない量として扱いました。そのうえで、岡島教授らが提案してきた「モデル誤差抑制補償器(MEC)」を既存の制御系に付け加えました。MECは、既存の制御システムに後付けして、想定外の状況に対する頑健さ(ロバスト性)を高める仕組みで、計算機上の想定モデルと実際の車両の応答のずれ(モデル誤差)を常に監視し、そのずれを打ち消すように制御指令を補正します。これにより、路面の抵抗が想定と違っていても、経路からのずれが広がらないようにしました。
[背景]
トラック運転手の疲労や高齢ドライバーの身体・認知機能の低下に起因する事故が社会問題となる中、自動運転技術への期待が高まっています。その基本機能である経路追従制御(定められた経路に沿って車両を正確に走行させる制御)では、ハンドルを切る際にタイヤと路面の間で生じる抵抗が、アスファルト、砂利、ぬかるんだ土などの路面状況や車速によって大きく変化し、その値を事前に正確に知ることは困難です。特に、ハンドル動作を補助する電動パワーステアリングを備えていないことが多い農業機械や不整地走行車両では、この抵抗の変化が追従誤差の要因となる可能性があります。
[成果]
本研究では理論解析により、提案した制御のもとでは車両が目標の経路に乗った後も車両の挙動が不安定にならないことを示しました(通常のタイヤであれば必ず満たされる条件のもとで保証されます)。また、実際の路面の抵抗が想定からずれても、経路からのずれがその想定とのずれの大きさに比例した範囲に収まることも示しました。さらに、2種類のコースを用いたコンピュータシミュレーションで、路面の抵抗を想定の半分から2倍まで変えて試したところ、提案法は補正機能を付けない従来の制御に比べ、すべての条件でコースからの最大のずれを90%以上減らしました。
[展開]
本研究の手法は、既存の制御器の構造を変更せずに補償器を付加できるため、農業機械や不整地を走行する搬送車両など、路面環境が大きく変化する多様な車両に適用でき、操舵抵抗の変動が大きい環境での自動走行の高精度化への寄与が期待されます。今後は、操舵トルクセンサを備えた低速自動運転車両による実車実験で有効性を検証するとともに、車速変化への対応などへ拡張する予定です。
論文タイトル:
Robust Path Following Control for Vehicles with Uncertain Steering Torque Using Model Error Compensation
論文著者:
岩井廉太朗,日笠夏樹,岡島寛
掲載雑誌:
IEEE Access
https://ieeexplore.ieee.org/document/11769950
【お問い合わせ先】
熊本大学 総務部 総務課 広報戦略室
TEL: 096-342-3269
E-mail: sos-koho@jimu.kumamoto-u.ac.jp
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